東日本大震災で被災した宮城県内の沿岸部を走る「東北・みやぎ復興マラソン」が11月5日、5年ぶりに行われた。ランナーもそれを支える人たちも、それぞれの「想い」を胸に駆け抜けた一日となった。

待望5年ぶりの開催

東日本大震災の復興を後押ししようと、2017年に始まった「東北・みやぎ復興マラソン」。台風や新型コロナの影響で中止が続き、5年ぶりの開催となった。

ランナーは、復興への「想い」をゼッケンに書き、42.195キロを走り抜く。

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「ゼッケンには『元気いっぱいな街に』と書きました」

こう話すのは、この春警察学校に入学した及川心愛さん。「警察官になるという夢への一歩にしたい」そんな思いから出場を決めたという。

「自分が元気に走っている姿を見せたい」と笑顔で話す及川さん。警察学校の同期の仲間と、初めてのフルマラソン完走を目指す。

復興支援への感謝を伝えたい

午前9時10分。フルマラソンにエントリーした8000人を超えるランナーがスタートした。コースは仙台、名取、岩沼の3市をめぐる。4分の3が津波の浸水域だ。

ランナーは沿岸部に向かって仙台市内を走り、15キロを過ぎた地点で「東部復興道路」へ。
仙台市宮城野区岡田のエイドステーションに差しかかる。

このマラソンの特徴の一つが、エイドステーションで被災した地域の特産品などを振る舞われること。「復興支援への感謝を伝えたい」そんな思いが込められている。

このエイドステーションで提供されたのは「ゆべし」。作ったのは石巻市築山にある加藤菓子店。震災の津波で被災し、多くの人の支えで店を再開できたことから、感謝を伝えたいと今回の提供を決めた。

用意されたのは名物の「くるみゆべし」6900個。一度にこれだけの数を用意したことはほとんどない。加藤菓子店の加藤喜美雄さんは「頑張ってやっていますよと、皆さんにお届けしたい。ゆべしを食べて無事完走してほしい」とランナーにエールを贈った。

笑顔で「くるみゆべし」を笑顔で受け取ってくれる多くのランナーたち。加藤さんは、「震災前から景色もずいぶん変わったけど、復興した姿を見てもらいたい。マラソンを通じて色んなことを感じてもらえれば」と話した。

「それぞれの想い」胸に

「東部復興道路」を抜けると閖上大橋を渡りコースは名取市へ。沿道では閖上太鼓保存会による勇壮な太鼓による応援と地元の人たちがランナーに声援を送る。

スタートで意気込みを語ってくれていた及川さんも走り続けていた。

また、この場所で出会ったのは、閖上に住む斎藤知佳さんと娘のいろはちゃんの親子。話を聞くと、ランナーとして参加した夫・拓磨さんを待っているという。

拓磨さんが知佳さんと娘のいろはちゃんを見つけると喜び駆け寄ってきた。いろはちゃんを抱きしめ、パワーを充電。家族とのひと時を過ごしすぐさま走り出す。知佳さんは「格好よかったですね」と夫の雄姿を目に焼き付けているようだった。

その後、ランナーたちは岩沼市へと入り、復興を象徴する公園「千年希望の丘」を回り、再び名取市へ。多くのボランティアや地元の人の声援を受けながらゴールを迎えた。

石川県から参加したという、完走したランナーは「かさ上げ道路を走って、震災の爪痕がまだ残っていると感じて、早く復興できたらいいなと思った」と話してくれた。被災地を走ることで津波の恐ろしさ、復興の現在地を感じているようだった。

閖上で出会った斎藤さん親子も夫・拓磨さんをゴールで出迎える。スタートから約4時間50分。家族の応援を受け、見事初めてのフルマラソンを走りきった拓磨さん。「娘と復興のために走りました」と喜びをかみしめていた。

「沿道の声援もあって、しんどいというより楽しかったし、気持ちよかった。復興を走りながら感じることができて、最高のランでした。」
(齋藤拓磨さん)

多くのランナーが続々とゴールしていく中、警察学校の同期と参加した及川さんの姿が。スタートから5時間46分、無事「完走」という目標を果たすことができた。先にゴールしていた仲間たちと喜びを分かち合う。

及川さんを含め、今回エントリーした警察学校初任科生21人全員が見事完走。この経験を糧に「夢の警察官」への意気込みを新たにしていた。

「疲れたけど充実してたなという感じがします。県民の皆さんに安心感を与えられるような強くて優しい警察官になりたいです」
(及川心愛さん)

東日本大震災で被災した地域を舞台に開催された、「東北・みやぎ復興マラソン」。走る人も、支える人も、それぞれの「想い」を胸に駆け抜けた。

(仙台放送)

仙台放送
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