まだまだ暑い日が続くが、少しずつサイクリングが気持ちいい季節になってきた。そんな中でホンダが開発した、様々な自転車を電動アシスト化できるサービスを搭載した自転車が発売される。

まず開発したサービスは、自転車に取り付ける電動アシストユニットと連動するスマートフォンアプリにより、様々な自転車を電動アシスト化・コネクテッド化できる「SmaChari(スマチャリ)」だ。

「SmaChari」は、スマートフォンアプリと自転車に取り付ける電動アシストユニットで構成され、様々なタイプの自転車を電動アシスト化・コネクテッド化することが可能。

また、スマートフォンアプリを通じて、電動アシストシステムの起動や個人に合わせたアシスト出力の最適化、速度など走行状態やバッテリー残量の表示、故障の検知など、コネクテッド機能を活用した、様々な機能・情報を利用できる。

SmaChari(提供:ホンダ)
SmaChari(提供:ホンダ)
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ホンダは、この「SmaChari」を搭載した自転車を製造・販売する企業に対して、電動アシストユニットの制御ソフトウェアに関する技術を始めとする各種ライセンスや、「SmaChari」を運用・管理するコネクテッドプラットフォームを有償で提供。

この「SmaChari」搭載第1号となる自転車「RAIL ACTIVE-e」を、株式会社ワイ・インターナショナルが10月下旬に発売する予定なのだ。

RAIL ACTIVE-e (提供:ホンダ)
RAIL ACTIVE-e (提供:ホンダ)

とても興味深い仕組みだが、このサービスを自転車の利用者に販売するのではなく、技術のライセンスを自転車メーカーなどに有償で提供する理由は何なのか? また、このサービスを搭載した自転車は、購入者にどのようなメリットがあるのか?

ホンダの担当者に聞いた。

より快適な通学環境と移動の喜びを提供

――「SmaChari」を開発した背景は?

全国の高校約5000校のうち、通学路に高低差50メートル以上の坂がある高校は約45%に達します。

「SmaChari」開発チームが自転車で通学する全国の高校生2708人に聞き取り調査を行ったところ、48%にあたる1278人が自転車通学に体力的負担を感じており「電動アシスト自転車が欲しい」と回答しました。一方で「電動アシスト自転車の機種が限られている」「電動アシスト自転車は欲しいが盗難が怖くて購入に踏み切れない」などの意見も多く見受けられました。

こうした高校生の通学課題を解決し、より快適な通学環境と移動の喜びを提供することを目指し、「SmaChari」のシステムが考案されました。


――「コネクテッド化」とは何?

車両、アプリ、ネットワークを連携し、サービスを提供することです。

スマートフォンアプリを通じて、電動アシストシステムの起動や個人に合わせたアシスト出力の最適化、速度など走行状態やバッテリー残量の表示、故障の検知、走行データ管理、位置情報の共有、所有者情報の管理など、コネクテッド機能を活用した様々な機能・情報を利用できます。


――「様々なタイプの自転車を電動アシスト化」。これはどのような仕組み?

既存の電動アシスト自転車では、電動アシスト自転車専用に車両(フレーム)を開発することが一般的でしたが、「SmaChari」では専用に開発されていない、一般的な自転車に「動力UNIT/バッテリ」といった部品を取り付けることで電動アシスト化・コネクテッド化が可能となります。

また、独自の制御技術により、上記の様な後付け形態でも、法規に準拠したアシスト出力を実現します。

SmaChari(提供:ホンダ)
SmaChari(提供:ホンダ)

――どのような自転車であれば、電動アシスト化できる?

すべてのモデルに対応しているわけではありませんが、各自転車メーカー・販売店の意向に応じて、対応は検討していきます。


――電動アシストユニットのモーターやバッテリーは、どのように取り付けるの?

モーターは自転車のクランク軸部に、バッテリーはメインフレーム上のボトルケージに取り付けます。ただし、販売店にて取り付けた状態で販売いたしますので、お客様にて取り付けることはありません。

メリットは「ラインナップの拡大が容易」

――このサービスを自転車の利用者に販売するのではなく、技術のライセンスを自転車メーカーなどに有償で提供する理由は?

お客様に安心して、乗車していただけることを第一とし、確実な取り付け作業や、その品質保証も含めて提供できる手法として、販売店での取り付けとさせていただいております。


――「普通に電動アシスト自転車を作ること」と比べ、メーカーにはどのようなメリットがある?

専用の車体が不要であり、販売店での取り付けが可能なため、ラインナップの拡大が容易です。お客様のニーズに合わせて、ベースとなる既製の自転車の特性や性能を活かした、電動アシスト自転車を作ることが可能です。

また、既存のスポーツタイプの電動アシスト自転車(いわゆるe-BIKE)と比べると、2~3割程度、安価になります。

SmaChari(提供:ホンダ)
SmaChari(提供:ホンダ)

――このサービスを搭載した自転車は、購入者にどのようなメリットがある?

「電動アシスト機能」は、乗り手に合わせ、自動で最適なアシスト出力を提供する「AIモード」や「急発進抑制制御」により、安心・快適に乗車していただけます。また、細かなアシスト出力を調整いただきたいお客様に向けても、アプリ上から調整が可能です。

さらに、後付けによるメリットを活かし、購入時に電動アシスト自転車の車種の選択肢を拡大したいと考えています。

「コネクテッド機能」は、スマートフォンとの接続認証により、自転車が起動する「スマホキー機能」や、自動車の走行データに基づく「注意ポイント通知」によって、安心感が向上します。

そのほか、友人やご家族との利用をより便利に楽しくする位置共有や車両共有機能、離れていてもバッテリー残量を確認できる機能、走行経路や消費カロリーを確認できる走行ログ機能など、今までにない様々な新価値を提供します。

「自転車の進化を体験できるサービスにしたい」

――このサービスを搭載した自転車は、どのような人が利用することを想定している?

自転車の変速機やカゴといった部品のように、「電動であること」「コネクテッドであること」を自由に選択できる世界観を実現し、開発の原点である自転車通学の場面を含め、身近な場面で自転車の進化を体験いただけるようなサービスにしたいと考えています。

搭載第一号となる自転車「Rail ACTIVE-e」は、自転車通勤・通学の場面で人気が高まっているクロスバイクをベースとした車両です。


――今後、このサービスを自転車の利用者に販売する予定は?

ホンダは、コネクテッドサービス・アプリケーションを提供する立場です。電動アシストユニットとしての販売を含め、ハードウェア商品化については、自転車販売店やメーカー様の事業領域となります。

「試乗したお客様からは好評」

「SmaChari」搭載第1号となる自転車「RAIL ACTIVE-e」は7月に予約を開始し10月下旬の発売を予定しているが、反響はどうなのだろうか? 株式会社ワイ・インターナショナルの担当者にも聞いた。


――予約開始後の反響は?

予約開始と同時に全国の「ワイズロード」24店舗で試乗車を配備して、お客様に試乗をしていただいていまして、試乗していただいたお客様からは好評をいただいています。予約数は非公開です。


――「普通に電動アシスト自転車を作ること」と比べて、「SmaChariを使って電動アシスト自転車を作ること」は、メーカーにどのようなメリットがある?

既存の自転車(電動アシストではない自転車)に専用パーツを取り付けることによって、電動アシスト化できますので、専用車を作らずに電動アシスト自転車を作れます。これによって、お客様にご提案できる電動アシスト自転車のバリエーションを増やすことが可能になります。

SmaChari(提供:ホンダ)
SmaChari(提供:ホンダ)

「SmaChari」によって、今後、どのようなバリエーションの電動アシスト自転車が登場するのか、また、コネクテッド化によって、“自転車に乗ること”や”移動すること”はどのように変わっていくのか今後も注目していきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。