毎日の生活に欠かせない買い物。しかし、「近くに店がない」「移動手段がない」といった理由で、いわゆる“買い物弱者”となる人が鹿児島県内でも増加している。
県が初めて行った調査によると、実に14万人が、“買い物弱者”となるリスクが高いとされる。将来に不安を抱える人や、“買い物弱者”を支える人を取材した。
“買い物弱者”を支援する取り組み
鹿児島市は11月から2023年1月末までの予定で、民間と共同で「チョイソコかごしま」の実証実験を始めた。決まった路線や時刻表はなく、AIが利用者の予約に応じてルートを決める、バスとタクシーの特徴を兼ね備えた乗り合い送迎サービスだ。
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公共交通が不便とされる鹿児島市南部の地域で、買い物弱者への支援策として期待されている。
“買い物弱者”。経済産業省は「交通網の弱体化とともに買い物が困難な状況の人々」と定義づけている。
2023年9月に公表された買い物アクセスマップ。“買い物弱者”の現状を洗い出そうと、鹿児島県が初めて行った調査の結果がまとめられている。
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500メートル四方の範囲で、65歳以上の高齢者が50以上を占め、小売店舗が1軒以下の地域が、買い物弱者へのリスクが高いとされるエリアで、地図上に赤いメッシュで表示されている。その数は県内人口の約1割、実に14万人に上っている。
免許返納後はどうすれば…募る不安
買い物が困難な地域に住む人の生活はどうなっているのか?薩摩半島南部、南さつま市坊津町の平崎地区を取材した。
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ここに暮らすのは、児玉正俊さん(69)と妻・たまみさん(66)の2人だけ。かつては4世帯が住んでいたが2015年、地滑りのおそれがあるとして、約2カ月半にわたり避難指示が出され、これをきっかけに平崎地区を離れたという。
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「とにかく店がないというのは弱点です」と正俊さんは語る。買い物は車で細い林道が続く山を越えることも。この日は20分ほどかけて隣町のスーパーに向かった。
毎日買い物に出かけるわけにもいかず、まとめ買いや他の用事と合わせるなど、工夫している。正俊さんは「2人とも運転ができなくなった時、じゃあどうするか考えますよね」と将来の不安を口にした。
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そんな児玉さん夫婦の家には週1回、地元のJAが運営している移動販売車が訪れる。気になる免許返納後のことも考えて、積極的な利用を心がけている。
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たまみさんは「(家が)1軒しかないのにねえ。この人たちも大変よ。こんなに出さなくてもいいのに」とねぎらいと感謝の気持ちを語った。自然の豊かさが好きで、平崎地区に暮らし続ける2人。今はマイカーで買い物ができるが、店舗のない不安を少しずつ感じ始めていた。
「選ぶ楽しみを感じてほしい…」
一方、買い物弱者の支えになればと、2023年6月から個人で移動販売を始めた人が温泉の町・指宿市にいる。
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「地域の店、近くのスーパー、コンビニさえも行けなくて、困っている人がいっぱいいると思ったから」という山元成之さん(60)。
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この春、指宿市役所を定年退職。実家の商店を引き継ぎ、軽ワゴン車で買い物に困っている人の家を戸別訪問するサービスを始めた。
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この日、山元さんが訪れたのは独り暮らしの同級生、小野正和さんの家。
車いす生活で外出もままならない正和さん。単に物を届けるだけでなく、選ぶ楽しみを感じてほしいと、山元さんはリクエストより多くの商品を玄関先に並べる。
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そんな同級生の気遣いに、小野さんは「もうありがたいですよ。こうして見るのが楽しい。こういうのが欲しいと思えば持ってきてくれるし」と語った。料金はガソリン代の経費として1商品につき10円をプラスするだけ。
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山元成之さん:
地域から店がどんどん減った。本当に困っている人が多いと思う。なかなか品ぞろえもスーパーのようにはいかないが、そこは機動力でカバーして、玄関まで行き、できれば家に上がり、その人が動かないでいいような形で目の前で選ばせてあげている。それがとてもうれしいみたい
過疎化、高齢化を背景に今後も増えることが予想される買い物弱者。地域の実情や支援を求める人に合った、よりスピーディーな対応が求められている。
(鹿児島テレビ)