高校生の手話コンテストに出席し、手話でスピーチされた秋篠宮家の次女・佳子さま。

声を交えず、初めて手話に専念する形に変更された背景には、「手話は言語」という佳子さまの信念があった。

初めて声を交えずに「手話」に専念  「読み取り通訳をお願いします」

8月27日に開催された「全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」は、全国から選ばれた10人の高校生が、4~6分間の制限時間内に手話で自分の考えを表現する大会。

母の紀子さま、姉の小室眞子さんも出席を重ねてきたこの行事に、3回目の出席となる佳子さまは、今回も手話で挨拶をされた。

今回初めて「音声」なしの手話だけで挨拶をされた
今回初めて「音声」なしの手話だけで挨拶をされた
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佳子さまはこれまで、手話でのおことばの際に声を交えていたが、「手話」と「音声」は文法などが異なるため、同時に表現すると言い回しを変更しなければならなかったり、どちらにも集中しづらかったという。

伝えたい内容をより正確に伝えたい。

そんな思いから、佳子さまはスピーチの冒頭、

「この後は、手話のみでの挨拶とし、手話通訳の方に、読み取り通訳をお願いします」

と自らの声で説明した上で、

その後は初めて声を交えず、手話に専念する形で挨拶された。

約7分間原稿を見ず 会場に目を配り

佳子さまの手話を通訳が読み上げ、舞台上のスクリーンにも文字で表示され、佳子さまはおよそ7分間にわたりほぼ原稿を見ず、出場する高校生や観客の目を見ながら手話で思いを伝えられた。

「舞台上でのスピーチは緊張するかもしれませんが、

これまで積み重ねてきた練習の成果を存分に発揮できるよう、応援しております」

およそ7分間、ほぼ原稿を見ずに手話で挨拶された
およそ7分間、ほぼ原稿を見ずに手話で挨拶された

「きこえない方、きこえにくい方が生活を送る中では、情報へのアクセス、
コミュニケーションなど、様々な困難があると伺っています」

「手話や、きこえないこと、きこえにくいことに対する社会全体の理解がさらに深まり、
誰もが安心して暮らせる社会になることを、誰もが幅広い選択肢を持てる社会になることを、
そしてこれらがあたりまえになることを強く願っております」

磨かれる「魅力的な手話」  透明マスクで交流も

これまでに様々な行事で、表情豊かな手話でスピーチを重ねてこられた佳子さま。

手話に関する公務をきっかけに、2021年、自ら希望して「全日本ろうあ連盟」に就職し、手話に接する時間が増えたことで、さらに磨きがかかったように見受けられる。

茨城県のろう学校を訪問し手話で会話された 2023年3月
茨城県のろう学校を訪問し手話で会話された 2023年3月

側近幹部によると、事前に入念な準備を重ねているという。
いつも原稿はほぼ見ず、常に会場に目を配りながら手話で呼びかけられている。

また、交流の場では、通訳を交えずに直接手話で会話されている。

聴覚に障がいのある選手による陸上競技大会を観戦された佳子さま 2022年11月
聴覚に障がいのある選手による陸上競技大会を観戦された佳子さま 2022年11月

手話が伝わりやすいよう、口元など表情が見える透明のマスクを着用するなど、工夫も重ねられている。

去年交流した高校生は「非常に魅力的な手話でした」「スムーズに楽しい会話ができました」と目を輝かせていた。

「国際手話を覚えて世界の人々と挨拶を」 世界を広げたい願い

40回目の今回の大会テーマは「壊したい壁」「人と出会って変わったこと」。

きこえる、きこえにくい、きこえない、コーダ(=きこえない、きこえにくい親を持つきこえる子ども)、様々な高校生が周囲とのコミュニケーションや将来の夢などについて、自らの思いを手話で伝えた。

「人間には心がある。心を持ってコミュニケーションすれば乗り越えられない壁はない」

「ありのままの自分に自信を持って良いと気づいた」

「障害は相手を理解し尊重するきっかけのひとつ」

そうした一人一人のメッセージを、佳子さまは頷くようにしてじっと見守り、手話で拍手を送られた。

今回、佳子さまは挨拶の中で、日本で使われている手話とは異なる「国際手話」についても触れられた。

佳子さま「世界各地の人々が国際手話で語っている短い動画を見て、私も少しでも国際手話を覚えて、世界の人々と挨拶を交わしてみたいと思いました」

「初めて手話で会話をした時に、新しい人との繋がりができ、自分の世界が広がったと感じたのと同じように、国際手話で、さらに多くの人と繋がり、自分の世界がさらに広がることを想像しています」

「国際手話」によって広がるであろう国際親善の輪。

壁を越えるという大会テーマに沿い、佳子さまご自身も「国際手話」への新たな挑戦で、コミュニケーションの幅を広げようとされている。

「手話は言語」佳子さまの信念 安心して暮らせる社会への願い

側近幹部によると、佳子さまは「手話は言語」との思いで、日々手話に取り組まれているという。

今回、声を交えず手話に専念する形に変更されたのは、影響力のあるお立場で手話を続けていくにあたり、必ずしも声を同時に発することがスタンダードでは無いということが、多くの人に伝わること、また「言語」である手話で自らの思いを正確に伝え、コミュニケーションを重ねていくことを願われているのだと思う。

「手話パフォーマンス甲子園」に出席された佳子さま 2022年9月
「手話パフォーマンス甲子園」に出席された佳子さま 2022年9月

「誰もが安心して暮らせる社会、誰もが幅広い選択肢を持てる社会、それがあたりまえになること」への強い願い。

佳子さまはこれまでも様々な行事で繰り返し述べられている。

「自分で選べない要因で何かが出来ないのはおかしい」という一貫した思いも持たれているという。

今回初めて、声を交えない手話に表現手法を変えられた佳子さま。

人気ドラマ『サイレント』などをきっかけに手話に関心を持つ人も増える中、より多くの人が「手話」という「言語」を身につけ、コミュニケーションの壁が解消されていくこと、そして様々な立場の人が自分らしく生きることが出来ることを心から願い、日々の活動に取り組まれている。

宮﨑千歳
宮﨑千歳

天皇皇后両陛下や皇族方が日々取り組まれる様々なご活動をより分かりやすく、現場で感じた交流の温かさもお伝えできるような発信を心がけています。
宮内庁クラブキャップ兼解説委員。1995年フジテレビジョン入社。報道局社会部で警視庁クラブなどを経て、2004年から宮内庁を担当。上皇ご夫妻のサイパン慰霊の旅、両陛下の英エリザベス女王国葬参列などに同行。皇室取材歴20年。2児の母。