北朝鮮の朝鮮中央テレビは「偵察衛星の打ち上げに成功した」として、炎を上げるロケットや笑顔の金総書記の写真を公開した。
今回、北朝鮮は事前の打ち上げの通告期間より前に発射したが、このフライング発射の理由として、3つの可能性が考えられる。

北朝鮮ミサイルがフライング発射 

北朝鮮は金正恩総書記立ち会いのもと、偵察衛星の打ち上げに成功し、早期に追加発射すると明らかにした。

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朝鮮中央テレビは「偵察衛星の打ち上げに成功した」として、炎を上げるロケットや笑顔の金総書記の写真を公開した。

偵察衛星は正確に軌道に乗ったとしていて、今後、早期に複数の衛星を追加発射するという。

これに対し韓国メディアは、韓国軍の話として、「衛星が軌道の上を周期的に飛行するかを観測し、成功したかを評価する」と伝えている。

発射を受け、韓国の尹大統領は「南北軍事合意」の一部効力停止を決定し、今後は南北の境界で韓国軍による監視・偵察活動が再開するとみられる。

北朝鮮は発射する期間について、「11月22日午前0時~12月1日午前0時」と日本政府に予告していたが、実際に発射したのは、21日午後10時43分頃で、予告期間の約1時間17分前だった。

なぜ、北朝鮮は通告期間を破り、前倒しで発射したのだろうか。

フライング発射3つの可能性

ここからは「フライング発射3つの可能性」について見ていく。

まず1つ目は、「発射台付近の天気」。

21日午後10時40分頃の気象衛星ひまわりの衛星画像を見ると、発射場のある東倉里(トンチャンリ)という地域には、ほとんど雲はかかっていなかった。このタイミングで、北朝鮮は発射を行った。

一方、22日正午には、 東倉里に厚い雲がかかっているのが確認できた。一部の韓国メディアは、「悪天候での発射は都合が悪いので、比較的天気が良かった通告期間前に打ち上げたのではないか」と報じている。

「フライング発射3つの可能性」2つ目は、「世界へのサプライズ」。

龍谷大学・李相哲教授は、「金正恩は誰も予測しないことをしたいという願望が強い人物」ということで、こうした見方もできるとしている。

金正恩氏の“サプライズ”といえば、これまでにも2020年の4月、金正恩氏に「危篤説」が流れ大きく報じられた。しかし20日後、手にタバコを持って指示するいつも通りの姿が動画で公開され、世界を驚かせた。

また、2022年11月には、急に娘のキム・ジュエ氏をメディアに初披露。その後は、手をつないで歩く動画なども公開している。このように急な行動・発表で驚かせてきた。今回もその1つかもしれないと指摘されている。

「フライング発射3つの可能性」3つ目は、「期間前なら監視がゆるい」と考えたのではないかということだ。

今回の発射に関して、龍谷大学・李相哲教授は「日米韓がかなり注目している。通告期間前に不意打ちで発射すれば、飛翔(ひしょう)体をはっきり物体として認識されないという利点があると考えたのではないか」という見方をしている。

監視体制がゆるい中で発射することで、失敗した際の迎撃を避けたかったのではないかという可能性も指摘している。
11月には、韓国軍による初めての偵察衛星の打ち上げを控えており、その韓国より先に発射して、北朝鮮もできるんだと見せつけたいという思惑も垣間見える。

ここで気になるのは、打ち上げは「本当に成功したのか」ということ。

北朝鮮は、偵察衛星の打ち上げは成功と発表しているが、日本政府の松野官房長官は「現時点で地球周回軌道への北朝鮮の衛星の投入は、確認されていないと認識している」としている。

さらに、ある防衛省幹部は「周回軌道に投入するために必要な速度に達していなかったとみられる」と話している。

北朝鮮は「今後早い段階で追加発射する」とも表明している。引き続き警戒が必要となる。
(「イット!」 11月22日放送より)

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