2023年8月、空知の南幌町で夫婦がオープンした古民家のカフェ。

以前のお店をたたみ、新たに開業した。移転までの2年間の軌跡だ。

夫婦2人3脚  築75年の古民家をカフェに

北海道南部の七飯町。小高い住宅街にひっそりと佇む「465cafe」。

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オーナーの釣谷周平さんは接客とドリンクを担当し、妻のひろみさんがキッチンを担当する。

小さな店は、常に予約でいっぱい。人気は月替わりのパフェ。

プリンやアイスなどすべてが手作りだ。

大きめの窓から見える四季折々の景色。

狭い店内でもお客さんの目線をあわせないように席を工夫し、自分だけの時間を過ごしてもらおうと配慮している。

「2人の醸し出す雰囲気もすごくよくて居心地がいい」(常連客)

しかし、5年間続けてきたカフェはこの日が最終日。

経営が順調だったにも関わらず、二人は遠く離れた南幌町に移転することを決めたのだ。

南幌町へ移転を決意

「カフェで生きてはいけたけど、そこを少し減らして、自分たちの食べるものを作れるようになったり、お金以外の面での暮らしを確立したいというのがあった」(妻のひろみさん)

「21〜22歳の時に漠然と古民家カフェをやりたいというのがあった。たまたま知り合いに紹介されて、門構えとそれにつながる縁側というのが目に入ってきたときにすごくいいなと思った」(周平さん)

釣谷さん夫婦が見つけたのは、築75年を超えた古民家。

「前の方が住んでいたものが全部ある状態で、『処分するなり、活用することでどうですか』と言われたが、金額が自分たちの手に届く範囲だった」(周平さん)

移転の準備は2年前から始まった。

友人たちの協力を得てリフォームしていく。

不用品の処分だけで半年もかかった。

老朽化が進み床の水平も保てなくなっていた。

床下に潜りジャッキをつける。

南幌町での新たな出会い

向かいの家で農機具などの販売をしている駒守さんと真由美さんの夫婦。

「本当に親身になってくれて、重機を持ってくれて手伝ってくれる」(周平さん)

「駒さんたちが外のことをやってくれて、中では自分たちのやれることをやる。みんなで協力している感が楽しかった」(ひろみさん)

「本当に駒さんがいなかったらできなかったです」(周平さん)

季節は巡り、1年が経った。

コンセプト「古民家の良さ生かしつつ七飯町のカフェの名残を残す」

「自分とカフェの空間。癒しに集中みたいな環境を作りたい。『今度あっちの席に座りたい』とか。そんな店づくりをしたい」(周平さん)

コンセプトは古民家の良さを生かしつつ、七飯町のカフェの名残も残すことだった。

この日作ったのは2人用の席。

壁紙は七飯町のカフェでも使っていたような、くすんだ色合いのものにした。

和室のガラス扉を再利用し古民家の雰囲気も残している。

「ブルーベリーを前の所有者が植えていたみたいです。めっちゃうまいんです」 (周平さん)

カフェで提供する料理やスイーツは、すべてひろみさんの手作り。

「最近、朝起きるとメニューのことを考えて起きてしまう。だんだん緊張してきて、毎日緊張してる。多分向いていないんだと思います。カフェの仕事が」(ひろみさん)

ひろみさんがメニュー作りに集中する一方、周平さんは席の配置を考える。

部屋の中心を大きく開けることでお客さんを分散させ、目線が合わないように配慮。

これまでの予約制を止めて、先着順にすることも決めた。

店名は「465cafe」から「一尺五寸」に

「人も物もかみ合っていって回っていけばいい。僕ら2人だったら絶対に無理だった」(周平さん)

30℃を超える真夏日だったが、エアコンの設置が間に合わなかったが、駒さん夫婦が農業用のサーキュレーターを持ってきてくれた。

営業開始の1時間前からお客さんが次々と集まってくる。

厨房はてんやわんや。

すると真由美さんが助っ人に。

「心配だよ。自分の旦那が店始めるより緊張した」(真由美さん)

前の店の常連さんが開店を祝いに七飯町から駆け付けた。

「なんか思ったより465カフェが残っていて、新しいところだけど懐かしい」(常連客)

午後4時に閉店。途切れることなくお客さんが来てくれた。

「ありがたいですね。時間をかけた甲斐がある。まだまだ恩返しのために身を粉にして働きたい」(周平さん)

人の助けを借りながら作り上げた古民家カフェ。

ここにしかない時間を求め、きょうも多くの人が訪れている。

北海道文化放送
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