台風が過ぎ去った後に熱中症になる方やけがをする方が多いという医師の話がある。災害の後にも注意が必要だ。

いま台風7号による被害の復旧作業を行っている方がいる。これから台風シーズンが続く、この時期だからこそ知っておいてほしい、災害後に注意すべきことについて、防災アドバイザーで大阪狭山市の消防団にも所属されている岡本裕紀子さんに聞いた。

大切なのは片付け前に被害を記録

災害後には意外と気付かない注意点がある。片付け中にケガをすることにも当然注意が必要だが、まず片付けの前に被害を記録しておく、写真を撮影しておくことが大切だという。

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
災害に遭った方が公的支援を受けるためには罹災証明書が必要になります。それを申請する際に、被害を受けた自宅の写真が必要になります

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被害の記録を残す際に、どんな被害だったか具体的に分かるように写真を撮影するのがポイントだ。

家は4方向から撮影し、被害場所は「近く」と「遠く」の写真を撮影。また、浸水の場合、浸水の深さが確実に分かるように撮る。

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
誰がどう見ても、どこまで水につかったのか、どんな被害が出たのかはっきりと証明できるような写真が必要になります。罹災証明の時には、行政側の現地調査が行われます。その時に行政の主張と被災者の主張が食い違いますと、思っているような支援が受けられないこともあります。例えば室内が浸水した場合ですと、壁に水の跡が残っている場合があると思いますので、メジャーを壁に当てるなどして、目盛りが読めるような写真を撮っておくこともポイントです。メジャーがなければ、紙幣や官製はがきで高さを証明するということも可能です」

番組コメンテータでジャーナリストの鈴木哲夫さんは「“1つの部屋で6枚撮れ”と聞いたことがあります。4方向と天井とちょっと引いて全体みたいに。今はスマホがあって簡単に撮影できるので、何枚と言わずたくさん撮っておくに越したことはない。補償があるかないか全然違いますから」と話しました。

暑くても長袖長ズボンで

では、災害後の片付けの最中にどんな危険が潜んでいて、どんな対策があるのか見ていく。

まずがれきの中にある、くぎやガラスでケガをするおそれがあるため、服装は長袖・長ズボンを着て、軍手や靴で手足を守る必要がある。

ーー暑い時期は、半袖・半ズボンで作業したくなるところですが、やはり危険なのですね?

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
そうですね。肌が出ている状態ですと、ぶつけてしまってすぐに切ってしまうような負傷につながってきます。手足を守ることをぜひ意識してください

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
足の方ですが、「踏み抜き防止インソール」というものが販売されています。靴の中に入れておけば、くぎであったりガラス片を踏み抜くのを防止することにつながります。とがったものを踏んだとしても、ある程度貫通するのを予防することが可能になります。あと手袋も、防じん仕様のものを選択していただければ、手を守る力になってきます

ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問。

ーー災害前に買っておくべきものは?

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
先ほど説明したインソールや手袋といった手足を守る対策があるといいです。あと熱中症の心配がある時期ですので、塩を補給できるようなキャンディーやスポーツドリンクをすぐに飲めるように備蓄しておく。そういったものもあるといいと思います

もう一つ災害後の片付けの注意点として、屋根の修理をしようとして落下してしまう危険性があある。自分でやろうとせずに、プロに任せるのが良いとのことだ。

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
普段住んでる家であっても、屋根に登るのは、職業で屋根に携わられている方以外ですと、不慣れ作業になります。雨漏りや瓦が外れてブルーシートを掛けに行くというのは、本当に危険です。足を踏み外して落下するおそれもありますので、必ずプロの方に依頼していただきたいと思います

実際の災害から見る“気をつける点”

この時期に気を付けないといけないのは、“熱中症”だ。台風7号の被害を受けた兵庫県香美町の現場から中継。

ーー現場では片付けの最中に熱中症で病院に運ばれるような方はいなかったか?

大野雄斗記者:
幸い、熱中症で搬送された方はいないということです。ただ今日も香美町は暑くて、最高気温は31.8度でした。さらに浸水被害のあった場所は、地面全体が泥で覆われていまして、下から水分が蒸発してくる感じで蒸し暑さを感じます。そもそも泥の上を歩いてるだけで体力を持っていかれる印象を受けました。肌着などの薄着で作業されている方も目立ちました。一番印象に残ったのが、皆さん少しでも早く日常の生活に戻りたいということで、朝早くからもくもくと作業されていたことです。高齢者の方も多いですし、水分補給はしっかりしていましたが、やはり熱中症は心配なところでした。「もう朝6時から作業しているよ」とおっしゃったりして、全員で泥を落とす本当に大変な作業をされていました

ーー休憩と水分補給が重要ですね?

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
そうですね。例えば、30分に1回は水分補給する、1時間に1回必ず休憩するといった形で、熱中症を予防する対策にしっかり取り組んでほしいです。水を直接体にかけて、うちわであおぐだけでも体の熱が逃げます。身近にあるものを積極的に生かして対策してほしいと思います

ここでまた視聴者から質問。

ーー犬を飼っています。災害後の心得は?

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
ペットを家族同然に大切にされている方、多くいらっしゃると思います。ペットを守ることは、飼い主を守ることでもあります。なので犬のお世話に必要なドッグフードなどを備蓄しておくことが考えられます。あと避難所に一緒に連れて行くことを想定して、周りの方に迷惑をかけないようケージに入れるしつけをしておくとか、一緒に避難しても大丈夫な環境やしつけをお願いしたいと思います

今回の台風7号では、京都府で床上浸水の被害が出たが、床上浸水に備えてやっておくことというのはあるのか?

防災アドバイザー 岡本裕紀子さん:
とにかく早めの避難で命を守るのが一番です。そこを意識してほしいと思います。自宅を守ることもすごく大事だと思いますが、命あってのものですから、やっぱり何より早めの避難をお願いします

災害前の備え、災害後の注意が必要だということだ。

(関西テレビ「newsランナー」2023年8月16日放送)

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