天皇皇后両陛下の長女・敬宮愛子さまは22歳の誕生日を迎えられた。
キャンパスライフが始まり、皇族として初めての活動にも取り組まれた1年。
「もちろん致します」と快諾された重要な務めとは。

宮内庁の施設で、室町時代に書き写された「百人一首」の写本をそっとめくり、清少納言などの和歌に目を通される愛子さま。宮内庁が誕生日に際して提供した写真だ。
学習院大学文学部日本語日本文学科で平安、鎌倉時代などの物語や和歌を学ばれている。

2023年4月、記者の問いかけに対し、愛子さまは「大学最後の1年間、この緑豊かなキャンパスで良い学びが出来ましたらと思っております」とにこやかに応じられた。4年生になり、コロナ禍で叶わなかったキャンパスライフがようやく始まった。
対面授業を受けることでオンラインには無い大学の活気を肌で感じ、旧友との再会を喜ぶと共に、新たな友人も出来て交友関係も広がっているという。
残りわずかとなった大学生活を楽しむ傍ら、書庫などで資料を集め、12月に〆切となる卒業論文を書き進めるなど、忙しく充実した日々を過ごされているということだ。
成年皇族として
学業の傍ら、成年皇族としての務めにも取り組み、今年は初めて一般参賀に出席された愛子さま。最初は緊張したものの徐々に雰囲気に慣れ、無事終えたことに安堵された。

また、9月には、皇室の重要な事柄を審議する「皇室会議」の「皇族議員」の選挙に初めて臨まれた。両陛下に事前に所作などを確認した上、投票だけでなく、立会人の役目も初めて果たし、愛子さまはこうした行事を通じて皇室の伝統や歴史に触れ、皇族としての務めについて思いを深められている様子だという。
両陛下との外出増える 伝統文化や地域医療に理解深め
また、両陛下の活動に同行される機会も増えた。2022年の暮れにはおよそ3年ぶりにご家族揃って映画館に足を運び、映画『Dr.コトー診療所』のチャリティー試写会を鑑賞された。

「離島における地域医療の厳しい現状や、島の美しさ、人と人との結びつきの強さが深く心に残った」ことを、主演の吉岡秀隆さんなどに伝えられていたという。
日本の伝統文化への関心も高く、陛下とお二人で春と秋の雅楽演奏会に足を運んだり、伝統工芸展の会場では、主催する日本工芸会の総裁を務める秋篠宮家の次女・佳子さまと一緒に精巧な技術に見入られていた。
国宝のやまと絵の特別展では、「源氏物語絵巻」などを間近に見ながら大学で学ぶ平安文学の知識をもとに場面や構図などについて質問を重ねられた。
福祉への関心 歴代皇后が深く関わる日赤の本社も訪問
以前から福祉にも関心を寄せ、明治以降の皇后が深く関わり、皇后さまが名誉総裁を務められる日本赤十字社の活動についての説明の場に同席したり、日赤の本社を訪れ、戦争や災害現場で活動中に命を落とした看護師などの慰霊碑に拝礼された。

日赤では関東大震災から100年の企画展を視察し、被害の大きさや当時の救護体制について説明を受け、深く心に留められていたという。
愛犬や愛猫との日常 馬と触れ合い蚕の飼育も
幼い頃から生き物が好きな愛子さまは、御所で犬の「由莉」や猫の「みー」「セブン」を大切にお世話し、小学生の頃から続ける蚕の飼育にも引き続き取り組まれている。

皇后さまが取り組まれるご養蚕にも同行し、陛下と共に作業を手伝われた。
4月に4年ぶりに滞在した御料牧場では、生まれたての子牛が立ち上がる様子を見守り、「レインボー」と名付けてミルクを与えたり、馬や羊などとも触れ合われた。
体を動かすことが好きで、学業などの合間に職員とテニスやバレーボールを楽しまれているという。
「もちろん致します」皇族議員選挙の立会人を快諾 「マイペース」に
この1年は、大学4年生にしてキャンパスライフが始まり、一人の学生として新たな世界が広がった。
その傍ら、支障の無い範囲で、皇族としての活動も始まり、初めての行事にも取り組まれた1年だった。

初めて経験された「皇族議員」の選挙では、「立会人」という重要な役目も担われた。
前回の選挙で立会人を務められた上皇さまの弟の常陸宮さまが入院中のため、陛下の長女である愛子さまに打診があり、ある側近によりますと「もちろん致します」と大役を快諾されたという。
初めての選挙で、たとえ不安はあっても、必要な準備をして求められた役割をしっかり果たされるお姿を「動じずお心が定まってらっしゃる」と側近は話していた。
去年3月の成年にあたる記者会見で、ご自身の性格について「少しマイペース」と自己分析されていた愛子さま。

学業優先で大学での学びを大切にしながら一つ一つ経験を積み重ねられているお姿は、無理せず「マイペース」な自然体で、取材のたびに清々しさが心に残る。
年末までに卒論を提出すると、来年3月には大学をご卒業。どんな進路を選ばれるのかにも注目が集まる。
生活のリズムも少し変わり、お一人で公務に取り組まれる機会も出てくるかもしれない。
新たな生活でも関心のある分野への知見を深めながら、自然体な「マイペース」で徐々に活動の幅を広げていかれるお姿を、これからも取材していきたいと思う。
(宮内庁クラブキャップ兼解説委員 宮﨑千歳)