8月7日、岩手・陸前高田市で伝統の「2つの七夕まつり」が行われた。4年ぶりに通常開催となった2023年は、コロナ禍前と同じように地域の絆をつなぐ熱い祭りとなった。

同時開催する「2つの七夕まつり」

岩手県の沿岸南部に位置する陸前高田市は、東日本大震災では甚大な被害を受け、1,808人が犠牲となった(死者・行方不明者/2023年7月末時点/岩手県調べ)。

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市内では例年旧暦の七夕に合わせ、同じ日に2つの七夕祭りが開かれている。
「華やかな山車(だし)」と「激しい山車」。対照的な祭りがコロナ禍を乗り越え、4年ぶりに参加者全員が掛け声を出すことができる通常開催となり、街は活気に包まれた。

市内の高田町で行われたのは「うごく七夕まつり」。9つの地区から鮮やかに彩られた手作りの山車が参加し、小さな子どもから大人まで、おはやしを奏でながら朝から晩まで街を練り歩く。

陸前高田市民:
わくわくする。いいと思う。去年まではコロナ禍で盛大ではなかったけど、ことしは4年ぶりに盛大にやって良かったと思っている

地域の人たちを支えてきた“山車”

参加団体のひとつ「大石七夕祭組」の及川晴翔さん(19)は、物心がつく前から両親と参加していた「うごく七夕まつり」を毎年楽しみにしている。

及川晴翔さん:
コロナ禍が明けて初めてなので、やっぱり楽しい

震災で両親を亡くした及川さんは、コロナ禍で祭りばやしのお披露目だけにとどまった2021年、うごく七夕まつりへの思いを「楽しかった。小さいころ憧れていたお父さんが太鼓をたたいていた姿と同じようにできてうれしい」と語っていた。

かつては12の地区から参加していた山車も、津波でほとんどが流された。被害を免れた3台の山車と新たに作り直された山車が、復興に歩む地域の人たちを支えてきた。

及川さんも地域の人に見守られ、この祭りとともに成長してきた1人だ。

及川晴翔さん:
夏の一番の楽しみ、年に1回の。楽しくわいわい緩く楽しめればと思う

これからも伝統を絶やさずに…

一方、高田町のとなりの気仙町で行われていたのは、約900年の歴史を誇る「けんか七夕まつり」だ。

合図とともに参加者が綱を引き、勢いよくぶつかり合う重さ3トンの山車。山車の上では、祭りを盛り上げる「笹振り」が行われ、見物客からは拍手が送られた。

陸前高田市出身の人:
人口も減ったし、友人・親戚の人たちも亡くなった人が多かったけど、亡くなった人たちが一緒に見ているのではないかと思うと、こういう祭りは大切だと思う

震災前は4つの町内会がそれぞれ山車を作っていたけんか七夕まつり。震災がおきた2011年は、骨組みだけが残った1台だけの山車を地域の人たちが飾り付け、ぶつかり合わない「けんか七夕まつり」が行われた。

その後、もう一台の山車を復活させ、伝統を絶やさずこれまでやってきた。

けんか七夕保存連合会・佐々木冨壽夫会長:
去年より人が来たのではないかという感じがしている。みんなに参加してほしいという気持ちがあった。無事に終わって安心している。みんなに感謝している

朝から夜まで、それぞれの地域を彩った2つの祭り。震災とコロナ禍の苦難を乗り越えた力強い祭りばやしが陸前高田を熱く盛り上げた1日だった。

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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