過疎化や高齢化といった中山間地域の抱える課題解決にドローンが切り札になるかどうか。広島県神石(じんせき)高原町でドローンを使った物流の実証実験が行われた。

コンビニなどがない中山間地域は物流がライフライン

鈴木崇義記者:
いま式典が行われていますが、あちらをみると地域課題の解決に貢献する実証実験、出発式と書かれています

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広島県の東部山間地、神石高原町は、高速道路や鉄道が通っていない。今の人口は8000人余りで、2000年から2020年の人口減少率がおよそ35%に上っており、不便な生活環境や産業の減少がその原因だという。

今回の実証実験は、神石高原町や物流大手、セイノーホールディングスなどが手を組み、高齢者向けに、できたての弁当をドローンで運ぶというもの。

ドローンが高齢者などの買い物の課題を解決できるか、住民の理解度向上や定期飛行に向けた課題を洗い出すのが実験の目的だ。

使われる機体は飛行部と荷物搭載部が分離した構造で、飛行や着陸性能に優れた物流用に特化した最新ドローン。

弁当3つと外箱のおよそ1.8kgの荷物を6.5km離れた場所に運ぶ。

鈴木記者:
ちょうどいま目の前の山の上をゆっくりとこちらに向かって進んできています。迫ってくるときの音は、静かというよりは何か存在感を感じるような音に聞こえます

およそ15分で到着。そして驚いたのは着陸時にドローンが見せた動きだ。

鈴木記者:
いま自動でモノを置いてまた飛び立っていきました。積むときは人が積みましたが、下ろすときは自動で下ろすんですね

温かいまま、中身も崩れず、弁当の“空輸”成功

はたして、届いたお弁当の中身は…。
担当者:
崩れていません。温かいです

これまでもドローンを活用した様々な実証実験を重ねてきた神石高原町だが、その”可能性”について…。

神石高原町 入江嘉則町長:
山林が面積の8割ですから、街中を飛ばすことよりは、ドローンは有利なのかなと。きょうの実証実験を踏まえ、計画を作りながら来年、再来年あたりから実際に活用できるようにできたらと思う

一方、ドライバーの時間外労働が規制される2024年問題が迫る物流業界も”非効率を解消”するためドローンに大きな期待をかける。

セイノーホールディングス ラストワンマイル推進チーム 中矢健一郎 西日本担当課長:
物流各社の負担はかなり大きい。中山間地域でもモノは動いているが、実際にトラックの荷台をあけてみるとおそらく3割くらい。ほとんど空気を運んでいる状態。

中矢 担当課長:
例えば、ぽつんと一軒家のようなところになると、車だと、行って帰るだけで30分かかる、すごく非効率。まずはそういったところをドローンに担ってもらって、効率のいいところはトラックで、効率の悪いところはドローンでという形ができれば、時間的な問題や人の問題は解決できるんじゃないか

過疎化と高齢化が進む中山間地域は、コンビニなどの店もなく孤立している場所も多い。そのような地域に住む高齢者らにとって、物流は重要なライフラインだ。安全性を高め、コストを抑えることで、ドローンがライフラインを担うことに期待がかかっている。

(テレビ新広島)

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