パレスチナ自治区ガザで、戦闘休止中に砲撃が行われたとして、ハマスとイスラエル軍の双方が批判した。また、ハマスは拘束していた人質を解放。その中にはペットの犬を抱いた少女もいた。
「合意内容に違反」と双方批判
パレスチナ自治区ガザで、戦闘休止5日目となる11月28日、人質が解放された一方でガザ地区の中で砲撃があり、ハマスとイスラエル軍の双方が批判している。
この記事の画像(12枚)ハマスは28日、拘束していたイスラエル人の人質、女性9人と子供1人に加え、タイ人の2人、合わせて12人を解放した。イスラエルからもパレスチナ人30人が釈放され、家族や親族との再会を喜ぶ姿があった。
こうした中、中東のメディアが「ガザ地区北部で、イスラエル軍の戦車による砲撃が行われた」と報じた。ハマスは「イスラエル軍が合意内容に違反した」と批判している。一方、イスラエル軍は「ハマスの戦闘員が発砲した。ハマスが合意に違反した」と主張している。
ハマスは29日、新たにイスラエル人10人、ロシア国籍を持つ2人、タイ人4人の人質16人を解放。日本時間の30日午後に期限を迎えるとみられている戦闘休止期間のさらなる延長で、双方が合意できるかが焦点となっている。
ハマスが犬まで拘束
ハマスによる5回目の人質解放では、意外にも感じられるシーンが。人質となっていた少女がペットの犬を抱いて出てきた。ハマスは犬までも拘束していたのだ。
ハマスが日本時間の29日朝に公開した5回目の人質解放の映像では、過去4回の解放映像と明らかな違いがあった。
これまでは非常に静かな中で緊張感が漂うものだったが、今回は大勢の市民が集まり、口笛や歓声が上がるイベントのような盛り上がりがあった。
今回は初めて、ハマスと同盟関係にある過激派組織・イスラム聖戦も加わったこともあるが、ハマスの演出方針が変わったとみられ、人質解放をめでたいものとして、より盛大に祝う雰囲気を強調している。
その歓声の中、ハマス側の車両から出てきたのが人質として拘束されていたミア・レインバーグさん(17)。白い犬を抱きかかえていた。
ミアさんは、その犬と一緒に赤十字の車両に乗り込んだ。シーズー犬で名前を「ベラ」といい、ミアさん一家のペットだ。
ミアさんと母親のガブリエラさん(59)は10月7日、ハマスのテロ攻撃が起きた際、ベラも連れて休暇でイスラエル南部を訪問していて武装集団の襲撃を受けた。
父親のモーシェさんによると、襲撃のさなか、ミアさんからメッセージが届いたという。そこにはベラの写真とともに「私たちは大丈夫。ベラが落ち着いてきた」と書かれていた。
しかし、それを最後に連絡が取れなくなり、モーシェさんはその日以来、辛い日々を過ごしてきた。ハマスが公開した映像から、ハマス側はミアさんと一緒に犬のベラも連れ去っていたことが分かる。
また、犬のベラの拘束前と解放後の写真を比較すると、約50日間の拘束の間に毛が伸び、毛玉ができてしまっているが、特に痩せてしまった様子などは確認できない。
そして、イスラエル政府が発表した写真では、ミアさんは解放後、母親とペットのベラと共に元気そうな笑顔を見せている。
ペットの犬まで拘束としていたことに、ハマス側の狙いがあるのだろうか。
中東問題が専門の放送大学・高橋和夫名誉教授は「犬も手厚く面倒を見ていた可能性がある」とした上で、「これだけ人質を大事にしていた」とアピールしたかったのではないかと指摘している。
高橋教授によると「ガザ地区では犬をペットとして飼う例は少ない」ということだ。イスラエルでは、もともとは猫が主流のペットだったが、近年は犬も増えている。
ハマスは10月7日の襲撃の際、犬を射殺する映像も公開していたが、西側的な価値観を理解した上で、ペットも大切に扱い、拘束されたミアさんたちの精神状態まで配慮していたということを印象づける狙いがあったと考えらえる。
人質の待遇について新たな証言
ただし、拘束された人質の待遇については、新たな証言が出てきている。
解放されたエイタン・ヤハロミくん(12)の親族はフランスメディアの取材に対して、エイタンくんが「ガザに到着した時に住民から殴られた」「泣いている子供はライフルで脅された」などと話していると伝えている。
人質からの証言は、徐々に様々なところで伝えられている。
イスラエルメディアによると、解放された人質は身体的には良好な状態にあっても精神的な負担が非常に大きく、カウンセリングなどを必要としている。人質をとる行為は許されるものでなく、早期の解放を求めたい。
(「イット!」11月29日放送より)