ふらっと立ち寄った先で、スケッチをしながらのツーリング。

旭川に住むイラストレーター小川けんいちさん。

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心をくすぐるものが見つかれば、すぐ描き始める。

使っている、日付しか入っていない日記のような本は45冊目に。

ときには似顔絵を頼まれることもあるようだ。

小川けんいちさんの世界

小川さんの職場。

雑然とした彼の机からいろんなアイデアが生まれていた。

店の看板や、地元旭川の有名菓子店のパッケージ。

旭山動物園のお土産のパッケージのイラストには、びっしりと動物たちが描かれていた。

2022年秋、北海道釧路市で小川さんの個展が開かれると聞き取材に向かった。

バイクとスケッチの日々

小川さんが描いてきたスケッチが壁一面に。

小川さんは乗り物が大好き。中でもバイクは生活の一部だ。

2022年秋、釧路で初めて大きな個展を開いた。

「この額縁店の、雑然としたごちゃごちゃとしたものを私はいつか描きたくて。これいつか描いてやるぞ!と描いた絵です。実際、額縁店のレジの上にこの絵が飾ってあります」(小川さん)

会場には大きさや形にとらわれない自由な作品が「小川ワールド」として展示されていた。

45冊目に突入 小川さん愛用のマイブック

小川さんが愛用しているのが「マイブック」。

日付しか入っていない日記のような本だ。

旅先で出会った何気ない日常や気になる人物を描いてきた。

マイブックは現在45冊目に突入。

人と出会うと、小川さんはすぐイラストにしてしまう。

「人の特徴を上手くとらえているというか、タッチが凄く印象的だなと思いました」(来場者)

「描く、表現することの根源的な楽しさをずっと体現してる人なんだなぁと。それは本当に目からウロコでした」(釧路市立美術館 武束祥子学芸員)

最初の作品はテーブル裏に

釧路は小川さんの生まれ故郷。

人生を左右するような出来事が幼少期にあったそうだ。

「たいしたことないですけど、私が描いた最古の…なんか…絵って感じになってるんで」(小川さん)

小川さんが最初に描いた作品は、テーブルの裏にあった。

クレヨンのようなもので描いた線。

「おばあちゃんがワァ~って反応してくれたことですかね。上手だね、ってよりは、え~それ描いたのぉって感じで受け入れてくれたっていう。そういうのは大きいと思いますね。それで、見てほしいから、反応してほしいから、出来れば喜んでほしいから、どんどん描いて見せるようになった」(小川さん)

大学を卒業後、印刷会社でデザインの仕事をするサラリーマンとなった。

30代前半、絵を描いて勝負しようと独立したが…

「どうやったら有名になるのかとか、どうやったら上手く出来るのかとか。そりゃあ、ありましたよ、すごい考えた時期は。でも考えても上手くいかないんですよ」(小川さん)

17年前、マイブックを使い始めた。

最初のページには家にあった七輪を描いた。

「自分の線」が描けるようになったと思えるまでに10年ほどかかったという。

線を大切にしたイラスト教室

2023年6月、小川さんはイラスト教室を開いた。

「線を描いてみたいと思うんですよ。皆さん絵って線で描くでしょ? 元気がある線っての描けます?」(小川さん)

「次、集中した線、集中力があるみたいな」

「感情入れればね、いろんな線を描けるというところなんですね」

絵を描く前に気持ちのこもった線を描く。

でも、教えるのはここまでだった。

「こういうふうに描きましょうね、とやると皆が私みたいな絵になっちゃう。それだと全く意味がない」(小川さん)

「思い入れがあるもの」を小川さんは一人一人に用意してもらった。

「思い出して。これがなんで自分が思い入れがあるのか、あ~大切だなぁとかこうなってるのかなぁっていろいろ考えてず~と見たら思いが入りますから」

「で、その気持ちを線に込めてほしいんです」

みんなそれぞれに思いを込めて線を引いていく。

思い出を閉じ込める“マイブック” 

8月、旭川のこの日の最高気温は36℃。

「ヘルメット脱ぐとなおさら、シ~ンとするじゃないですか。そこでなんか、まず落ち着いて周りを見てみると『こんなとこに花が咲いていた』とかね」(小川さん)

暑かったこの日を閉じ込めたようなスケッチが完成。

マイブックをポケットに。

小川さんはこれからもバイクを走らせる。

北海道文化放送
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