熊本市のえがお健康スタジアムで「第50回記念くまもとマーチングフェスティバル」が開催される。第1回から連続出場する熊本県立熊本工業高校吹奏楽部、そして50年以上に渡って指導する原幸雄コーチを取材した。
小学生の頃から熊工吹奏楽部に憧れ…
8月12日に開催される「第50回記念くまもとフェスティバル」の出場に向けて、熊本県立熊本工業高校吹奏楽部は練習に励んでいた。

7月下旬に熊本県吹奏楽コンクールが終わったばかりで、動きのコンテが決まったのは数日前だといい、上級生からは隊列の並びについて指導が入っていた。
吹奏楽部・北里莉玖部長:
「スカードという5人くらいのグループに分かれて一つ一つ動きを覚えて通している状態です。練習は厳しいですけれども、見てくださる方が「すごかった」と言ってくださるので、そういうときにやっていてよかったと思います

北里莉玖部長は、小学5年生のときに「くまもとマーチングフェスティバル」で熊工のマーチングを初めて見て、とても感動したという。
吹奏楽部・北里莉玖部長:
小学生の頃から熊本工業でマーチングをしたいと思っていて、50回という記念すべきマーチングフェスティバルに出ることはとても光栄に感じています
女子部員も太い声で「オゥッ!」
「男性的」といわれてきた熊工マーチング、以前は太いかけ声を強調するため、細い声の女子は口パクだった。

しかし現在、女子部員の数は男子の2倍以上。今では女子も太い声で「オゥッ!」かけ声を出すようになり、男子に負けないかなり太い声だ。

吹奏楽部・宮川ひなの副部長:
気合が入るので、結構みんな元気に好きにやっています。中学2年生のときに定期演奏会で熊工の演技とかを見て「ああ、ここ行きたいな」と。憧れみたいな存在だったところに自分がいるのがまだ信じられないというか、この中に自分がいるんだなと

厳しい暑さのもとでの練習には塩分を多めに取ったり、仮眠したりと体調管理が重要だ。
熊工吹奏楽部の“名コーチ”
この熊工吹奏楽部を50年以上にわたって指導している男性がいる。熊工吹奏楽部のOBで、71歳の原幸雄コーチだ。

原さんは子供の頃から音楽が大好きで、吹奏楽部で青春を謳歌(おうか)した。1971年に卒業し、就職した静岡の楽器メーカーの吹奏楽団でマーチングに出合った。
原幸雄さん(2002年取材):
まだ、その当時は日本でそんなにマーチングをやっていなくて、これはもう母校の後輩たちに教えてあげたいという気持ちになったものですから、その頃、夜行列車に揺られて何回か(熊本に)帰って指導していたわけです

楽器をかけるひもはズボンのベルトから、衣装は学生服から自分たちで作った。そして、熊工吹奏楽部第8回定期演奏会のステージでマーチングを初めて披露し、やがて原さんは楽器メーカーを退職して、後輩たちの指導に専念するようになった。

原幸雄さん(2000年取材):
(マーチングで大事なことは)仲間を大切にすることです。それができていないとやはりいい音楽もできないし、マーチングのチームプレイもできないと思うんです。だからまずそこから技術指導の前に徹底してやります
1974年、第1回の「くまもとマーチングフェスティバル」から熊工吹奏楽部はこれまで連続出場している。

原幸雄さん:
連続で出場している団体は2団体しかないんです。熊工と菊陽中学校と。先輩方が築いてこられたものをなんとか自分たちが守り抜きたいという、そんな思いもあると思いますので、とても張り切って練習しています
“後輩たちと共に”憧れを形に
原幸雄さん:
子供たちはコンテ(動き)を覚えるのが早いですね。こちらが一晩中苦労して書いたコンテを明くる日30分で覚えているというちょっと複雑な心境になりますけどですね。“もうちょっと苦労して覚えてくれよ”という感じです

50年以上にわたって母校の後輩を支える原さんが熊工吹奏楽部に入った理由は、中学生のとき、その定期演奏会を聴いて心を動かされたからだった。憧れを形にしてきたのは後輩たちだけではなかったのだ。

2019年8月に行われた第46回くまもとマーチングフェスティバルで、手伝いに来ていた熊工吹奏楽部の卒業生たちに原さんについて聞いた。

マーチングフェスティバルを手伝う熊工吹奏楽部の卒業生たち:
(部員の)やりたいことを優先というか、こっちの気持ち優先でしてくださるから。優しいです。なんかもう、おじいちゃん的な
原さんの娘・優子さんも指導者に
原さんの一人娘、優子さんも熊工吹奏楽部で指導を受けた一人だ。優子さんは吹奏楽部の指導を手伝っている。

原さんの娘で打楽器を指導 大窪優子さん:
「もう家ではきつそうにしていて「もう若い者に任せる」とか毎日言っているけれど、指導し始めたら、「並ばんか!」とか言っている。元気にしていますよね。「親子で、親子で」と言われるんですが、私もマーチングの指導の勉強をずっとしているから、尊敬する指導者として原さんの作りたいように私は打楽器なので「こうして」と言われたら、それに必死に応えて、もっと良くしていこうという感じでやっています

原幸雄さん:
この「マーチングフェスティバル」を見て、熊工でマーチングやりたいという子供さんも増えてきました。子供たちのパワーをもらってください。(観客を)満足させる演技にしたいと張り切っていますのでよろしくお願いします

伝統の熊工マーチング、憧れを形にしてきた若者たちの情熱あふれる晴れ舞台となる「第50回記念くまもとマーチングフェスティバル」は熊本市のえがお健康スタジアムで8月12日に開演。今回はスペシャルゲストとしてナオト・インティライミさんとLeolaさんが登場する。
(テレビ熊本)