子どもが自由な発想で自分の責任で遊べる場所「プレーパーク」が注目されている。
背景を探ると、現代の子どもたちから失われている「3つの間」があることがわかった。
プレーパークとは?
札幌市中央区、住宅街のど真ん中にある桑園公園。
ハンモックをブランコのようにして楽しんでいる子どもの姿も。
公園内は子どもたちの笑い声であふれていた。
この記事の画像(10枚)街中の公園にもかかわらず、たき火もある。
ここは桑園公園で月に1回開かれる子どものあそび場「プレーパーク」だ。
桑園公園での「プレーパーク」を主催している、桑園あそびばプロジェクトの寺坂崇さん。
「どうしても命にかかわることは介入することになるが、それ以外は子どもたちの判断に任せる」(寺坂さん)
自由な発想と自らの責任で遊べる「あそび場」
プレーパークとは、1970年代に東京で始まった子どもたちが自由な発想で自らの責任で遊べるあそび場のこと。
段ボールやハンモック、竹馬などの遊び道具をプレーリーダーと呼ばれる大人が用意するが、あくまでも役割は子どもたちの遊びを見守ることだ。
例えば木をのこぎりで切ろうとする子ども。枝が曲がっていて危険に見える。
「待って。よく考えてみて」(プレーリーダー)
プレーリーダーがひと声かけて止めるが、やり方は教えない。
周りの子どもが切り方を教える。
「ココを足で押さえて」(子ども)
「子どもが遊ぼうとしたり自由にすると大人が介入してしまう。実は子どもたちが考える力を奪ったり、危機管理能力が育ちにくい。成功体験も失敗体験も、まるごと彼らの財産にしてほしい」(寺坂さん)
子どもたちが自由に遊べる空間を
プレーパークを始めたきっかけは、公園で遊ぶ子どもの姿が少ないことに気づいたからだという。
「習い事をたくさんしていて、なかなか放課後に遊びづらい。遊ぶ場所も限られている。自由に遊びが展開できていない」(寺坂さん)
さらに、子どもたちが遊ぶはずの桑園公園では防球ネットがあるにも関わらず、ボール遊びが禁止されていた。
「ただボール遊びをしているということで、110番通報されたことがあったと聞いた。僕らが緩衝材のように関われたらなと思っている」(寺坂さん)
大人が見守る中で子どもたちに自由に遊べる場所を作ってあげたいと、桑園住民の有志が2019年から始めた。
「1年目は『何をするの?』とか『どうやって遊ぶの?』とか、子どもたちが聞いてきた」(桑園あそびばプロジェクト 柴田伸俊代表)
プレーパークを始めてから4年が経過。
今では段ボールを自由に使い、落書きやトンネルなど自分たちでいろいろ遊び始めたという。
そして子どもたちに人気の「たき火」。寺坂さんたちが行政や住民に許可をもらい実現した。
自由な外遊びは子どもの成長に欠かせない
自分たちで火をおこして、自由に食材をもってきて食べる。
「(Q.食材は買ってきた?)いや、家にあった。こっそり持ってきた」(参加していた子ども)
子どもの発育や発達に詳しい札幌国際大学の蔵満保幸学長は「子どもたちの自由な外遊びは、子どもの成長にとって欠かせない」という。
「子どもの脳の発達は、基本的には友達と遊んだり話したりするのが最大の刺激。それぞれ意見を出しながら遊びが発展していくのがとても大事。どうやったら面白くなるかワクワクしながらコミュニケーションをとる」(札幌国際大学 蔵満保幸学長)
スマホでなんでも答えが出る時代だが、子どもが五感をフル活用して遊ぶことで、新しい発見や疑問を抱き、集中力や学ぶ意欲を引き出せるというのだ。
子どもの成長の場として期待できるプレーパークは、今後も需要が高まりそうだ。
子どもが失った3つの「間」
札幌市によると、このようなプレーパークを、各区で11の団体が開催していて、子どもたちにとって楽しい場所が増えつつある。
札幌国際大学の蔵満保幸学長によると、少子高齢化が進み社会のルールが変わり、令和の時代の子どもたちには「3つの間」が無くなっていると言う。
「空間」:空き地の減少や公園での禁止事項が増えることなどにより、子どもたちがのびのびと過ごせる場所が失われている
「時間」:塾や習い事に通うことが一般的となる中、友達と遊ぶ時間がなくなっている
「仲間」:「空間」と「時間」がないことで、外で一緒になって遊ぶ「仲間」が減っている
蔵満学長は、「子どもが遊ぶのは、大人の仕事くらい当然のこと。社会全体で見守っていく自覚が必要」と話している。