廃業に追い込まれた銭湯が復活した地域が北海道函館市にある。

住民から安堵の声が上がる一方で、銭湯がなくなったままの地域も。

冬を目前にした「風呂困難者」の現状を取材した。

街の銭湯が廃業 置き去りにされた“風呂困難者”

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函館市の湯川団地にある銭湯「菊乃湯」。

燃料費の高騰などにより2023年9月に廃業したが、函館市が10月に買い取りリニューアルし、営業を再開した。

菊乃湯は、湯川団地の近くにあるたった一つの銭湯。

594世帯が入居している湯川団地
594世帯が入居している湯川団地

湯川団地には現在594世帯が入居しているが、部屋に風呂はついていない。

団地の住民は、菊乃湯を日々利用している。

地域でたった一つの銭湯 廃業に追い込まれる

2022年、菊乃湯は燃料費の高騰などで店主の松倉重直さんが「閉店」を考えていたという。

「油代が1~5月まで120万円の赤字。続けたいと思うけど難しかった」(当時 菊乃湯経営者 松倉重直さん)

地域でたった一つの銭湯がなくなれば、入浴に苦労する“風呂困難者”が出てしまう。

燃料費の高騰はその後も続き、松倉さんは2023年9月、廃業せざるをえなかった。

函館市が買い取り リニューアル

その菊乃湯を10月、函館市が買い取った。

受付には市の職員を配置し、清掃作業などは民間の業者に委託。

番台を撤去して券売機を置き、脱衣所の前に休憩スペースを設けるなど、リニューアルに約1000万円をかけた。

「うれしい。税金を使うことに反対する人もいるかもしれないが、ありがたい」(菊乃湯 元経営者 松倉重直さん)

銭湯が廃業したままの地域も

一方で、市内には銭湯がなくなったままの地域もある。

函館市弥生町で昭和の初期に建てられた「大正湯」。

2022年8月、機械の老朽化などを理由に閉店した。

大正湯は市の「景観形成指定建築物」に指定されていて、番台や靴箱、浴室などがレトロな和洋折衷の雰囲気を残したまま保存されている。

廃業した大正湯の近くには2つの団地があり、あわせて41世帯が暮らしていて、部屋に風呂はついていない。

団地の住民は、市電などを使い約3キロ先の温泉施設に通っている。

往復の交通費は400円以上かかるという。

月に数回しか銭湯に行けていないという男性も。

大正湯の廃業後、市は対策を打ち出せていない。

「大正湯付近の方もそうだし、他にも入浴難民というケースは出てきていると思う。いますぐ具体的な策を大正湯付近や他のエリアに予算をつけて講じていくということではないが、きめ細かく聞き取りするなりしていく」(函館市 大泉潤市長)

廃業から救われた銭湯がある一方で、銭湯がなくなったままの地域もある。

住民が健康な生活を送るための対策は取れないのだろうか。

北海道文化放送
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