元お笑いコンビ「ザブングル」の松尾陽介さんの協力を受け、岩手・久慈市の縫製業社「いずみ」が、古着の着物を洋服に再生する事業「wappi(ワッピ)」を立ち上げた。日本の文化の継承とリサイクルにもつながる取り組みを取材した。

着なくなった着物をリメーク

岩手県の北部・久慈市や二戸市などの地域は、衣服を作る「縫製業」が盛んだ。2015年には、地元の縫製業社が集まり「北いわてアパレル産業振興会」を結成した。現在17社、約1,200人の技術者が日本のアパレル産業を支えている。

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振興会の会員企業の一つである「いずみ」は、高級ベビー服や子ども服を中心に製造している。子ども服を作ろうと思ったきっかけを「いずみ」の寿松木亨さんは、「世界の宝である子どもに関わる仕事ができて、それにより生活できるということも私たちの幸せの一つだと思っている」と話す。

女性が働きやすい環境づくり
女性が働きやすい環境づくり

地域の基幹産業として、雇用の場の創出や女性が働きやすい環境づくりにも取り組んでいる「いずみ」には優れた人材が集まり、その技術力が評価され、世界的に有名なブランドからの発注も請け負うようになった。

いずみ・寿松木亨さん:
高い技術者がいるだけでは事業は続かない。この地域が縫製業の産地として残っていることは、技術が高いのと真面目さだと思う。この技術の高さは世界に発信できるものだと思う

着なくなった着物をリメークして洋服に
着なくなった着物をリメークして洋服に

寿松木さんには「技術とともに日本の文化を世界に」という思いがあった。それを実現するために始めたのが、着なくなった着物のリメークだ。自社ブランド「wappi」を立ち上げ、商品の展示・販売を行う工房兼ギャラリーをオープンさせた。

いずみ・寿松木亨さん:
着物を一からほどく。スカジャンなどを作り直すので、ほどくのにも技術が必要。ほどいた後、柄をどう組み合わせるかがとても大事。技術者が縫うことで着やすい形に作り上げる努力をしている

元ザブングルの松尾さんが助っ人に

新ブランドの立ち上げには、強力な助っ人のコラボもあった。寿松木さんの友人であり、元お笑いコンビ「ザブングル」の松尾陽介さんがデザインを担当することになった。

いずみ・寿松木亨さん:
コロナ禍で生き残るために何かないかと思った時、自社で何かやっていくのが一番だと思い、松尾さんに相談したところ、「面白そうだからやってみよう」という一言があった。今まで忘れていた仕事に対して面白そうだからやってみようという松尾さんの一言で、(自社ブランド設立への)一歩を踏み出させてもらい、一緒にやるようになりました

元ザブングル・松尾陽介さん:
最初はイメージが湧かなかった。どういうものができるんだろうと思っていた。和服の独特な柄がシンプルな洋服と相性がいいと思い、年齢が少し上の方も若い世代の方も両方が着られるようなデザインにしたい。小物やバッグなど和服を使ったデザインを考えたら面白そう。そういったものも今後考えていきたい

リメークした着物の可能性に期待

松尾さんとコラボした新ブランド「wappi」の着物のリメーク商品を2着紹介する。

今風に仕上げられたスカジャン
今風に仕上げられたスカジャン

緑色が鮮やかなスカジャンは、元々の着物の柄をうまく組み合わせ、今風に仕上げたジャンパーで、袖のリブなど着やすさにも注目して作られた。背中中心部の縫い合わせも、柄の組み合わせに乱れがなく、きれいな仕上がりだ。

シルエットが美しいワンピース
シルエットが美しいワンピース

ワンピースの青い生地でシンプルな柄は、ワンピースながらどこか和のテイストを感じさせる。生地のコントラストもアクセントに、シルエットが美しい一着だ。

ーーまだまだ可能性は広がると思うが、これからどんなアイテムを目指していきたい?

いずみ・寿松木亨さん:
世界に誇れる着物を使った世界一の品質の商品を作り上げて、世界に発信して、世界中の色々な人たちに日本の文化を伝えるとともに、いいものを着てほしいと思います

日本の歴史と伝統を象徴する着物。いったん役目を終えた着物に手を加えることで、新たな価値が生まれている。文化の継承とSDGsにもつながる試みは注目を集めそうだ。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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