「最低賃金」が注目を集めている。2023年度は“時給1000円超”が実現するのかが焦点となっていて、7月28日、国の審議会は最低賃金(時給)を1002円とすると決めた。41円アップは過去最大の引き上げ額となる。この決定は私たちの暮らしや景気にどのように波及するのか。

現在の全国平均は時給961円だが…

7月28日午前から労働者側、雇用者側が出席して始まったのは、最低賃金に関する審議会。
最低賃金は、企業が労働者に最低限支払わなければならない賃金で、毎年、審議会で引き上げの「目安」を決めている。

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その後、都道府県ごとに金額が決められ、現在の全国平均は時給961円だ。岸田首相は「全国平均で時給1000円を達成すること」を掲げていて、2023年度にそれが達成されるか、そこが焦点となっていた。

パート頼みのスーパーの経営者にとっては頭が痛い問題

この問題は7月26日の審議会で結論が出る予定だった。しかし、労働者側が物価高騰を背景に大幅な引き上げを求めたのに対し、経営者側は中小企業の「支払い能力」に配慮を求め、約9時間の議論の末、決定持ち越しとなる異例の展開となっていた。

28日も午前10時から審議が行われていたが、午後5時過ぎ、全国平均を41円引き上げて1002円とすることを決定した。過去最大の引き上げとなる。

最低賃金が1000円を超えたことで、企業側にはどれくらい負担が増えるのだろうか。200人以上のパート従業員を雇っているスーパーの経営者は…

フレッシュマーケットアオイ・内田寿仁社長:
年々最低賃金も上がっていっていて、人件費も年々高くなっているので、経営としては非常にやりづらくなっているのは実情です。パートさんの働きにすごく依存しているところがございますので、(最低賃金)20円アップでも年間何百万というコストアップになってしまいます。その分、どうにか収益を上げたいと思っていますが、価格競争が激しい業界で値段を上げる難しさがあり、頭を抱えているのが実情です

時給1000円超でも“追い付かない”業種も

一方、過去最大の引き上げとなり、最低賃金1000円超が実現しても、不十分だと考えている人もいる。大阪労連が訴えるのは、全国一律1500円以上の最低賃金だ。

福祉関係の仕事をしている組合員:
今の時給じゃ生活マイナスですからね。しんどいけどやりがいはあるんです、好きなんです。けど気持ちが途切れてしまうというかね。楽な仕事じゃないですし。処遇をよくしてくれないと、担い手が本当にいなくなってしまう

それでも「物価高」には追い付かない

京都市内に住むシングルマザー。時給1060円と現在の最低賃金を上回ってはいるが、手取り約13万円で食べ盛りの高校生の息子2人を育てるには、物価が高すぎるという。

2人の息子がいるシングルマザー:
厳しいです。子どもたちが男の子なんですけど、揚げ物とかお肉とかが大好きで食費が一気に上がったなと感じます

今回の最低賃金引き上げについて、「一つの物が100円近く値上がりしている中で時給が30円上がっても、全然追いつかない。全然生活は楽にならないと思います」と話す。

28日に合意に至った最低賃金の引き上げ。

初めての「時給1000円台」は今後、私たちの暮らしや景気にどのように影響するのか。

(関西テレビ「newsランナー」7月28日放送)

関西テレビ
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