田畑が広がる先にひっそりとたたずむ、廃業した温泉旅館「坪野鉱泉」。
富山・魚津市にあるこの“廃墟”は、1980年代半ばに廃業して以降40年近く放置されていたが、ようやく解体へと動き出した。
その背景には、心霊スポットとして肝試しに訪れる若者たちなどによる、相次ぐ迷惑行為があった。

割れた窓ガラス…多くの落書きも

14日、「イット!」が現地を取材すると、プール跡地の解体作業が行われていた。

建物の周囲にはバリケードが設置され、中に入れないようになっていて、「立ち入り禁止」と書かれた看板が置いてあった。廃屋までの一本道の入り口には防犯カメラが設置されていた。

バリケード内の廃屋には多くの落書きが…窓ガラスもほとんど割れている
バリケード内の廃屋には多くの落書きが…窓ガラスもほとんど割れている
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しかし、中に侵入しなければ書くことができない外壁には多くの落書きが残され、ほとんどの窓ガラスも割られた状態だった。

“北陸最恐”心霊スポットに

インターネット上に無許可でアップされた「坪野鉱泉」内部の様子を見ると、トイレだったとみられる空間では、便器が破壊されて粉々になっていた。廃業後から、不法侵入が相次いでいたとみられる。床には、1990年代の新聞紙が散らばっていた。

近年では、有名ホラー映画の舞台となったことで、“北陸最恐”の心霊スポットとして肝試しに訪れる若者も少なくなかったという。

「今でも『お化けが出る』とか言って」
「今でも『お化けが出る』とか言って」

解体作業員:
休みの日になったらアベックか2~3人若い子が車止めて見に来ている。今でも「お化け出る」とか言って。

解体の背景にあるのが、こうした不法侵入による迷惑行為だ。

魚津市商工観光課:
昔から暴走族とか、そういう若者が訪れたりして、落書きをしたり花火をしたりして、周りから見ると、迷惑施設みたいなことになっていた。

観光庁の補助金活用でようやく解体へ

長年続いてきたという迷惑行為。なぜ40年近くもの間、建物は解体されなかったのか。

魚津市商工観光課:
取り壊し費用が高額になるというところで、なかなか取り壊しまでは踏み切れなかったような話は伺っている。

魚津市は所有者に対して施設の撤去を求めてきたが、2億円近い費用がかかることから長年放置されていた。そうした中、魚津市は観光庁の補助金を活用して「坪野鉱泉」を解体撤去する計画を提出した。

2023年5月に採択された計画では、撤去費用の約半分を国が負担し、市と県が約3300万円ずつを補助することになっている。

近くの住民は「ほっとしている。万が一のことがあったり…誰かが上って落ちたりしたら命にかかわることだから」と話し、解体撤去を聞いて安心した様子だ。

「坪野鉱泉」跡地については今後、富山湾も一望できる展望台として活用する計画なども持ち上がっていて、“最恐”スポットから“最上”の観光スポットへと生まれ変わるかもしれない。
(「イット!」9月14日放送より)

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