極超音速ミサイルなど次々と兵器の開発を進める北朝鮮。日米韓3カ国が安全保障協力を新たな次元に高めることで合意するなか、さらなる動きがあった。最新の映像から分析する。

ラファール戦闘機に“将来の核兵器の影”?

7月26日、日本に初めてフランス航空宇宙軍のラファール戦闘機2機が飛来した。

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72時間以内に、数千キロ離れた場所でどのように軍事介入、危機対処をするかを見せる訓練の一環で、フランス本国から10機のラファールや輸送機などがグアムなど太平洋方面に展開。その一部が日本にやってきたのだ。

このラファール2機は、日本に来る前に韓国に48時間滞在していた。

こうした動きに対して北朝鮮は「これは、露骨な軍事的挑発である。アメリカが超大型戦略原子力潜水艦を送り込んで核戦争勃発の臨界点に追い込んでいる。このような時に、フランスが敵側地域に戦闘機を派遣したのは、われわれの憤怒をかき立てている」(朝鮮中央通信・8月2日)と非難した。

今回の北朝鮮の過剰とも言える反応について、フジテレビの能勢伸之上席解説委員は、「フランス空軍のたった2機の戦闘機に、将来の核兵器の影が見え隠れしているとみたからかもしれない」と指摘する。

航空軍事評論家の石川潤一氏は、日本に飛来したラファール戦闘機2機は核抑止、核ミサイルの運用も任務とする第4航空団に所属していて、垂直尾翼のマークや機体番号から、射程500kmの超音速核ミサイル=ASMPAを運用できるように改修された機体だと分析している。

“見せる核抑止”と“見えない抑止”

北朝鮮のミサイルをめぐっては、7月に発射試験を行なった「火星18型」大陸間弾道ミサイル、それに「火星17型」も、推定射程1万5000km。将来、核弾頭がアメリカ本土のみならず、フランスを含むヨーロッパにも届きかねない。フランスにとっても、北朝鮮の戦略核ミサイルはこのまま放置できない脅威になり得る。

一方、フランスは、射程1万kmものM51戦略核ミサイルを搭載するミサイル原潜をすでに配備している。M51は、大西洋からでも物理的には北朝鮮などに届くものの、海中に潜んでいるので“見えない抑止”と位置づけられる。

核ミサイルなしの今回のラファールの展開について、能勢上席解説委員は「アメリカが先月、核ミサイルを載せた潜水艦を堂々と見せつけたような“見せる核抑止”ではなかった。しかし、北朝鮮が、アメリカやフランスの“見えない核抑止”など無視するかのように、ミサイルの高性能化を進めれば、フランスのような合法的に核保有を認められている国が“見せる核抑止”にも踏み込むかもしれない」と分析する。

“見せる核抑止”をめぐり、北朝鮮と西側諸国の間で緊張感がますます高まっている。

(「イット!」8月20日放送より)

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能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局上席解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。