大分県佐伯市にある「丹賀砲台」。かつてここには巡洋艦「伊吹」から移設された大砲が海に向けられていた。戦争の記憶が生々しく残っているこの「丹賀砲台」が今、インスタグラムを楽しんでいる人や芸術家から熱い視線を浴びている。
敵艦に向けられていた大砲
大分県佐伯市鶴見丹賀浦。かつて豊後水道一帯の守りの重要地点だったここには巡洋艦「伊吹」から移設された大砲が海に向けられていた。
佐伯で撮影されたという写真を見ると、戦争が私たちのすぐそばにあったことを実感させられる。
分厚いコンクリートで支えられた大砲は1942年(昭和17年)訓練中に暴発事故を起こし16人が亡くなった。その時の跡も、あちらこちらに見ることができる。この暴発事故のため、実際にここから敵に向かって撃つことはなかった。
「絵になる」撮影スポット
ドーム型の屋根、螺旋階段は1991年、公園整備と同時に保護のために設置された。
この「丹賀砲台」が今、インスタグラムを楽しんでいる人や芸術家から熱い視線を浴びている。インスタグラムで作品作りを楽しんでいる「みこ」さんも、この丹賀砲台で撮影を行った。
「背景が美しさもありますし、やっぱりそうですね、恐怖だったっていうことも、いろんな感情がある中で、やはり絵になる場所だと私は思います。ただただかっこいいから撮りたいとか、素敵だから撮りたいっていうのと、やっぱりここで何があったかっていうのを思って撮るのはまた違うんと思うんですよね」(みこさん)
「この歴史があったから今がある」「そう感じられる場所だから撮れる1枚がある」と、みこさんは言う。
砲台跡をミュージアムに
佐伯市もここを鶴見の新たなスポットとしてアピールしていこうとしている。秋には、ここで「夜の戦争遺構とアートカルチャー」を融合させたイベントを企画。この日は、そのイベントのための写真撮影が行われていた。
アーティストで地域や企業のブランディングも手掛ける櫻井暢子さんは、このイベントの仕掛け人。
「そのまんま残したっていうところに私はすごい魅力を感じています。もちろんちょっと痛ましい事故があった場所ではあるんですけど、なかなかこういった雰囲気を持った場所もないですし、私は素晴らしいなっていうのは思ってます」(櫻井暢子さん)
砲弾のあった部屋。爆発のあと。その“ありのまま”が残る場所で発信される「2023年のアート」。
櫻井さんは、
「自分に起きたそのときに感じたこととか、その自分に起こったことを自分にあるものっていうのを何かそれがポジティブであってもネガティブであっても、自分に起きたことということを何か心いっぱい感じて帰ってもらえたらすごくいいなと思いました」と話す。
保存が難しくなっている戦争遺構。人が集う場所になりつつあることは、維持していくために追い風になりそうだ。地域の方たちも歓迎している。
佐伯市鶴見振興局の休坂さんは、
「今コスプレイヤーの方たちとかインスタグラマーさんたちが入ってきてくれるのを逆に喜んでくれてるところがあるので、僕自身も楽しみです」と話し、地域の新たなスポットとして期待を寄せる。
11月には「NightMuseumTANGA」と題した、撮影イベントや展示も行われる予定だ。
(テレビ大分)