岸田首相は「幸齢社会」実現会議で、介護離職を防ぐ制度に関して、2024年通常国会への法案提出を指示。ある試算では、年間12兆円もの経済損失がある認知症。その認知症患者の希望を強調し、地域社会の支援を促す。一方で企業も従業員の健康に配慮する「健康経営」への向き合いが求められている。

「幸齢社会」実現に向け法案提出へ

認知症対策について、当事者らを交えて議論する「幸齢社会」実現会議が開かれ、岸田首相は介護による離職を防ぐ制度に関して、2024年の通常国会への法案提出を指示した。

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岸田首相:
認知症になっても働き続けたい、地域に貢献したいという希望をかなえる場所が身近にあることは重要です。

岸田首相はこのように述べ、地域社会や仲間とのつながりを維持できる居場所を、全国に広げる必要があると強調した。

その上で岸田首相は、介護による離職を防ぐために検討が進められている、仕事と介護の両立支援制度について、年明けの通常国会での法案提出に向け、早急に結論をまとめるよう指示した。

「国と企業」視点で認知症対策

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
認知症など、家族の介護のためにやむを得ず仕事から離れざるを得ない方もいるということですが、経済という視点で見ると、崔さんの目にはどのように映っていますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
実は認知症の経済損失は、年間12兆円の試算がある。この12兆円というのは、日本で最も稼いでいる企業である、トヨタ自動車の売上高の約3分の1にも匹敵する規模。高齢化する日本経済への影響は大きい。

最近の研究を見ると、日本の場合、働き手の人口・生産年齢人口に対する高齢者の割合は約4割となっており、こうした経済損失はさらに増える可能性もある。

堤 礼実 キャスター:
国を挙げての対策、これについてはいかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
今回のような政府レベルでの会議や検討は、取り組みの加速につながるので歓迎したい。

高齢化とともに認知症患者が増えることが予想され、今後はマクロとミクロの両面での施策が重要になってくる。

まずマクロでは、今回のニュースにもあるように、従業員による介護離職を防ぐ施策について国の更なる制度設計や、介護休業期間の手当ての話が進むことが期待されている。

堤 礼実 キャスター:
一方のミクロについては、いかがですか。

エコノミスト・崔真淑さん:
ミクロでは、従業員の健康に配慮する企業としての向き合い方が問われている。

具体的には、将来的な認知症リスクを下げるために、従業員の健康に対して企業は何をすべきか、何かできるのか。これは「健康経営」とも言われている。

東証では、健康経営銘柄という企業群も選定されるなど経済界も注目する動きとなっている。

堤 礼実 キャスター:
具体的に、いま企業にはどんな試みが求められているのでしょうか。

健康経営は企業業績にプラス効果

エコノミスト・崔真淑さん:
企業が従業員の健康、例えば、睡眠不足、食事、メンタルヘルスなどへ配慮する経営。

エコノミスト・崔真淑さん:
従業員の健康にまで気配りすることは企業コストのように見えるが、ファイナンス研究では、「健康経営」は企業業績に時間を経て、プラスの効果があることが報告されている。

人口の高齢化が進むことで、従業員の健康にどれだけ配慮するかは、企業の人材獲得においても重要なテーマになるかもしれない。

堤 礼実 キャスター:
超高齢化が進む日本ですから、介護と仕事を両立させていくために、何ができるのか。さらには、やむを得ず職を手放す人をどうサポートしていけるのか。国として、そして一人一人が考えていく必要があるように思います。
(「Live News α」11月13日放送分より)

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