電車通勤の途中で「本」を買うことが減ったという人もいるだろう。そんな状況を変えるかもしれない新しいスタイルの書店が、この秋に誕生する。

出版取次大手の日本出版販売は、空間づくりを手掛ける丹青社と協力し、完全無人の書店を地下鉄駅構内にオープンするというのだ。

(出典:日本出版販売)
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書店の名前は「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」。その名の通り、東京メトロ「溜池山王駅」の改札外、8番出口の近くに店舗を設け、朝7時から夜10時まで営業する。

同社によると、駅構内に完全無人書店ができるのは日本初の試みで、持続可能な書店モデル実現に向けた実証実験を行うとのことだ。「完全無人でも安心して利用できる」としており、入退店はシステムによって管理するという。支払いはキャシュレスのみで、また遠隔接客システムなどのテクノロジーの活用して、快適な店舗体験を創造するとしている。

さらに、リリースと同時に発表したティザーサイトには、店舗の説明として「1分でトレンドがわかる無人本屋」「ニュースアプリのホーム画面のような空間」「ふらっと、サクっと、旬を手に」と紹介している。

(出典:日本出版販売)
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今や書店は全国的に減少しており、その中で駅ナカや駅前の書店は人件費と賃料で経営が圧迫されて閉店することが多いそうだ。

同社の調べでは、地下鉄に限らず駅ナカの書店は直近の2年で17店舗減少し、駅周辺では約120店舗が閉店したという。このままでは書店ニーズを満たすことができなくなり、読書習慣が失われてしまうことにもつながるとして、書店モデルの開発に挑戦することになったという。

1号店に溜池山王駅を選んだ理由

完全無人書店を始める経緯は分かったが、ではなぜ、1号店として溜池山王駅を選んだのか?実証実験とは具体的に何を調べるのか?担当者に聞いてみた。


――溜池山王駅を選んだ理由は?

第一に、溜池山王駅は人口あたりの書店数が他の駅より少ないエリアです。また、隣駅である赤坂駅周辺でもこの2年で2店舗が閉店し、周辺でも書店ニーズを取りこぼしている現状があると考えたためです。


――「1分でトレンドがわかる」「ニュースアプリのホーム画面のような空間」とあるが、どんな書店になるの?

フラっと立ち寄り、サクっと旬の本を手に取れる売場をつくります。そのための一つの手段として、取り揃える本にこだわります。来店されるお客様の感情を重視し、ニーズを導き、ジャンルにとらわれない売場づくりを行います。

たとえば、溜池山王駅を利用するビジネスマンの
・「あれ知りたい。勉強しないとな」という学習意欲や、
・「今って何がアツいんだろう」という流行りを追いかけたい好奇心、
・「今日は疲れた。気分変えたい」という仕事からの気分転換など、
利用シーンを想定した売場で「フラっと、サクっと旬を手に」を叶えます。


――立ち読みはできる?万引き・盗撮対策はどうする?

可能です。長時間の立ち読みについては、監視等できるようなシステムを導入しリスク管理に努めます。また警備会社と連携し、防犯対策、緊急対応を行います。

無人書店で客が本を購入するのか検証

――本を読むだけなら電子書籍でもできるが、書店で本を買う良さとは?

あくまで弊社の一意見となりますが、求めているものを検索して購入することが多い電子書籍に対し、あらゆる本が並ぶ本棚から欲しいものを探す書店は、その過程でより偶然の出会いが生まれやすいと思っています。

欲しい本を購入しに訪れた書店で、思いもよらなかった商品との出会いがあったり、店頭で実施しているイベント等を通じて新たな体験をしていただける点が、書店で本を購入する良さだと考えています。


――実証実験では何を検証するの?

大きくは下記2点です。
1,無人書店にお客様は入店するのか、そして本を購入するのか。
2,売上と店舗運営の面において、持続可能な経営を維持することができるのか。


――「ほんたす」の店舗は他の駅にも展開していく?

具体的な時期やエリアは未定ですが、今後他の鉄道会社様の駅や、路面店での出店も考えております。

(画像はイメージ)
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たしかに、書店で目当ての本以外に何冊も買ったり、陳列を見て何を買うか決めたりしたことは誰にでも経験があるだろう。店舗だからこその良さはある。一体どんな本が並ぶのか気になった方は、開店を楽しみに待っていただきたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。