世界遺産のある宮島で9月26日夜、大鳥居の下を水上バイクが高速で通航する様子が確認された。大鳥居周辺の海域では、水上バイクの危険行為や速度制限について罰則がなく、観光協会などが注意を呼びかけている。

大鳥居の下を時速35キロで通航か

宮島のシンボルとも言える厳島神社の大鳥居。2022年12月、3年半をかけた修復を終えたばかりで、鮮やかな朱色が風景に映える。

厳島神社の大鳥居
厳島神社の大鳥居
この記事の画像(13枚)

ところが、9月26日午後6時すぎ、大鳥居付近に現れた1台の水上バイクが社殿の方向に向かって大鳥居の真下を一気にくぐり抜けた。白い波しぶきがあがり、スピードが出ているようにも見える。

五十川裕明 記者:
大鳥居の真下にやってきました。柱と柱の間は6~7メートルあります。そして、水上バイクの横幅は約1メートル20センチです。通れなくはないという印象ですが、猛スピードで突っ込んだ場合、少しでも運転操作を間違えると大鳥居にぶつかるリスクもあります

干潮時の大鳥居でレポートする五十川記者(左から3番目)
干潮時の大鳥居でレポートする五十川記者(左から3番目)

広島市西区で水上バイクの販売店を営み、水上バイクに乗って45年というベテランに今回の映像を見てもらった。

ジェットスキープロショップ広島・木本春夫 代表:
時速35キロぐらいかな、40キロは出ていない。やっぱり宮島は「神の島」だから、こういう形で大鳥居の下を通っているのはすごく珍しいよね。えっ!という感じだね

時速8キロ以下のルールはあるが…

大鳥居周辺の海域では、仮に水上バイクの危険な運転を見つけても、人への危害が及ぶ可能性がなければ未然に取り締まる法律や条例はないのが現状だ。

大阪からの観光客:
運転に自信があったらできるんじゃないですか?僕らは乗れないから怖いけど。加速して大鳥居の下を通過するのはそりゃあ、恐れ多い

ベルギーからの観光客:
お、これは危ない

宮島周辺では10年ほど前から水上バイクが目撃されるようになり、観光協会は、速度を落として礼拝目的以外の進入はしないよう呼びかけてきた。啓発チラシには「宮島全島100メートル以内は時速8キロ以下の徐行で」とルールを明記。さらに大鳥居の周辺は“アイドリング”がマナーとされている。

宮島観光協会・上野隆一郎 専務理事:
水上バイクを取り締まる規制はないにしろ、歴史的建造物があるというのは本人もわかっているはず。認識が足りない

罰金や懲役刑を盛り込んだ条例も

地元では、修復を終えたばかりの大鳥居に万が一のことがあったら…と危機感を強めている。

宮島観光協会・上野隆一郎 専務理事:
大鳥居にぶつかったら大変なこと。平安時代から続く非日常の宮島を楽しみに来る人もたくさんいると思うので、そのあたりは配慮してもらいたい

水上バイクの危険運転をめぐっては、全国の観光地で対応を迫られている。静岡県の観光スポット、浜名湖では2021年4月から水上バイクの通航ルールを定めた「条例」が適用された。

水上バイクで浜名湖を通航する際、岸から200メートル以内などの制限水域内で「蛇行」「急発進」「回転」「船尾部の持ち上げ」「ウェイクボードなどのけん引」を行って漁業者などに支障を与えた場合は、罰則として3万円以下の罰金に処されることがあるということだ。

静岡県の浜名湖で適用された条例
静岡県の浜名湖で適用された条例

条例が適用された背景には、住民から騒音や危ないといった声のほか、漁業者からの苦情があり、自主規制ルールを守るよう指導してきたもののルールを守らない一部利用者がいるという実態があった。
また、2023年4月に条例を施行した沖縄県の宮古島では「懲役刑」の罰則も盛り込み、水上オートバイ等の安全な利用を促進している。

やはり罰則を伴う「条例」に頼るしかないのだろうか。海のレジャーを楽しむ際の“ちょっとした配慮”が求められている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。