静岡市は8月31日、家庭ごみについて2028年度以降に“燃えるごみ”と“プラスチックごみ”の分別収集を始めると発表した。なぜ今なのか?市は「技術開発及び市民の分別意識向上の両面で必要性が高まった」と説明する。

普通じゃない?静岡市の“ごみ収集”

静岡市へ転居してきた人には必ずといっていいほど驚くことがある。それは家庭ごみの処理方法だ。静岡市では現在、缶やビンなどの“資源ごみ”、電子レンジやアイロンといった家電類やベッドやこたつといった家具類などの“不燃・粗大ごみ”以外、その多くを“燃えるごみ”として出すことができる。

静岡市ではプラスチックの分別収集をしていない
静岡市ではプラスチックの分別収集をしていない
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県によれば、いわゆる“プラスチックごみ”を分別収集していないのは県内35市町のうち静岡市と南伊豆町だけだ。この理由について、静岡市は「プラスチックは処理やリサイクルが難しく、分別収集してもすべてが新たなプラスチック製品に生まれ変わることはなく、多くは主に固定燃料など熱エネルギー源として活用されてきたほか、市内や近隣市町にはプラスチック製品やその材料にリサイクルできる施設もなかった」と説明する。その上で「遠方まで多額の輸送費をかけるのであれば、高度な処理能力のある市内の清掃工場で電気や熱に換えて利用することが合理的と判断した」としている。

沼上清掃工場
沼上清掃工場

ごみ減量を総合計画で掲げるも…

他方、静岡市が2023年度から2030年度までの「まちづくりの方向性」についてまとめた“第4次総合計画”では、循環型社会を目指した廃棄物政策の推進に必要な施策として「ごみのさらなる減量に向けた協働の推進」を掲げているものの、近年、市民一人当たりのごみの総排出量は横ばい傾向にある。このため市は「これまでに実施してこなかった大胆な取り組みが求められる」と危機感をあらわにし、8月31日に「現行の『発電焼却の方法』から『最もCO2削減効果の高いリサイクルシステム』への転換を目指す」方針を明らかにした。

静岡市役所
静岡市役所

なぜ今、方針の転換を図るのか?背景にはプラスチック資源循環促進法が2022年4月に施行され、プラスチックごみは燃やすことよりも新たな製品として再利用することが重要視されるようになったことがある。市は、プラスチックごみのリサイクルについて「脱炭素化や資源保全の観点から新たなプラスチック素材に生まれ変わるマテリアルリサイクルや化学製品の原料として再生利用するケミカルリサイクルの技術が重要とされ、技術開発が進み、今後もさらなる進展が期待できるようになった」とし、難波喬司 市長も「燃料にして熱として使うことでリサイクルすることにしてきたが、燃やしているのでCO2をどんどん発生させている」と話す。

プラスチックを“熱”としてリサイクルしてきたが…
プラスチックを“熱”としてリサイクルしてきたが…

また、2022年度に市が実施した市民アンケートでも「プラスチックの分別回収を実施すべき」との回答は62.2%に上り「実施すべきではない」との回答(24.1%)を大幅に上回る結果となり「技術開発及び市民の分別意識向上の両面で、市としてプラスチックごみを分別処理する必要性が高まった」という。

静岡市内で再資源化の完結へ

こうした中、静岡市では①市内に中間処理施設を整備した上で市外の施設に再資源化を委託するパターン、②市内に中間処理施設と再資源化施設の両方(場合によっては中間処理機能を有する再資源化施設)を整備するパターン、③自前の施設は持たずに市外の施設に再資源化を委託するパターンの3パターンでCO2の削減効果や費用面の比較を行い、その結果、市内で再資源化が完結できる2つ目のパターンの導入を目指し、今後さらなる検討を進めていく考えだ。

分別収集について説明する難波喬司 市長
分別収集について説明する難波喬司 市長

ただ、施設整備の検討や回収方法の検討には一定の時間を要するため、分別回収の全面実施に向けては3つのステップを踏むという。

まずは2023年10月から市民が清掃工場に持ち込んだごみのうち、新たな製品の原料への再利用に適したポリバケツやプラスチックハンガーなどの製品プラスチックを工場の職員が分別。これにより製品プラスチックの回収量は年間で約30トンを見込み、CO2は71.34トン削減できると試算する。

続いて2024年5月からは市民にも分別や資源循環の意識を共有してもらうことを目的に、区役所や生涯学習施設といった公共施設に製品プラスチックの回収ボックスを設置し、市民がプラスチック資源を持ち込めるようにする。

そして、モデル地域を指定して家庭でのプラスチックの分別回収を試行した後、2028年度以降に市内全域で製品プラスチックや菓子の袋や白色トレーといった容器包装プラスチックの分別回収の全面実施に踏み切る計画となっている。

一方で、家庭ごみの収集有料化について難波市長は「これから議論が必要」としつつ「単純に言えばプラスチックのリサイクルを進めると分別に手間がかかる。手間がかかるのに家庭ごみの収集を有料化するとなると両方の負担がかかる。それではなかなか理解してもらえないだろう」と話し、現時点で有料化する考えがないことを強調している。

(テレビ静岡)

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