ガザ地区のシファ病院を調査していたイスラエル軍は16日、ハマスの司令部があるとする地下トンネルを見つけたと発表し、映像を公開した。
しかし、映像にはトンネルの入り口とみられる部分は映っているが、その内部や、司令部とおぼしき部分は確認できなかった。
シファ病院に地下トンネル発見と発表
イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ最大の病院で、イスラム組織ハマスの地下トンネルが見つかったと発表した。
しかし、ガザ保健相はイスラエル側の発表を否定している。
イスラエル軍は突入したシファ病院を15日から調査していたが、ハマスの司令部があるとする地下トンネルを見つけたとし、16日、映像を公開した。
一方、ガザ保健省は、病院は人道的施設であり、イスラエル軍の発表は虚偽であると主張した上で、「子どもたちのための食糧、ミルクがない。電気もなく、未熟児が多数死亡する可能性がある」と現状を訴えた。
ハマスに拉致された人質の捜索も続けられていて、イスラエル軍はシファ病院の近くの建物で、65歳のイスラエル人女性の遺体が見つかったと発表した。
ここからは立石氏がお伝えする。
まずは、イスラエル軍が公開した「ハマスのトンネル」映像を改めて見ていく。
映像は30秒近くあり、イスラエル軍はシファ病院の施設内としている。瓦礫の中にトンネルの入り口のような穴があるのが分かる。
そして、トンネルからカメラを振り上げると、シファ病院の病棟が見える。
これに対して、ガザ地区保健省は「イスラエル軍の発表は虚偽である」と反論している。
今回の映像では、トンネルの入り口とみられる部分が映っているが、内部や司令部とおぼしき部分は確認できない。
ハマスの地下トンネルは500kmにもおよび、ガザ地区全体に張り巡らされているとされる。
FNNが取材したイスラエル情報機関の元情報官は、「トンネルには爆発物が仕掛けられている恐れがあるため、イスラエル軍は慎重に対応している」として、捜索には時間がかかる可能性を指摘している。
こうした一連のイスラエル側の情報公開に対し、ハマス側も反論している。
16日、イスラエル軍が公開したシファ病院のMRI病棟で、自動小銃や弾薬を見つけたと説明する映像を紹介したが、ハマスの政治部門の幹部が、その映像を引用しながら会見で否定した。
会見では、「指輪だって外すのに、MRIの部屋に武器などの金属を持ち込む事はありえない。病院に持ち込んだのはイスラエルだ」などとして反論。シファ病院にハマスの司令部はないと主張した。
情報の信憑性に厳しい目
またしても、イスラエルとハマスで意見が対立している。この状況に海外のメディアなどはどのように見ているのだろうか。
欧米メディアの反応も、イスラエル軍の出す証拠に対しては、疑問を指摘しているものもある。
フランスの国営放送、フランス24は「イスラエルとハマスが双方のナラティブ(自らの視点)に立った主張を強調し合っている」としている。
また、イギリスのBBCは、イスラエル軍に同行する形で初めてシファ病院の中に入った。
しかし、医師らへの取材を行うことは出来ず、中に入った記者は「本当の証拠として、地下の拠点を示す必要がある」とリポートしている。
そして、イスラエルが公開してきた動画には、他にも疑問が指摘されているものがある。
13日にイスラエル軍が公開した、ランティシ病院内の映像だ。イスラエル軍は、この病院もハマスの武器庫になっていると説明していた。
そして、壁際に張られたアラビア語が書かれた紙を指し示して、「これは人質を見張るハマスの戦闘員のシフト表で名前が書いてある」と主張していた。
実際に訳してみると、一番上にはハマスが使う今回の戦闘の作戦名が書かれていた。
ただし、下の文字は戦闘員の名前ではなく、曜日が書かれており、戦闘を始めた10月7日からの日付け表だった。
単純なミスなのか意図的なものかは不明だが、イスラエル軍はこの後、訂正した。こういった事からも、イスラエル軍の公開する情報の信憑性にも厳しい目が向けられている。
シファ病院、ランティシ病院ともに、イスラエル軍の作戦により閉鎖状態にある。これにより実質、ガザ地区は医療崩壊に追い込まれている。病院の攻撃に当たっては、イスラエル側に正確な情報公開が求められている
(「イット!」 11月17日放送より)