関西電力の森社長が、注目されている中間貯蔵施設に関する調査計画について、初めて取材に応じた。国が進める「原発再稼働」に欠かせない「中間貯蔵施設」の行方は、今後どうなるのか。
関電社長「中間貯蔵施設問題」取材に応じる
関西電力では、原発を動かすことで発生する、放射線量の高い「使用済み核燃料」を一時的に保管する「中間貯蔵施設」の候補地がなかなか見つからず、長年頭を悩ませてきた。
こうした中、突如打ち出されたのは、中国電力と共同で山口県内に中間貯蔵施設を建設できないか調査に乗り出す計画だ。
この記事の画像(8枚)関西電力・森望社長:
(山口県)上関ということで、中国電力から申し入れをしていただいて我々と共同でということで調査の申し入れの段階ですが、引き続き必要な搬出容量の確保のためにあらゆる可能性を求めて全力で取り組みをしてまいります
森社長が協力の意向を示した山口県上関町での中間貯蔵施設設置に向けた中国電力との共同調査。
8月2日、中国電力の幹部は町長に正式に提案した。
中国電力の会見:
当社単独での建設・運営は難しいと判断し、関西電力との共同開発を前提に、具体的な計画の検討を進めていきたい
「使用済み核燃料」新たな保管先の確保が課題
関西電力がこの計画に積極的な理由とは、原発で使い終わった燃料「使用済み核燃料」の保管先が足りなく、政府は、これを処理して再使用する「核燃料サイクル」の実現を掲げていますが、青森県六ヶ所村の再処理工場は未完成だ。
そのため現在「使用済み核燃料」は、原発内にある「核燃料プール」に一時的に保管されているがこの容量に限界が見え始めているのだ。
岸田政権が原発の再稼働を進める中、関西電力では、9月には管内の原発7基すべてが稼働する。そのため今後は、今以上のペースで「使用済み核燃料」が増え続け、「核燃料プール」は、およそ4年半から7年後には満杯になってしまうのだ。
関西電力にとって、行き場をなくしてしまう「使用済み核燃料」を一時的に保管する「中間貯蔵施設」の確保は喫緊の課題だ。
福井県は「県外」につくるよう求める
中国電力との計画が実現すれば、関西電力が、新たな保管先を確保できる可能性がある。さらに、関西電力がこの計画に“乗っかりたい”理由が、その「場所」だ。
現在、関西電力のすべての原子力発電所をかかえている福井県は、中間貯蔵施設を「県外」につくるよう求めてきた。
福井県・西川一誠知事(2017年当時):
福井県は、発電は引き受けたが、使用済み燃料の貯蔵、処分まで引き受ける義務や義理はない
関電側は「2023年までに福井県外の候補地を確定させられなければ、運転開始から40年を超える美浜原発3号機や高浜原発1・2号機の再稼働をしない」と、自ら「最終締め切り」を設定した。
関西電力・森本孝社長(2021年当時):
不退転の覚悟で臨みたい
「最終締め切り」まで半年に迫った6月。
関西電力は「高浜原発にある使用済み核燃料200トンをフランスに搬出する」計画を打ち出し、”ひとまず約束を果たした”としたが、これは、美浜・大飯・高浜の各原発で保管されている使用済み核燃料のわずか5パーセント程度だ。
福井県議会や地元からは「根本的な解決になっていない」と不満の声が出ています。そんな中、山口県上関町にという提案はまさに“渡りに船”だ。
関西の電気を担う原発の放置できないこの「使用済み核燃料」問題、今後どうなるのか。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月9日放送)