今年5月、東京・銀座にある高級腕時計「ロレックス」専門店に、仮面姿の男らが押し入った強盗事件。

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9月25日、実行役の1人だった18歳の男に、懲役4年6カ月の実刑判決が下りました。

男がこの強盗に加わるきっかけとなったのは、犯行のわずか2日前、「友人からの誘い」だったといいます。

この裁判で、18歳の男が犯罪に手を染めるまでの詳細なやりとりが明かされました。

きっかけは「友人からの誘い」借金あり断れず

起訴された18歳の男は、裁判で強盗に加わった理由を、「5月6日の夕方、小中一緒だった友達に会おうと言われて、会ったら、『仕事やらない?』と言われた」と話しました。

この時、仕事の内容などは伝えられず、「報酬は100万円、仕事は1週間後」とだけを伝えられたといいます。100万円という高額な報酬について、不審に思わなかったのかと、問われると。

「100万円という報酬を聞いて、最近はやっている詐欺だと思って、友人に『詐欺じゃないの?』と聞いたら、『詐欺じゃないと』と言われたので信用した」

友人の言葉を信用したという男。実は、仕事を受けざるを得なかった理由があったといいます。

「当時借金が15万円あり切羽詰まっていた。今すぐ決めてと言われたので、仕事まで1週間あるし、いつでも断れると思って受けた」

しかし翌日、友人から、仕事は「急きょ明日になった」といわれ、連絡用の携帯電話を渡されたといいます。事件当日、携帯電話に届いたメッセージを頼りに、集合場所に向かうと、そこには、初めて会う3人の男がいたといいます。

「そのとき初めて、仕事内容が強盗だと知らされた」

「強盗とわかっていたら絶対に引き受けなかった」などと述べた18歳の男。では、なぜ犯行に加わったのか?

「車内にナイフやスパナが落ちていたこと、リーダー格の男が乱暴だった。逃げるタイミングを探っていたが、逃げた後のことを考えるとどうしてもできなかった」

犯行現場で、男は、どんな役割を与えられたのでしょうか?

「『今日はこれがあなたのお供だ』とナイフを渡され、店員に刃を向けて『伏せろ、おとなしくしろ』と脅す役割と言われた。ほかには犯行は2分間、バッグには時計20個詰めろと言われた」

検察側の冒頭陳述によると、この2分間の犯行時間で、男らが店から奪ったのは、高級腕時計など74点、約3億円相当です。

「リーダー格の男が、『残り30秒』と言っていたので、1人20個と言われていたので、急いでバッグに詰めて、リーダーらに続いて出口に向かった」

実行役の4人はそのまま、車で東京港区の赤坂方面に逃走。しかし…車は住宅街の行き止まりに入り込んでしまったといいます。

「リーダー格の男が、『逃走だ』と言ったので車を出て逃げた」

車から飛び出し逃走する実行役
車から飛び出し逃走する実行役

その後、実行役の16歳から19歳の男4人は警察に逮捕されました。さらに、裁判では「氏名不詳」の指示役の存在が明らかになっています。

「(リーダー格の男が)頻繁に電話をかけていて『今向かっています』とか、状況報告をしていた」

18歳の男は、背景に強盗組織が絡んでいると思い、犯行を断れなくなったと話しています。

東京地裁は、「強盗だとわかったにもかかわらず、逃げられないと安易に考えて実行した。従業員に刃物を示して脅迫するなど、重要な役割を担った」として、懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡しました。

この判決について、若狭勝弁護士は「妥当」だと話します。

若狭勝弁護士:
法改正で重大事件は、18・19歳も成人相当の扱いをします。今回はそれに倣った判決であり、極めて悪質な犯行内容を考えると妥当です。

武井壮「そこに加担したら、凶悪犯罪グループの一味」

犯罪ジャーナリストの石原行雄氏は、今回の陳述について、「社会経験の無さを突かれた」と推察します。

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏
犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏:
学生の間で、おいしいバイトを融通し合うというのは比較的よくある話ですから、そういう延長だという考えで、安易に乗ってしまったという可能性はありますけども、ただやはり、1日で100万円というのは、まともな感性で考えればあり得ない話ですから、そういうところで立ち止まるタイミングはあったと思います。
そこは、高校生で未熟さ、社会経験の無さというところを突かれていたのではないかと。

さらに、めざまし8スタジオゲストの武井壮氏は、実行役の行動と、判決に言及。

怒りをあらわにする武井壮氏
怒りをあらわにする武井壮氏

武井壮氏:
ぼくは「闇バイト」という伝え方も大嫌いで、行われていることは、“凶悪犯罪グループの一味”ですよ。全員。正直ね、そこに加担したら、例えば誘われてその日だけ加担しようが、凶悪犯罪グループの一味なんですよ。当然ですけど。
1日に100万円を何の技術もないような人に払える仕事なんてこの世には存在しないし、ということは、その100万円を払っても何の痛みもない利益を得るであろうやつらが、凶悪犯罪をもってそれを支払うわけじゃないですか。そんなものを、こんなぬるい伝え方をしていたら…、しかも、4年6カ月しか服役しないわけです。

武井壮氏:
3億円という、人が一生かけても稼げないような金額を、誰かから強奪して、しかもそれをナイフを向けて、もしその人が、抵抗してきたら刺して殺していた可能性もあるわけで。とてつもない犯罪をしているわけです。それを「闇バイト」だとか、仕事があるよ100万円だよとふんわり報道しちゃったら、これから先、若い子は、捕まっても5年だよね。だったら3億円のチャレンジしてみようかなとか、100万きょうもらえるなら、1件やった成功した、ばれなかった、じゃあもう1件やろうかと、どんどんまん延していって、日本の国土なんて本当に無法地帯になるきっかけになるような、そういう事件の最初の1歩じゃないかと思うんですよ。
だからもっと厳罰化することとかが現実味があるのか、社会復帰を阻むんじゃないかとか、いろんな意見あるけど、人が一生かかっても稼げない財物を、ナイフを向けて命を奪うぞと強奪することが、こんな量刑で人が復帰してくるなんて、そんな社会に生きている不安に耐えられないですよ。

また、フジテレビ解説委員の風間晋氏は、今回の事件を「教材に使えないか」と提案します。

風間晋氏:
あの犯罪形態の衝撃度、映像を皆さん見ましたよね。しかも関わっているのが、みんな未成年です。そしてこれだけじゃない、同じような事件がいろいろ起きている。まだ大本は捕まっていないんです。そういうことをトータルで考えると、こういう判決は、“最低限の判決”ではないかなと僕自身は思います。
ただ、判決だけではなくて、こういうとてもわかりやすいVTRなんかを教材として使って、学校、特に中学校などで、自分たちの周りにはこういう事件があって、実は今、自分たちは小学生・中学生だけれども、その友達が関わってきて、こういう中に連れて行かれるんだと。そういうのをよく知ってもらって、みんなで話し合ってもらいたいなと。お花畑的なことかもしれませんが。本当にそう思います。

(めざまし8 9月26日放送)