IT大手アップル社のイベント。世界中の注目が集まったのが「iPhone15」の発表。現地メディアなどによると新型iPhoneは、充電などに使う端子がこれまでのアップル独自の端子から「USBタイプC」に変更、カメラもさらに高画質になると報じられた。

ただ気になるのはその価格。専門家は、機能のアップデートに合わせて「数万円の値上げ」になる。

中国政府はiPhoneなどを業務で使用することを禁止!?

ITジャーナリスト三上洋さん:
円安の影響もあって1番安いもので13万円台、一番高いモデルだと30万円を超える可能性も出てきました

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もはや携帯電話とは思えない価格だが、アップルの業績は絶好調が続いている。6月末には、「時価総額」が終値で史上初めて3兆ドル=約440兆円を超えた企業に。世界一価値の高い企業と行っても過言ではないアップルに先日、一大事が起きた。

アメリカの「ウォールストリート・ジャーナル」は6日、中国政府が中央政府機関の職員などに対し、iPhoneなど海外社製の携帯電話を業務で使用することなどを禁止したと報じた。

情報漏えいに対する取り締まりを強化するなどのために出されたものとみられているが、ニューヨーク株式市場では「アップル」の株価が一時急落。

アップルの時価総額「28兆円」が吹き飛んだ。中国市場はアップルの売り上げの2割を占めていることから、投資家などが今後の影響を不安視したためとみられる。

そもそもアップルのスマートフォンは中国で約15%のシェアを占める人気ぶり。 中国の国内メーカーも必死にその背中を追っている。

アップルとのシェア争いで攻勢を強める「ファーウェイ」は9月3日、新しい機種を発売したばかり。

最新のiPhoneの発売直前に勃発したスマートフォンをめぐる米中対立。そして日本への影響は?

世界のスマホ事情に詳しい経営評論家の坂口孝則さんに聞いた。

Appleの時価総額が一時、28兆円も減ったということだが、中国の影響が大きいということなのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
時価総額の約7パーセントぐらいだと思うんですね。中国とはいえ、国家公務員といってももほとんど比率はないですから、市場がやや驚き目に反応したのかな…というのはあると思います。ただこれ以降は中国政府がどう動くのかわからないので、これくらいは下がりつつ、今日あたりはちょっと戻したっていう感じですね

今どうして回復してきているんですか?

経営評論家 坂口孝則さん:
最初は市場がやや過剰反応気味だったと思うんですけども、例えば具体的な書類などで指示が出ているわけでもありませんので冷静になってきたという側面は大きいと思います

アメリカの半導体をめぐる規制への対抗

中国の狙いについて、坂口さんの見解は「アメリカの半導体をめぐる規制への対抗」ということなのか。

経営評論家 坂口孝則さん:
しっかりちゃんとアメリカや西側諸国が規制したことに対して、中国がある一定のメッセージを与えているという事だと思います。特に昨年の10月ぐらいからハイテク機器とかAIに関する最先端技術について、西側諸国が中国に対する規制をものすごく強化をしてきましたので、それに対して、半導体あるいは今回みたいなスマートフォンの規制をかけることによって、メッセージを強く出したっていう側面は大きいと思います

アメリカによる半導体の規制というのは中国にとってそれほど困る、厳しいことなのか?

関西テレビ 神崎報道デスク:
そうですね。中国では作れない、一部の先端半導体と言われる、高性能のものであったり、実は半導体の製造機器などの、中国への輸出を規制するということで、今回、これで中国がそれに対して報復したんですね。その報復が今回のこのiPhoneになってしまいましたが、実はアップルと中国っていうのは結構、良好な関係をこれまで保ってきてたんです。アメリカの規制によって、ある種、アップルがそのとばっちりを食ってる。そのような形になってるんです

さらにもう一つ狙いがあるということで…

国産のスマートフォンを盛り上げたい

中国電子機器の最大手企業ファーウェイの最新機器が8月末に発売された。この上位モデルが約14万円で、この国産スマホを広めたいという狙いがあるということだ。中国がiPhone等を使用禁止にした背景には、現在の国内の経済的な背景というのもあるのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
はい、多くの狙いの内の一つかと思います。トランプ大統領が中国製品をすごく規制した時に、特にファーウェイが全世界での活躍の場を閉ざされてしまったわけなんですね。一番新しいAppleの決算によりますと、ファーウェイなどから乗り換えてiPhoneを買ってるユーザーがたくさんいるという報告があったんですね。中国側からすると、どんどん自分たちの自国のスマホのシェアがなくなっていて、他国のシェアが大きくなるというのは、国内向けのメッセージとして何らか訴える必要があったと思います

国産スマホがピンチだという状況でこういった動きなのかもしれないが、このモデルのお値段を見ると14万円、新型iPhone15は30万円ということなので、半分以下ということだが、機能や製品の良さ違いはどうなのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
iPhone15に対して半導体、中に入ってる部品はそれほど先端ではないとは思うんですけれども、中国が独自で作った部品がすごく多くなってるって報じられてるんですね。通信とかソフトウェアの組み合わせがかなりファーウェイは優れていますので、おそらく普通に使うぐらいでは、遜色ないレベルになってるんじゃないかと思います

アメリカの輸出規制を緩和してほしいと中国は思っているのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
正確に言いますと台湾から最先端のチップが入ってくるかっていうのがすごく大きな問題なんですね。現状ではなかなか入ってこないものですから中国は独自生産せざるを得ないわけです。具体的に言うと今、2ナノっていうのが一番最先端の「回路幅」なんですが、中国で何とか作れるのは7ナノなんですね。先端まではもう少し差がありますので、本音では日本を含めた西側諸国の技術を欲しいというのは間違いないと思います

今後、中国とアップルの関係はどうなるのか?

Appleと中国は切っても切り離せない関係

坂口さんの見解は「中国は製造と販売のiPhone大国でAppleと中国は切っても切り離せない関係」ということだ。

実は、過去に坂口さんはiPhoneを製造する中国の巨大工場を視察したことがあるそう。iPhoneの一大製造拠点、ホンハイの精密工業の工場。世界全体の約7割をここで生産しているそうだ。従業員の数は50万人から 80万人ともいわれている。中国がこのような一大雇用を生み出すアップルと決別するということは、まだ考えにくいということなのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
私、佐賀県出身なんですが、佐賀県の人口って80万人ぐらいなんですね。大半がアップル製品を作っているぐらいの雇用が生まれてるんですね。かつアップルはアップルで約20%の売り上げで、四半期だけで2兆円を超える売り上げが中国であるんですね。規制などが、あまり効きすぎるとまずい。相思相愛でありながら、言うべきところはたまに言う、ぐらいの関係に、本当はしたいんじゃないかと思うんです

日本企業はこのスマホ戦争とどう付き合っていくのがいいのか?

売れるスマホに日本の技術あり

坂口さんの見解は「売れるスマホに日本の技術あり」だ、これはどのようなことなのか。

経営評論家 坂口孝則さん:
スマートフォンを作る時にものすごく重要なのって、部品なんですね。部品は、京都や大阪の企業などに、世界に打って出られるような技術がすごくたくさんあります。なかなか言いづらいんですけれども、西側の国だけじゃなくて、例えばアジア・中国を含めて、したたかに商売をした方がいいと思うんですね。あと半導体を作る製造技術というのは、前工程と後ろ工程って分かれてるんですけども、前工程で半導体を洗浄したりとか、後工程で半導体をカッティングする技術も、これも世界1位なんですね。ですので、ちょっとズルい言い方になるんですけど、どのメーカーがトップに立っても、日本はしたたかに販売を続けていくっていうのが生き残る道なのかなって気はします

今後、中国でiPhone全部「全員禁止です」みたいな事はありえるのか?

経営評論家 坂口孝則さん:
彼らにも一応法律がありますから、何らかの理由が明確にないと難しいと思うんですね。例えば 数ヶ月前に半導体を一部禁止した時には、セキュリティの問題があったっていうこと言ってるんですね。なので何らかの理由があればいいんですけども、全面的に13億人全員を禁止するってのはちょっと難しいのかなって気はしてますね

スマホを巡る仁義なき戦いのゆくえ、そして新型 iPhone 15にも注目したい。

(関西テレビ「newsランナー」2023年9月12日放送)

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