ゆいレールが2023年8月10日で開業20周年を迎えた。今まで大きな事故もなく、2023年7月末時点で延べ2億9000万人の乗客を安全に運んできた。20年間の安全運行の裏側には昼夜、整備・点検に携わる技術者たちの姿があった。

開業以来 事故はゼロ 定時定速を支える技術者

多くの県民や沖縄を訪れる観光客にとって欠かせない移動手段となった沖縄都市モノレール・ゆいレール。

2023年8月10日、開業20周年を迎えた。

この記事の画像(15枚)

2003年の開業以来、軌道法に定められている脱線事故や人身事故などの「運転事故」は一度もなく、2023年8月9日まで7302日、安全運行を積み重ねてきた。

その裏には、ゆいレールの安心安全、そして定時定速を支える技術者たちがいる。

終電の運行を終えた午前1時前。

そこに現れたのはゆいレール…ではなく、黄色い点検車両。

沖縄テレビ 山城志穂 記者:
深夜のゆいレール石嶺駅に来ています。作業員の方々がこちらの黄色い点検車両に乗り、ゆいレールが走る軌道桁(きどうけた)の整備や点検を行います

この日は車両が走る軌道桁、いわゆる「レール」やそれを支える部品などに異常がないか、年に一度の点検・整備が行われていた。

那覇空港駅からてだこ浦西駅までの全てのレールの点検を終えるには、半年以上かかる。

ゆいレールの作業員によると、部品のサビ具合やボルトが切れていないか、また板が外れていないかなどの点検を行っているという。

細かい作業を一つひとつ地道にこなしていく。

”芽生えた使命感”乗客の安全を守るために

ゆいレールの開業当初から20年にわたり、この仕事に携わってきた作業員がいる。

現場を取り仕切る新垣定信さんだ。

20年点検に携わってきた新垣定信さん:
最初の頃は、特にやりがいとかを考えずに現場に入っていたんですが、作業に携わっている間に、モノレールは沖縄唯一の軌道の公共交通機関だ、ということを考えているうちに、なかなかこういう仕事に携わることはないと思いがどんどん出てきました

乗客の安全を守るため、点検に携わる一人ひとりが使命感を持っている。

沖縄都市モノレール 施設課 照喜名悟主任は、「20年を迎えられてお客様に感謝したいのと、今後30年、40年、大きな事故もなく維持できるように励んでいきたいです」と意気込みを語った。

高温多湿の気候 沖縄は”サビ”との闘い

日中の工場棟。
ここではおよそ40人の作業員が車両の検査にあたっている。

車両本体はもちろんのこと、ゆいレールを構成する部品一つひとつのメンテナンスも行っている。

20年にわたり現場を見つめてきた一人が、仲村喜代志さん。

沖縄都市モノレール 車両課 仲村喜代志 課長:
(20年)長いようでもありますし、あっという間でもあります

開業当初、仲村さんたちが直面したのは、想像を遥かに超えるサビの問題だ。

沖縄都市モノレール 車両課 仲村喜代志 課長:
沖縄はサビとの闘いということもあり、最初は本当に大変でした

高温多湿の気候に加え、頻繁にやって来る台風に伴う塩害などにより、鉄がさびやすいという沖縄ならではの難しさがあった。

沖縄都市モノレール 車両課 仲村喜代志 課長:
開業前から、先輩の事業者である東京モノレールから指導者が来て、検査のやり方や考え方を指導いただきました。しばらくしたら(指導者の方は)帰られるので、そこからが本当の闘いでした。教わる人がいないということで、自分たちでいろいろ考えながら、他の事業者に相談しながら何とかやってこられました

先輩方の背中を見て、若き技術者も日々奮闘している。

入社5年目の大城恭輔さん:
モノレール自体専門的な知識が多くて…

普段、乗客と顔を合わせることの少ないこの仕事だが…

入社5年目の大城恭輔さん:
普段、お客さんがいない空っぽの車両に乗っているので、お客さんが通勤や帰りで寝てしまっているようなところを見ると、ちゃんと快適な環境を作れているんだなとやりがいに感じます。普段はあまり(お客さんに)会わないけど、これからも「縁の下の力持ち」というのを頭に入れながら頑張っていきたいと思います

3両編成で利便性・快適性のさらなる向上へ

県民の足を支え続け20年。

その裏には、県民や観光客の安全と快適な移動のために汗を流す技術者たちの姿があった。

そして、長年にわたる準備を終え、出番を待ち構えている3両編成の新しい車両。

混雑の緩和、増加する観光客への対応など利便性・快適性のさらなる向上に応える。

多くの県民の期待を乗せ、2023年8月10日、運行を開始した。

沖縄テレビ
沖縄テレビ

沖縄の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。