インバウンドの回復とともに指摘されている、観光地でのタクシー不足。

タクシー乗り場にできた長蛇の列
タクシー乗り場にできた長蛇の列
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その解決策として注目されているのが、一般のドライバーが自家用車などを使い、有料で乗客を運ぶサービス「ライドシェア」です。

17日には、フジテレビの報道番組で、黒岩祐治知事が「まずは神奈川からやっていきたい」と、「神奈川版ライドシェア」案を披露。

ライドシェアについては、菅前首相、小泉元環境相も解禁に前向きな姿勢を示していますが、松野官房長官は、導入に慎重な考えを示すなど、さまざまな意見が。

さらに、タクシー業界からは、安全性を疑問視する声も上がっています。

日本城タクシー代表取締役 全国ハイヤー・タクシー連合会
坂本篤紀理事:

(タクシーは)事故やケガとか乗客が巻き込まれた時に、必ず会社が責任持つわけだから。最後は安全性考えたら、結局タクシーになるんですよ。

海外では犯罪も起きている「ライドシェア」。日本ではどうしたら実現できるのか。専門家に詳しく聞きました。

タクシーとライドシェアの違いは?

「ライドシェア」とは、一般のドライバーが自家用車などで、報酬をもらって乗客を運ぶサービス。最大手のアメリカ「ウーバー社」は、70カ国以上でこのサービスを展開しています。

現在日本では、営業許可を得ず、自家用車など白ナンバーで報酬をもらい乗客を運ぶことは、「白タク」行為として違法とされています。

ライドシェアのメリットとは何なのでしょうか? 流通経済大学経済学部の板谷和也教授に話を聞くと…。

流通経済大学経済学部 板谷和也 教授
流通経済大学経済学部 板谷和也 教授

流通経済大学経済学部 板谷和也 教授:
ウーバーのようなサービスを提供してもらうということを考えますと、車の数が増えるので待ち時間が少なくなる。アプリを使って予約をして決済をしてすぐ乗れるとなりますので、利用者にとって便利だと思います。

タクシーとライドシェアの違いを比べてみると、運行責任については、タクシーは運行責任を会社が負うことに対して、ライドシェアはドライバーが負うことになっています。
事故対応に関しても同様で、タクシーは会社が対応。ライドシェアは個人での対応になります。

車両に関しても、タクシーは事業者用の車両を使用しており、厳しい整備点検がありますが、ライドシェアは自家用車を使用します。
さらに、保険については、タクシーは事業者用保険に加入が義務付けられていますが、自家用車用の保険では支払われるか不明です。

タクシーで行われる、労働時間の管理や飲酒チェックなどはなく、運転免許もタクシーは厳しい試験のある二種免許ですが、ライドシェアは普通免許になります。

海外では犯罪行為も…ライドシェアの問題点

海外ではすでに多くの国で利用されている「ライドシェア」。しかし、中には犯罪行為も起きているといいます。

ウーバー社が公表した「安全報告書」によると、2017~18年の2年間で、ウーバーの運転者・乗客の関わる性的暴行被害が5981件。事件による死亡者が19人と報告されています。

全国ハイヤー・タクシー連合会理事で、自身も現役のタクシードライバーを務めている坂本篤紀理事は、犯罪行為以外にも、「乗客の安全が確保されていない」「事故が起きた時に責任はどうするのか」などの懸念点があるといいます。

また、ライドシェアの参入に伴い、経営が成り立たずやめてしまうタクシーが増えた場合、災害や非常事態時が起こった際に、タクシー不足になってしまうのではないかという不安も。

深刻なドライバー不足と導入への課題

「ライドシェア」の導入にさまざまな懸念が残る中で、タクシー業界は今、深刻なドライバー不足とドライバーの高年齢化という問題を抱えています。

2011年度は約34万人いた運転手が、2021年度には約22万人と10年間で3割強も減少。
コロナ禍によるタクシー需要の減少に伴う経営悪化でドライバーの数が減少し、コロナ感染を恐れて辞めた高齢ドライバーも多いといいます。
2022年度のタクシー運転手の平均年齢は58.3歳で、65歳以上のドライバーが全体の8割以上を占めています。

流通経済大学経済学部 板谷和也 教授:
最近はタクシー運転者が減って、電話でお願いしても出払っていて出せないという返事をもらうことも多くなっています。やはりタクシーに乗る方が少ないと、商売として成り立たなくなるということもありますが、もうひとつ大きいのが長時間労働をせざるを得ないと。場合によっては深夜まで働かなくてはいけない中で、それに対応したたくさんの給料をもらえるかというと、そうではないというところが、運転者が減っている一番大きな問題なので、そこを解決しないと、単にライドシェアを導入するだけで良いサービスが提供できるようになるとは、私はちょっと思わないです。

板谷氏は、ライドシェアの導入には、「安全面」や「料金面」、「労働環境の改善」など、さまざまな課題があるといいます。

流通経済大学経済学部 板谷和也 教授:
海外の場合で言うと、ライドシェアは誰でも運行できる国ばかりではなくて、例えば先進国、ニューヨークやロンドン、パリでは一定のタクシーとは違う許可・あるいは免許を持っている人しかウーバーで運転することはできないという形にしていますので、そういう国としての制度、免許制度などを準備していくことも大事ではないかと思います。
(めざまし8 9月19日放送)