往年のテレビドラマや映画など、フィルムで撮影された作品のネガフィルムが廃棄処分の危機に立たされている。

昭和30年(1955年)に創立し、映像作品の編集などに携わってきた東京現像所は昨年11月、事業環境の変化などを理由に今年11月末に全事業を終了することを発表。

(出典:東京現像所)
(出典:東京現像所)
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このため同社が預かっている権利者不明で引き取り先が無い「ネガフィルム原版」は10月末で廃棄対象になるとしており、12月以降は保管が不可能になるという。

これまで同社は作品の権利者に連絡するなどして返却作業を進めてきたが「残念ながら連絡が取れないお客様もいらっしゃいます」として、9月7日には原版の心当たりがある人から情報提供を呼びかけるリリースを公開。10月末までに権利者と連絡がとれず、返却の確認ができない原版は「処分を当社に一任とさせていただきます」としている。

保管されているのは、映画をはじめテレビ番組・アニメ・企業案内・CMなど多岐にわたるという。

預かっている約2万作品について確認中

過去の作品のフィルムは後世に残す価値があるものだろう。破棄するのであれば、他者に寄贈でなどの方法もありそうだができないのだろうか?また現在、どれだけの作品数について確認を取ろうとしているのだろうか?

東京現像所の担当者に聞いてみた。


――なぜ他の施設などに譲渡することはできない?

それができればいいのですけど、そもそも、このフィルム原版というのは、私たちのものではありません。ですから、私たちとしては原版の持ち主(所有権を含む権利者)に「お返し」するということが最優先となります。

もちろん、フィルムの寄贈が可能な公的機関にもご相談をさせていただいております。しかしながら権利者様が寄贈を希望される場合は受入れ対象となりますが、権利者不明(所有権者が明らかではない)原版については第三者である東京現像所が寄贈を希望しても公的機関側としては受入れ対象とするのは難しいのが現状です。


――引き取りの申し出があっても対応できない?

もちろん非常にありがたいお話ですが、やはり権利的なものをどうやってクリアにすればいいのかが懸念されます。

別の権利者のフィルムが、たまたま当社にあるという状態ですので、権利者ではない第三者から申し出をいただいたとすると、原版を私たちの一存で動かしていいのか、なかなか厳しいでしょう。互いに、どうしましょうということになってしまいますね。

(画像はイメージ)
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――なぜフィルム原版を預かっていたの?

この原版から上映や放送用に複製を行なったり、フィルムの映像をビデオに変換する作業を行うところに原版があるわけです。当社に限らず、原版の移動はあまり行わないということが慣例になっています。


――預かっている作品数はどのくらい?

当社には、お預かりしている原版が約2万作品ございまして、そちらに関して確認を進めている中で改めてリリースを出しました。


――リリースの発表以降、連絡先が判明したケースはある?

以前から返却の確認は進めていて成果が出ていました。発表した後は「弊社事業の終了による原版返却を行っていることを知りました」というお話をいただくことも多いです。


――多いとは、数字で言うとどれくらい?

数十件程度となります。ただ「〇〇という作品を探しているんですけど、御社にありますか?」といった弊社でお預かりしていない作品の問い合わせ等も含めますので、全てが返却作業に直結しているという事ではございません。


――原版は会社の倉庫で保管している状況?

弊社ですべて保管できない物量のため、一部は外部の倉庫に預けています。倉庫の広さをおたずねいただきましたが、例えば、テニスコート何個分などという言い方は、私たちでは考えていませんでした。

全体では1970年代以降の作品が多い

――保管している作品で多いのはどんなもの?

ジャンルとしては映画が多いのですが、テレビアニメについては1タイトルで50何話もあったりします。


――どの年代の作品が多いの?

大体1950年代から2000年代前半までフィルムでの撮影・上映がありましたので、その頃の作品ということになります。


――権利者を探している作品名を公開することはできない?

現在は確認作業の最中ですので作品名の公開は考えておりません。作品名を公開する事はメリットと共にデメリットもある旨考えております。こちらについては法的な専門家の方にもご相談しながら検討させていただきます。


――所有者が分かって破棄せずに済んだ作品はどのくらいあるの?

その辺りもまだ作業中です。ただ確認する会社様が廃業されていたり、分かる方が亡くなられていることもあり、権利者様に連絡がつかないこともありますが、廃棄対象となる原版が出ないように確認作業を進めています。

(画像はイメージ)
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やむを得ないのはもちろん分かっているが、権利者が見つからないと処分されてしまうのは、なんとももったいない。なんとかいい形で解決できないものか今後の動きに注視したい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。