皆さんは「マインドフルネス」をご存じだろうか。
諸説あるが「今この瞬間に起こっている体験に意識を向けること」を指し、瞑想などで発達させることができるという。これを体験できる空間をトラックに搭載した、移動式の設備が登場した。

それが一般社団法人関西イノベーションセンター、株式会社chicabi、パナソニックグループが提供する「(MU)ROOM Ride(ムルームライド)」。トラック後方の荷台部分に1人用の瞑想室(縦2m、横2m、高さ1.76m)を設け、ミスト、光、音、香りで瞑想にいざなうという。

瞑想体験には15分・30分・45分のコースがあり、時間の選択が可能。自動の音声ガイダンスでサポートするため、初心者でも瞑想状態に入りやすいほか、胸に計測器を付けることで、瞑想の達成度を点数化した「瞑想スコア」を算出することもできるという。

ムルームライドは活用の方向性やニーズを把握しようと、11月~12月にかけて、大阪府内の商業施設や市街地、京都の寺社で、モニター・アンケートによる、有料での実証実験を行っているという。
興味深い試みだが、なぜ、移動式で提供しようと考えたのだろう。どんな体験ができるのか。開発プロジェクトに携わる、一般社団法人関西イノベーションセンターの担当者に聞いた。
空間を包み込む霧や優しい光、淡い香りを感じられる
――瞑想体験できる空間を開発したのはなぜ?
現代は心の健康が社会課題となっていて、マインドフルネスの需要が増加しています。また、特別な体験を提供する宿泊施設も増加傾向にあります。パナソニックグループはここに着目し、心と体を整える「(MU)ROOM」(ムルーム)という宿泊体験ソリューションを宿泊事業者向けに開発しました。これを株式会社chicabiと企画し、応用したものが、ムルームライドです。

――ムルームライドではどんな体験ができる?
屋外の空間→前室→瞑想室という体験フローで、利用者は瞑想室の中央に座って過ごします。空間を包み込む霧や優しい光、淡い香りを体感できるほか、瞑想状態をスコア化できます。パナソニックグループのミスト・光・音・香りの技術を活かし、瞑想に特化した環境となっています。

――ミスト、光、音、香りはどんなものになる?
ミストは極微細の粒子で霧の中を再現しました。光は遠近感を失わせ、多様なシーンを演出。音は人が耳で聞くことのできない周波数まで再現する、高解像度な音響です。香りは森林に含まれるアロマを採用し自然を感じられるものです。これらが変化することで瞑想に誘導します。
瞑想体験の潜在的なニーズを発掘したい
――開発でこだわったところは?
トラックの荷台部分という限られた空間でも、オリジナルの体験を損なわないよう、音や熱の環境、空気の流れについて検討を重ねました。音響やミストなどもチューニングしています。瞑想室の前に前室を設けることで、緊張状態をやわらげ、日常からシームレスに非日常に入れるようにしました。

――移動できることでのメリットや期待は?
これまではあり得なかった生活シーンや空間でも、瞑想体験を提供することが可能です、例えば、買い物帰りや仕事の休憩時間といった場面。気軽さは保ちながら、瞑想に触れることのなかった方々にも、瞑想を届けられると想定しています。潜在的なニーズを発掘したいですね。
――12月にかけて行なっている、実証実験の狙いは?
次のようなターゲットの反応を検証したいと考えています。(1)内省(自分の行動や言動を省みること)の時間を求める人。(2)DIYや陶芸など没頭する体験を好み、マインドフルネスにも興味を持つ人。(3)満員電車や都市部の混雑にストレスを抱え、仕事の合間にちょっとした気分転換の時間を求める人。(4)リフレッシュのために旅行する中で、偶然の出会いや発見を求める観光客。
初心者でも体験しやすいのでは
――マインドフルネス(瞑想)で期待できることは?
メンタリティの向上・感情のコントロール・身体的な健康・知的生産性の向上などが期待できると思います。瞑想には(1)気持ちを集中し心の中の深い世界を体験することを目的とするもの。(2)五感を研ぎ澄ませ自分が世界とともに存在することを感じることを目的とするもの。この2つがあると言われますが、ムルームやムルームライドは初心者でも体験しやすいと思います。
――ムルームライドの今後はどうなる?
まずはさらなる実証実験を行いたいと考えています。事業化の見通しが立った場合は、瞑想と親和性の高い体験と組合わせたパッケージの設計、BtoBサービスとしての販売・リースを検討しています。
瞑想室をトラックで移動できるのであれば、イベントスペースや商業施設の駐車場などにも展開できそうだ。将来的には皆さんの近くに、瞑想体験ができる空間がやってくるかもしれない。