三井住友海上が「いいね」の数で、学生を採用するプロジェクトを開始した。オンライン議論の“見える化”により、採用活動の透明性と公平性を高め、ミスマッチを防ぐことが狙いだ。

採用力向上を目指す新アプローチとなるが、発言力の高い以外のいろいろな能力の人が採用できるように、多様な選考手法を考える必要もありそうだ。

三井住友海上「いいね」の数で採用に

「いいね」の数で採用を行う、新たな就職活動の取り組みが始まった。

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損害保険大手の三井住友海上が、8日から始めた採用プロジェクトでは、参加する学生が社員と一緒にオンラインで議論を行い、参加者は投稿された意見やアイデアに対し、「いいね」を送り合うことで、評価を見える化する。

また、プロジェクトのエントリーフォームには名前や、メールアドレスの項目はあるが、大学名を書く欄や、顔写真を登録する欄はない。

1カ月の期間中は、オンラインでのやり取りのみで、対面での面接は行われない。

三井住友海上 人事部採用チーム・島村太朗課長:
(学生が)いろんな選択肢がある中で、自分はこういうところをこの会社に評価されたと、自信を持って選べるようになるというところは、当社の採用力や採用競争力を上げていることにもつながると思っている。

三井住友海上は、採用活動における透明性や公平性を高め、ミスマッチを防ぐ狙いだ。

「いいね」の数が多かった学生については、2024年6月以降、入社の意思を確認した上で採用するという。

発言内容に左右される“実力勝負”

「Live News α」では、(株)キャスター取締役CROの石倉秀明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
人材の採用と育成に長く携わっている石倉さんは、こういった採用の形をどうご覧になりますか。

(株)​キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
「いいね」が多かった人を採用と聞くと、一見、人気投票のように見えますが、実態は違います。これはある意味では、実力採用に完全にふり切っている取り組みだと言えます。

社員と学生が同じツールを使い、共通の議題に対して議論をすると言いますが、ツールに招待された人しか入れない形になっています。

なので、知らない人にウケるかどうかではなく、本当に周囲が納得した意見を言ったり、周囲にとって有益だったり、貢献した人に「いいね!」が集まる仕組みとなっています。

堤 礼実 キャスター:
発言の内容や共感を集められるかなどで、その学生の適正を見ようというわけですね。

(株)​キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
活動の中の発言などはすべて残るので、誰がどのくらい活動に貢献したかが見えやすくなっています。しかも、学校名などもわからない状態なので、明らかに評価は発言内容に左右される実力勝負。

新規事業などを作っていかないといけない企業が、それができる可能性のある学生を選ぶ手段として、新しい形となるのではないでしょうか。

堤 礼実 キャスター:
ここで問われる能力は、仕事にも通じるものがありそうですね。

(株)​キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
入社した後にやる仕事と同じように、自分が伝えたいことや考えを周囲に理解してもらえるように伝えるコミュニケーション能力や、考えをわかりやすくまとめる力などが見えます。

ただし、本当にこの形の選考だけで、あらゆる能力が高い人が採用できるかは考える必要があるかもしれません。

多様な選考方法で多面的な人材を

堤 礼実 キャスター:
どういうことでしょうか。

(株)​キャスター取締役CRO・石倉秀明さん:
今回のやり方だと、議論したり意見を言ったり、考えを人に伝えるのが上手い人が高く評価されることになりますが、そういったことが得意じゃなくても、優秀な人材というのは存在します。

だからこそ、今回のように実力勝負で採用するのであれば、いろいろな能力の人が採用できるように、他にも多様な選考手法を考えたり、それを組み合わせて人材を見つけていくということも大事になりそうです。

堤 礼実 キャスター:
エントリーシートなどの経歴は関係なく、アイディアやスキルで勝負することによって、より多くの可能性が生まれるのではないでしょうか。

こうした新たな視点から、採用の形を作っていってほしいと思います。
(「Live News α」11月8日放送分より)

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