アンテナショップが賃料高騰などが原因で東京から次々撤退しているなか、新たに“公民連携型”アンテナショップが登場している。

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アンテナショップが東京から次々撤退していることについて、経済部・岩田真由子記者がお伝えする。

2008年頃から増加傾向も…

アンテナショップは都内にいてもふるさとを感じられる、旅行気分を味わえるとして人気だ。現在都内には、67店舗のアンテナショップがある。

そもそも、アンテナショップとは、自治体が主体となって、東京や大阪などの繁華街で地元の特産品を販売したり、地域の多様な情報を受発信する店舗で、その数は2008年頃から年々増加傾向にあった。

しかし、いまアンテナショップが都内から撤退する動きが相次いでいる。

例えば、ご当地キャラ「ぐんまちゃん」で有名な群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」は、2008年に銀座・歌舞伎座の向かいにオープンし、2013年度には来場者数が57万5000人と人気を博していた。

しかし、2021年度には13万5000人と8割減少。売り上げ額も、2015年度には1億6700万円だったのが、2021年度では9300万円と半減してしまい、2018年に銀座7丁目へ移転した後、2022年12月に閉店した。

「ぐんまちゃん家」以外にも、2011年から有楽町に店舗を構えていた兵庫県のアンテナショップ「兵庫わくわく館」も2022年3月に閉店した。

その他にも、北海道・美瑛町や滋賀・長浜市、兵庫・豊岡市など、閉店が相次いでいる。なぜ、ここ数年で撤退が相次いでいるのだろうか。

約20年で賃料が30倍以上に

理由の一つは「賃料」だ。

例えば「ぐんまちゃん家」があった銀座7丁目の土地の価格は、2002年では1平方m当たり120万円だった。計測場所が少し異なるが、同じ銀座7丁目内で、2023年は1平方m当たり3860万円と、30倍以上になっている。

当然「ぐんまちゃん家」の賃料も年々上昇していて、賃料は年間約7000万円に上るなど、高額な維持コストが重しになっていた。

「まちビジネス事業家」の木下斉さんは「元々、アンテナショップで儲けを出す気はなかったものの、毎年億単位の予算をアンテナショップに充てているのに採算が取れていないので、そのお金を他のことに使おうという方向になった」と述べた。

また、追い打ちをかけるように新型コロナの感染拡大による不要不急の外出制限などもあり、来客数が減少した。

「ふるさと納税の返礼品の方が採算性が高い」

また、現代ではネットでも地方の特産品を購入することができ、わざわざアンテナショップに足を運ぶという人は減っている。

さらに、ふるさと納税が広がったことも大きかったようだ。

ふるさと納税で多額のお金を集めた場合でも、国から出る地方交付金額は変わらないため、ふるさと納税で入ってきた額をそのまま自分の自治体のお金として使えるのは魅力的だ。

まちビジネス事業家の木下さんは「ふるさと納税で返礼品を返した方が採算性も高く、アンテナショップが下火になった大きな要因」と述べている。

「公民連携型ショップ」が広がる可能性

都内のアンテナショップを撤退した兵庫県だったが、いま新しい作戦を始めている。それが「公民連携型ショップ」という制度だ。

首都圏に出店している兵庫ゆかりの商品やサービスを取り扱う店舗を、2022年から「アンテナショップ」として認めていて、すでに23店舗が公民連携型のアンテナショップに認定されている。

都内にある「公民連携型のアンテナショップ」1号店のマイスター工房八千代・銀座店は、兵庫県多可町で1日1500~2000本売れる特産品の「天船巻きずし」が看板商品だ。また、PRするためののぼりやパンフレットが設置されているほか、サイネージには紹介VTRが流れていた。

兵庫県は「県がアンテナショップを作るより、認定する形の方がマーケットがにぎわい、シナジー効果もあり、コストもかからず店舗が増える形になるので効果的」としている。

また、認定された店舗や利用客からも好意的な声が上がるなど、それぞれメリットもあり、こうした取り組みが他の自治体でも広がるか注目されている。

ふるさと納税としての交付金額は変わらないため、既存店舗を活用した新しい取り組みは一石二鳥だ。

大阪ではアンテナショップが増加する可能性

こうした取り組みにより、従来のアンテナショップは無くなってしまうのだろうか。

東京での復活は難しいかもしれないが、大阪ではアンテナショップが増える可能性もある。2025年に万博を控えた大阪では、駅周辺の再開発が進んでいる。

2024年7月にはJR大阪駅に隣接する高層ビルが開業予定で、国内外から多くの観光客が大阪に訪れることが予想される。

「魅力をアピールする絶好機会」ということで、富山・石川・福井の北陸3県をはじめ、高知や岡山・倉敷市がアンテナショップの出店を予定している。

(「イット!」 8月21日放送より)