アメリカの半導体大手「マイクロン・テクノロジー」の広島県の工場に、最大1920億円を補助することが決まった。国内で半導体の生産拠点を新設する動きが加速する中、専門家は、日本には「機微な情報の扱いの意識」が足りていないと指摘する。

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マイクロン・テクノロジーは、広島県の工場で大規模な設備投資を行うことを既に発表しているが、経済産業省は3日、開発に最大250億円、生産計画に最大1670億円、合わせて最大1920億円を支援すると発表した。

製造するのは、生成AIやデータセンター、自動運転などに活用され、今後需要の増加が見込まれる先端メモリ半導体で、2026年にも量産を開始する方針だ。

西村経産相は、閣議後の会見で「経済安全保障上、将来日本が必要とする先端半導体をしっかりと安定供給してもらう」と述べた。

経済効果にも期待

「Live News α」では、経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
アメリカ半導体大手の、広島県にある工場が行う大規模な設備投資への支援。どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
日本は、半導体産業の売上目標を2030年までに、いまの3倍の15兆円を掲げていて、日本国内で、半導体の生産拠点を新設する動きが加速しています。

例えば、データを保存する役割の「メモリー半導体」は日本のキオクシア、そして今回、広島に工場を作るマイクロン・テクノロジーが強い分野です。

データを処理したり、機器の制御をする「頭脳の役割」を果たす「ロジック半導体」は、熊本に誘致された台湾のTSMCが主に担っています。

堤 礼実 キャスター:
どうして、半導体の生産拠点の新設などが日本で相次いでいるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
背景には、中国・ロシアなどの地政学リスクが高まっていることから、半導体のサプライチェーンを日本国内で確保する経済安全保障上の要請があります。

アメリカとしても、アジア圏で安心できる国で半導体を確保したい思惑があり、これは日本には追い風です。

堤 礼実 キャスター:
半導体産業の盛り上がりが、日本経済にプラスになるといいですね。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
先日の日銀短観の日本企業の設備投資意欲をみても、半導体投資やDXを追い風に、全体で100兆円を超える設備投資規模が予想されています。

いまの半導体が日本に集約されていく動きは、産業そのものが盛り上げるだけではありません。

周辺の土地の値段が上昇したり、業界で働く人の給与のアップにもつながるなど、経済効果も非常に高いです。

課題はデータのセキュリティー

堤 礼実 キャスター:
課題をあげるとしたら、どのようなことがあるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
半導体が集約されるなかで、データセンターを日本に置く動きも加速しています。

ここで一点、日本がより、一段と洗練された成長を加速させていくために欠落している点を挙げます。「データのセキュリティー」です。

工場の国内誘致など、インフラは整えているかもしれませんが、本当の意味で競争力をつけるためには、日本には「機微な情報の扱いの意識」が足りていません。

岸田首相も外資の誘致を呼びかけていますが、海外の企業が安心して日本で活動できるためには、「情報を守る」国になる議論も必要です。

堤 礼実 キャスター:
物事のバランスを考えながら、日本の半導体事業を再び活性化させるために、必要なことをしていってほしいと思います。
(「Live News α」10月3日放送分より)

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