自分が住んでいる町にどんな動植物がいるのか知っているだろうか? 昔に比べてあまり見なくなった生き物もいると思うが、そんな中、野生生物を撮影してアプリに投稿するという東京都の生物調査が行われている。
都が実施しているのは市民参加型のプロジェクト「東京いきもの調査団 2023夏編」で、期間は9月30日まで。都民でなくても参加でき、集めたデータは生物多様性の保全・回復のための基盤情報となる「野生生物目録」作成の基礎データとして活用されるという。
「クエスト」で楽しく動植物をゲット
調査には、ユーザーが撮影した動植物の写真を投稿できる、いきものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を利用。
この記事の画像(5枚)参加方法は、ダウンロードしたBiomeのホーム画面に出てくる「東京いきもの調査団」のバナーをタップ。あとは、期間中に都内で撮影した野生生物の写真を投稿するだけだ。
参加者はたくさん投稿をしていき、「いきものクエスト(以下:クエスト)」を2つ以上クリアすると賞品の抽選に応募できる。
「クエスト」は、野生生物探しをゲーム感覚で楽しめる機能。「東京いきもの調査団 2023夏編」の「クエスト」は全部で23種で、例えば「東京のトンボ」クエストは、トンボの仲間を3種投稿すると達成できる。ほかにも、「23区のいきもの」「旬のお魚」「わがまちのシンボル」など、バラエティに富んだクエストが揃っているという。
名前がわからなくてもAIが候補を提示
なお動植物の名前がわからなくても問題ない。写真を投稿すると、AIが推測した名前の候補が表示され、その中から選べば自動的に「クエスト」の対象になるか判定されるのだ。
期間は9月30日までなので、これから参加したい人もいるかもしれない。アプリの制作元であり、東京都と一緒に調査を進めている京都の企業「バイオーム」に、市民参加型の意義や、攻略のヒントを聞いてみた。
――まず、アプリ「Biome」の特長的な機能について教えて。
撮影したいきものの名前を、10万種近くに対応するAIの名前判定機能を使って調べられます。それでもわからない時は、「しつもん投稿」をすることで、他のBiomeユーザーに質問することもできます。現在、Biomeには80万人以上の方がユーザー登録しており、いきもの好きが集まる一大コミュニティとなっています。
アプリに集まった「いつ、どこに、どんないきものがいるか」という情報は、生物多様性の保全のために活用されています。なお、絶滅危惧種など希少ないきものの生息地が特定されるような情報は、保全の観点から、強制的に非公開になります。
より多くのリアルタイム情報が得られる
――アプリによる市民参加型の調査にはどのようなメリットがあるの?
たくさんの人の目で、広い範囲を調査することで、専門家による調査だけでは得られない多くのいきものの情報を集めることができます。また、アプリによるデジタル調査を行うことで、リアルタイムに情報を更新していくことができます。
――そもそもこの企画はどのような経緯で始まったの?
元々アプリBiomeは、いきものの情報を広く集めることで、生物多様性の保全に役立てたいという思いで開発しました。これまで、環境省と行った「気候変動いきもの大調査」をはじめ、Biomeを活用したいきもの調査プロジェクトを多く実施してきました。
そうしたアプリ開発の目的や、市民にとっても使いやすいことなどによる市民参加、普及啓発の実績にご注目いただき、この度東京都との間で「野生生物目録」の策定と活用を目的とする協定を締結させていただきました。「東京いきもの調査団」はその協定に基づき、東京都・専門家・都民の力を集結させて「みんなでつくる生物目録」の実現を目指すものです。
――「東京いきもの調査団 2023夏編」で、これまでに集まってきた“いきもの”の情報を見てどう感じた?
みなさんの投稿を見ていると、都心部のちょっとした緑地や水路にも、こんなに多種多様ないきものが生息しているのだなと驚かされます。これまで、東京に行く際はせわしなく用事を済ませるだけのことが多かったのですが、今度からは道端の自然に目を向けて、いきものを探してみたい!と思うようになりました。
身近な自然に目を向けてクエストを達成
――「クエスト」攻略のヒントを教えて。
いきものの種類が指定されているクエストは、少々難しいかもしれませんが、各クエストの「ガイド」ページを見ることで、どんな場所で探せばよいかなどヒントを得ることができます。
――「東京いきもの調査団」をどんなふうに楽しんでほしい?
まずは純粋に、いきものとの出会いを楽しんでほしいです。
「大都市である東京には野生のいきものなんていても少ないのでは?」と思われる方がいるかもしれません。ですが、都心部にも緑地や街路樹が広く配置されており、観察してみると様々ないきものが生息していることに気が付きます。
東京は、東京湾から奥多摩に至るまで様々な地形や環境に恵まれ、さらに伊豆諸島や小笠原といった島しょ部もあり、実に多種多様な野生のいきもののすみかにもなっていることも知っていただきたいです。
そうした東京の次世代に向けた生物目録を作るという一大プロジェクトの一員だということに、ワクワク感をもって参加していただけたらなと思います。みなさんといきものとの出会いを記録していただくことで、貴重な生物目録を作ることができます。たくさんの投稿をお待ちしています。
HPで結果を公開予定「秋編」の開催も
――「東京いきもの調査団 2023夏編」の結果を見ることはできるの?
東京いきもの調査団のウェブサイトや、バイオームのブログで随時成果を発信していく予定です。
――続編も開催する?
夏編に続いて秋編の開催を予定しています。季節に合わせた新クエストが配信されますので、お楽しみに!
市民参加型の「東京いきもの調査団」は、秋編も開催するという。この機会にプロジェクトの一員になるのも良さそうだ。
・東京いきもの調査団(https://ikimono.tokyo/)
・バイオームのブログ(https://biome.co.jp/biome-blog/)