車内が“食べ物だらけ”になってしまった、ユニークな列車が話題になっている。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)
この記事の画像(24枚)

それが、岐阜県の長良川沿線を走る「長良川鉄道」。

たとえば、つり革には箸で持ち上げられた蕎麦が、車両前後のスペースには鮎の塩焼きや寿司・ラーメンなどがずらり…。8月10日から運行を始めたこの列車1両に所狭しと置かれているのは、全て精巧に作られた「食品サンプル」だ。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

これらは、沿線の郡上八幡にあるメーカー「岩崎模型製造株式会社」が直営する「サンプルビレッジいわさき」で作られたもの。

郡上八幡は“食品サンプルのパイオニア”とも呼ばれる岩崎瀧三氏が生まれ育ち、食品サンプル業が深く根付いている“食品サンプルの町”。地場産業となっている食品サンプルと地元に愛される鉄道が合体したのが、この「食品サンプル列車」というわけだ。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

列車の中に展示されているのは35点のサンプル。

つり革には蕎麦の他にもバナナや、“ネバネバ感”がリアルな納豆やオクラが絡みついたり…。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

窓際には思わず「うっかりこぼしてしまった!?」と慌ててしまいそうな、ペットボトル入りの緑茶が横倒しになっているかと思いきや、別の席ではみそ汁が派手にこぼれている。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

他にも、フォークにくるくると巻かれて持ち上げられたスパゲティや涼しげなかき氷など、これぞ食品サンプル!といった趣のメニューも並ぶ。また、顔を上げればつり革の中に紛れ込んだハンバーガーがぶら下がっていたりと、車内はどこを見ても飽きない仕上がりとなっている。

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

全てじっくり見たくなるリアルな食品サンプルが、列車の中に詰め込まれたユニークな空間だ。大きく「I LOVE 食品サンプル」とペイントされた車体は特別感があふれているが、乗車するには特別料金などは必要なく、あくまで通常の定期列車として運行しているという。

とても興味深い車内だが、どんな経緯でこのコラボ列車は生まれたのだろうか? サンプルビレッジいわさきと、長良川鉄道の担当者に話を聞いてみた。

「どうしてここにバナナ?」わくわくする配置

まずは、サンプルビレッジいわさきから。


――「食品サンプル×列車」のコラボはどうやって生まれた?

「食品サンプル×AI」の新しいサービス、当社が開発・手掛けました「GOTCH SHOT(ゴッチショット)」を皆様にご紹介したいとの思いから始まりました。

そこで、夏休みや郡上おどりでお客様のご利用が多い、長良川鉄道・郡上八幡駅の構内にて、ゴッチショットのデモンストレーションのみ行う予定でした。が、「長良川鉄道様を巻き込んで列車を走らせましょう!」との企画会社(株式会社ZENSHIN)からの提案により実現しました。


――コラボのきっかけとなった「GOTCH SHOT」とはどんなサービス?

気になるメニューの食品サンプルをカメラで写せば、撮影した料理の食材や原産地など、あらゆる情報コンテンツが得られるという、AIを活用した仕組みです。食品サンプル自体がコードとなり、そこから情報サイトに導きます。

今回の「食品サンプル列車」には「GOTCH SHOT」は搭載されておりませんが、長良川鉄道・郡上八幡駅の構内にて紹介させていただいております。

一見普通のサンプルでも情報がたくさん(画像:サンプルビレッジいわさき)
一見普通のサンプルでも情報がたくさん(画像:サンプルビレッジいわさき)

――列車内に使われている食品サンプルのこだわりは?

郡上市の地場産業である食品サンプルの技術を皆様に見ていただきたく、リアルさも追求と同時に、ご乗車されたお客様を笑顔にするような驚きと感動あふれる空間にしたいと思いました。

車窓からの風景も合わせた置き位置、お客様に危険が及ばない位置も考えております。「どうしてここにバナナ?」「どうしてここにみかん?」「つり革がとんでもないことに!」遊び心満載、わくわくする食品サンプル列車です。

席からみかんがにょっきり(画像:サンプルビレッジいわさき)
席からみかんがにょっきり(画像:サンプルビレッジいわさき)

サンプルビレッジいわさきによると、「GOTCH SHOT(ゴッチショット)」は、レストランなどに並んだ食品サンプルをカメラで撮影することで、店のQRコードから起動したアプリを通してそのメニューのカロリーや栄養成分、アレルギー成分などを表示するサービス。このサービスを紹介したいという企画が今回のコラボのきっかけとなったそうだ。

鉄道「お客さん喜ぶの?」が第一印象

では、そんなコラボ企画を聞いた長良川鉄道はどう思ったのだろうか?こちらも担当者にお話を聞いてみた。


――コラボの話を聞いた時、どう思った?

「ん?大丈夫か?」「お客さん喜ぶの?」というのが最初の印象でした。車両にデコレーションするにも安全性を損なうものは出来ないし、食品サンプルを置くことで荷物を置くスペースが無くなり、利用者の利便性が悪くなるのでは?と思いました。ラッピングもポイントを外すと鉄道ファンから厳しいお言葉を頂くことが多いので、心配な部分はありました。

ぽつりと置かれた天丼もシュール(画像:サンプルビレッジいわさき)
ぽつりと置かれた天丼もシュール(画像:サンプルビレッジいわさき)

――では、そんな心配があったコラボ、実際やってみての反響は…

大盛況でした。最初の心配はどこ吹く風で、食品サンプル列車に乗ったお客さんは、ところどころに飾ってある食品サンプルの写真を撮りながらとても楽しそうです。運行状況については毎日数件お問い合わせがあります。X(旧ツイッター)で運行状況を載せているのでそちらを見て乗りに来てくれる方もみえます。

また最初のコンセプトで「かわいい」ではなく「うわ、びっくりした…」をテーマに演出したのですが、お客様の意見で「私が座るところにコーヒーがこぼれているけど掃除はしないのか」って駅員に言ってきた方もみえました。ラッピングも好評で、運行状況を聞いてくるお客様の中には「どこそこで写真を撮りたいから、何時に通る?」って聞いてくる方もいます。


――どんなところが見どころ?

個人的な意見になってしまいますが前後の運転台横にあるスペースに飾られた食事をイメージしたサンプルです。片方は喫茶店的な、片方は居酒屋的な、流れる車窓を見ながら食べるみたいなイメージを持ってみてもらえるといいかなと思っています。

こちらは「居酒屋的な」スペース(画像:サンプルビレッジいわさき)
こちらは「居酒屋的な」スペース(画像:サンプルビレッジいわさき)

――食品サンプル列車はいつまで乗れるの?

令和6(2024)年8月10日ごろまでの予定ですが、サンプルビレッジいわさきさんと株式会社ZENSHINさんと協議の上、以降どうするかを決めていきます。


――ぜひ乗ってみたい!という人にメッセージを…

車内のいたるところに食品サンプルが飾ってあるので探しみてください。楽しい列車であることは間違いないので是非!お待ちしてます!

(画像:サンプルビレッジいわさき)
(画像:サンプルビレッジいわさき)

食品サンプル列車は、当初抱かれていたという心配をものともせず大盛況のようだ。

運行情報は長良川鉄道株式会社の公式X(@NAGARA_RAILWAY)で定期的にアナウンスしている。気になる人はチェックしてみてほしい。

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(24枚)
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。