静岡県三島市で“粗大ごみ”を“売り物”にするという取り組みが始まった。背景にあるのは市の最終処分場の許容量が限界に近付いているという切実な事情。ただ、利用者からは好評で、他市町への広がりも期待される。

なぜ?清掃センターに“売り物”が

静岡県三島市加茂之洞にある清掃センター。ここの一角になぜかイスや絵本ラック、小物入れといった“売り物”が並んでいる。

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これらはいずれも市民が“粗大ごみ”として捨てた品々だ。

三島市では2023年9月からフリマアプリ・メルカリを利用して、まだ使用出来る“粗大ごみ”の販売を始めた。そこには三島市を取り巻く切実な事情がある。

市民1人あたりが1日に排出するごみの量は823グラム。これは県内で人口が10万人を超す自治体の中で4番目に多い。市の最終処分場は許容量の9割以上が埋まるほぼ満杯の状態で、このため毎年 約8000万円もの費用を投じて、県外の施設に焼却灰を搬出している。

三島市の最終処分場
三島市の最終処分場

ごみの削減を目的とした“粗大ごみ”のメルカリでの販売は県内で初めてで、三島市廃棄物対策課の山添豊さんは「きれいな物もある中で、どうにかしたいと思っていた」と明かす。

ごみの削減 作業員のやりがいにも

販売開始から約2カ月。出品数は130件を超え、相場よりも格安ということもあって8割の商品に買い手がついた。ごみの削減量としては1トン以上。売り上げ金の約10万円は、市内のごみ処理に要する費用に充てられている。

”品定め”する職員
”品定め”する職員

“品定め”をするのは職員たち。日々、清掃センターに運ばれてくる粗大ごみの中から、壊れていない物、ひびが入っていない物など、まだ使えそうな物を選別し汚れを落とした上で“売り物”へと蘇らせる。

三島市廃棄物対策課・山添豊さん
三島市廃棄物対策課・山添豊さん

山添さんは「今までは『これも捨てるんだ』とちょっと悔しい思いもあったが、みなさんにまた使ってもらえると嬉しいし、楽しいところがある。作業員も『やりがいが出た』と話していて、すごくよかったと思う」と笑顔を見せる。

リユースマインドの醸成へ

ちなみに売れ筋は家具やインテリアで、山添さんの実感としてガラス製品は「意外と売れない」という。

三島市の出品画面
三島市の出品画面

自治体による出品という安心感もあってか、すでにメルカリのフォロワー数は1000人以上。配送サービスはなく、清掃センターでの引き渡しのみとなっているがリピーターもいる。商品を引き取りに来た人に話を聞いてみると「前回は大きなタンスを買った。ごみを減らそうという動きで、すごく良いと思う」と満足げな様子だ。

山添さんは「誰かにとって不要な物でも誰かにとっては必要な物ということで需要がある」との感触を得ていて、豊岡武士 市長も「断捨離の時代だが、ごみにしてしまうのは忍びないということもある。有効に活用するのはすばらしい」と胸を張る。

ごみを減らしたい自治体と安くて良い品を求める消費者。双方がWin-Winの形で取り組むことの出来る新たなSDGsの取り組みとして他の市町への広がりが期待されているほか、三島市はこの取り組みを通じて市民に“リユースのマインド”が浸透していくことを願っている。

(テレビ静岡)

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