“密”を回避しつつ楽しむスタンプラリー

新型コロナウイルスの脅威が未だ収束の兆しを見せない現在。

都道府県をまたぐ移動の自粛の全国的な解除、また国内旅行代金の半額を補助する「Go To Travelキャンペーン」など、大打撃を受けた観光での消費をうながす新サービスも打ち出されているが、7月9日の東京都内の新規感染者数は過去最高の224人となるなど、“第2波”への懸念は拭い去れない。

今後も引き続き感染対策が求められるが、そんな中、“密”を避けつつ観光を楽しめるというスタンプラリーが登場した。

この記事の画像(6枚)

ボールドライト株式会社が発信する「プラチナラリー」は、Webブラウザで見られる「“地域活性特化型​”デジタルスタンプラリー」だ

同社のオリジナルマップ作成ソリューション「プラチナマップ」上で提供されるため、アプリのダウンロードなどの必要はない。

地域観光促進のために自治体や観光事業者などへの提供を想定しているが、この「プラチナラリー」の参加者は、指定されたスポットを巡ってスタンプを集める、というおなじみの“スタンプラリー”を楽しむものだが、スタンプ用紙の代わりにスマートフォンを使って企画に参加する。

各スポットにはQRコードやキーワードを掲示し、それをスマートフォンで読み取ったり、スポットに到着したらGPS機能で検知することで、スマホ画面上に“スタンプ”を集めることができる。

同社によると、現在開催されるスタンプラリーの約77%が紙を使ったものだということだが、スタンプをなくすことで、不特定多数の人が同じスタンプに触れることを防止したり、消毒などの必要がなくなるというのが「プラチナラリー」のひとつのポイントだ。

イメージ
イメージ

もう一点「プラチナラリー」の特徴なのが、特定スポットへの密集を避け「スタンプラリーを楽しむ観光客を分散」させることができるということ。

「プラチナラリー」では、参加者の年代や性別などの属性・行動記録・時間帯別分布などのデータを収集することで“密”なスポットをピックアップし、そのスポットから遠いエリアにスタンプラリーを設置するなどの対策ができるという。

たしかに“密”を回避するように動けるなら、参加者としても安心である上、スタンプラリー参加者以外の観光客にも嬉しいだろう。

しかし、人の集中具合をコントロールするためには、まさかスタンプの設置場所をリアルタイムで動かし続けなくてはいけないのだろうか?

「プラチナラリー」の詳しい仕組みと“withコロナ時代”の観光について、ボールドライト株式会社にお話を伺った。

スマホでできるスタンプラリーを開発

――「プラチナラリー」開発のきっかけは?

「プラチナラリー」は、ウィズコロナで今必要とされる「安心で魅力ある地域観光促進」の実現を目指して開発したデジタルスタンプラリーシステムです。自治体や観光業界の皆様が、スマートフォンで開催できるデジタルスタンプラリーを簡単に作成することができます。

開発のきっかけは、ウィズコロナにおける安心できる地域観光を少しでも推進していきたいとの想いからです。私たちのお客様には観光業界が多く、コロナで落ち込む地域観光にテクノロジーでなんとか貢献できないか、私たちに出来ることを1つ1つやっていきたいという気持ちをずっと持っていました。

――特徴はなに?

スタンプラリーは、地域周遊施策として実は年間約1,500件も開催されています。コロナ禍ではスタンプへの直接接触や観光客の3密を回避するために、スタンプラリーのデジタル化を進め、同時にデジタル化によるリアルタイムでの密集状況を把握することで、人々の密集を改善することに役立てると考えました。

プラチナラリーは、当社が提供するオリジナルマップ作成ソリューション「プラチナマップ」上で提供しています。プラチナマップはこれまで、観光情報(目的)と動態情報(手段)を統合表示し、目的地自体の開発を支援してきました。「プラチナラリー」はこれに移動と滞在期間のコントロールが可能なエンターテインメントであるスタンプラリーを統合することで、ウィズコロナでの観光客の周遊・分散を推進します。

イメージ
イメージ

――参加者は行動を常に監視されている状態になる?

プラチナラリーは参加者のプライバシーに配慮し、移動状況を常時監視するような仕組みは搭載していません。多くの皆様に手軽に楽しんでいただけるよう、WEBシステムで提供しており、アプリのように常時GPSで移動状況を監視することが原理上できません。

参加者の皆様にはスタンプラリーを安全に楽しんでいただくと同時に、開催者様には観光客の密集状態や回遊率のデータをしっかりと見られるよう、リアルタイムで参加者がスタンプを押した場所や時間、そしてアンケートに回答していただいた情報(年代や性別)から、参加者の動きが把握できるようにしました。

この位置情報の記録はGPSに限らず、スタンプを獲得するためのキーワードやQRコード方式でも同様の仕組みです。

参加者の動きをデータで把握
参加者の動きをデータで把握

スタンプラリー開催前に観光客データを分析

――密を避けてスタンプを設置…これはどういう仕組み?

スタンプラリー公開前に、「観光案内マップ」などとしてデジタルマップだけを先に公開し、後からスタンプラリーを開催できる仕組みを持っています。プラチナラリーの分析は、スタンプラリー設置スポット以外も含めた全てのスポットに対して可能です。

そのため、デジタルマップの利用から分析できた観光客の集中度データから、集中スポットと反対の方向にスタンプラリーを設置することで、事前に分散を図ることができると考えています。

また逆に、スタンプラリー開催後のデータ分析結果から、集中をさらに緩和させるため、次回のスタンプラリー開催時には、前回と別のスポットにスタンプラリーを設置するなど、マーケティングPDCAの加速にも役立ちます。


――では、参加者のリアルタイムの混み具合からスポットを動かすのではなく、“密”を事前に予測してスタンプラリーを作る、ということ?

どちらも可能ですが、後者の利用用途が多いと考えております。前者の場合、スタンプラリー開催中に参加者が巡るスタンプラリーの設置スポットを変更していくのは、ゲームの公平性を考えると、工夫が必要になるのではと思っております。

どの時間帯に参加者が行動しているかがわかる
どの時間帯に参加者が行動しているかがわかる

「プラチナラリー」は、常に参加者の行動を監視し、リアルタイムで“密”を回避する、というものではなく、スタンプラリー開催前に特定の時間、特定の施設にどれくらいの人が集まっているかをデジタルマップの分析から確認。

ある観光地に昼間に観光客が集中しそうだというデータがあった場合、その場所にスポットを設置するのは避け、朝や夜に訪れやすい別の観光地を探すということができるという。

“afterコロナ”につながるエンターテインメントを作る

では、このシステムを使い、観光客の少ない場所へ人を分散することは、新型コロナ対策としてどう有効になってくるのだろうか。

ボールドライト株式会社は「afterコロナ」の観光のあり方を見据えているという。


――人を分散することは、感染予防にどう役立つ?

感染拡大防止には様々な方法がありますが、経済活動と両立していくには、3密を避けることが重要です。スタンプラリーは、分散を促進するだけでなく、地域の魅力についてゲーム性を持って伝えることもできるエンターテインメントです。

「こんな所もあったんだ」「こんな美味しいものもあったんだ」という地域の魅力がスタンプラリーを通してより深く伝わることで、来訪後もオンラインショッピングでのその地域の特産品の購入や、アフターコロナでのリピートにつながっていくと考えられ、今できる新しい観光の一つの形になると考えています。


――観光業界が打撃を受ける中、「プラチナラリー」のどんな活躍に期待する?

観光業界は今後、いかに密を避けながら、安全に来訪を楽しんでもらい、消費につなげる「新しい観光のカタチ」を模索していくことと思います。スタンプラリーは誰でも気軽に参加でき、おでかけや旅行の際に想い出をより深くすることができます。

プラチナラリーは、スタンプラリーのデジタル化により、コロナ禍における参加者のスマホを利用する非接触の安全性担保と、エンターテインメントを活用した分散、さらにそのデータ活用マーケティングにより密を最大限避けながら、安心して魅力ある地域観光の加速に貢献できると思っています。

スタンプラリーで全てが解決出来るわけではもちろんありません。私たちは、今回プラチナラリーを統合した弊社のメイン事業であるオリジナルマップソリューション「プラチナマップ」を軸に、今後もデジタルクーポン等地域活性に貢献する機能拡張を推進し、継続的に観光を支援していきます。



プラチナラリーは6月30日から提供を開始しているが、現在、都内や地方観光地の自治体や観光協会、商店街などから多数の問い合わせがあるという。

感染予防が日常生活になじみ、“withコロナ”という言葉も定着しつつあるが、まだまだこれまで通りに外出したり、旅行を楽しむというのは難しいだろう。

その中で、改めて安全のために今できることを確認しつつ、“afterコロナ”も見据えていくことが肝心になってくる。

【関連記事】
「夏のGoToキャンペーンは密になる」コロナとの共生で旅のかたちはどう変わるか?
これが“ニュー花火大会”? 全国7カ所の無観客花火イベントを開催…支援者には動画完全版

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。