福岡市の高校で開催された学園祭。訪れた人たちが思わず「かわいい~」と口にする生き物…それは、沖縄からやってきたカメだ。なぜ福岡に沖縄のカメがいるのか?取材すると、関係者の頭を悩ませている問題があった。

捕獲も処分もできない“驚異” カメが持つ“問題”

福岡市の福岡第一高校・福岡薬科大付属高校で開催された学園祭で注目を浴びる、丸い背中が特徴的なカメ。沖縄・宮古島からやってきた「ヤエヤマセマルハコガメ」だ。

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なぜ福岡の高校に宮古島のカメがいるのかというと…高校の水中生物研究会が、セマルハコガメの持つ“ある問題”に気づき、学校で飼育することになったのだという。

水中生物研究会・太田喜視顧問:
このカメは、宮古島の方にしてみたら本来いないカメです。宮古島としては、居てもらいたくないカメです

ヤエヤマセマルハコガメは名前の通り、原産は石垣島や西表島がある八重山諸島。石垣島から約133km離れた宮古島にとっては、外から人為的に持ち込まれた「外来種」となる。

宮古島市の職員に話を聞くと…。

宮古島市環境保全課・齋藤覚志さん:
去年(2022年)の調査で、宮古島の希少生物であるカタツムリの仲間を食べていることがわかってきたので、数が増えることに関しては、私たちとしては率直に“驚異”として捉えています

現在、50匹のヤエヤマセマルハコガメを仕方なく保護している宮古島市。さらに頭を悩ます問題も起きている。

宮古島市環境保全課・齋藤覚志さん:
定期的に駆除したいんですけど、できないというのがもどかしいです

ヤエヤマセマルハコガメは1972年、国の天然記念物に指定された。天然記念物に指定されると法律上、捕獲や処分ができない。

「少しでも宮古島の助けになりたい」と、その話を知った水中生物研究会の生徒たちが10月、宮古島に赴き、オスとメス1匹ずつを譲り受けてきたのだ。

水中生物研究会・三角桃葉さん:
元々いなかった場所に違う生き物が持ち込まれて、という問題が多くなってきていると思うので、それが少しでも少なくなっていけばいいなと思います

大学の構内にも…外来種は身近な場所に

外来種は福岡にも生息しているのか?
取材班が向かったのは、九州大学伊都キャンパス。外来種にくわしい上野高敏准教授を訪ねた。

九州大学大学院 農学研究員・上野高敏准教授:
九州大学の構内なんですけど、外来種はいっぱいいるんですよ

上野准教授と、キャンパス内で外来種を探すことに。
柱や看板などの隙間を確かめていくこと約5分。「あ、ここに」と見つかったのは、1匹のクモ。強い毒を持つ「セアカゴケグモ」だ。

九州大学大学院 農学研究員・上野高敏准教授:
これ、セアカゴケグモの巣ですね。とっても身近です

キャンパスのほんの一部を探しただけで、合計5匹のセアカゴケグモが見つかった。セアカゴケグモといえば、2023年7月、北九州市の公園で小学3年の男の子が指をかまれる被害があったばかりだ。

九州大学大学院 農学研究員・上野高敏准教授:
目線よりはるかに下の所に巣を作っているので、子どもが手を突っ込むかもしれないので、公園とか小学校とかでは駆除した方が良いと思う

生態系やヒトの命、農林水産業への被害を及ぼすおそれがあるとして、外来種の中でも「特定外来生物」に位置づけられるセアカゴケグモ。このほかにも福岡県内では、アライグマやアメリカザリガニなど、27種類の特定外来生物が確認されている(9月時点)。

ペットにも多い“外来種”農作物被害も深刻化

今後、警戒が必要となる外来種について、県保健環境研究所の中島淳専門研究員に話を聞くと…。

福岡県保健環境研究所・中島淳専門研究員:
アライグマ。年々増えていまして、ほぼ県内全域と言って良い状況かなと思います

特定外来生物のひとつ、アライグマ。県内では農作物の被害が深刻化していて、2021年度の被害額は2,500万円を超えた。調査のために太宰府市の山林に仕掛けたカメラには、夜間に活動するアライグマの様子が捉えられていた。

福岡県保健環境研究所・中島淳専門研究員:
手(前脚)が非常に器用で指が開いてますよね、モノをつかめるんですね。この手で色んな生き物を捕まえて食べてしまう。法令的には問題ありませんので、駆除しようと思えば駆除できます。害があるんだから対策をする必要があるっていうのは事実ですが、あとは誰がするかとか、予算をどこから持って来るかとか、新しい問題ですので、その辺の方法とか場所とか、課題がいくつか今あって、なかなか難しい状況にはあります

2008年度はわずか20頭だったアライグマは、年々発見される数が増え、2022年度には3,470頭に及んだ。15年間で173倍に増えた計算になる。

宮古島のカメやアライグマも、人が運んだことが原因とされている。ペットには外来種も多いので、人間が責任を持って飼うことが外来種問題を食い止める近道かもしれない。

(テレビ西日本)

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