新型コロナが5類に移行してから再び感染が拡大していることに加え、熱中症や事故などによる急患搬送が増えたことで沖縄では医療体制がひっ迫している。
連日患者が運び込まれ、対応に追われる救急医療の現場を取材した。
コロナ専用病床は常に満床の状態
友愛医療センター 山内素直 医師:
先ほど、84歳の高齢女性が来まして抗原検査で陽性でした。自宅に帰る前提で救急要請を受け入れたのですが、来てみたら酸素が悪いので、もしかしたら入院が必要になるかもしれません
豊見城市の友愛医療センターで救急医を務める山内素直医師。

新型コロナの感染症法上の位置付けが、2023年5月から季節性インフルエンザと同じ5類に位置付けられた。
県内では感染者が急増し、友愛医療センターでも15床あるコロナ専用病床は常に満床の状態だ。

また、救急にも発熱して新型コロナへの感染に不安を抱えた人が訪れたり、抗原検査などで陽性と診断された人が運び込まれることが増えている。
友愛医療センター 山内素直 医師:
5月後半、6月になってきてから、どんどんコロナの患者さんが発生してくるにしたがって、5類になったという点でも救急医療のひっ迫の理由になっているところが見えてきて、それに現場で対応しているところです
他の病院で断られた人の受け入れ要請がひっきりなしに
心筋梗塞などといった一般の救急患者に加え、行動制限がなくなったことで熱中症や事故による搬送が増え、HCU(高度治療室)も満床が続いている。

友愛医療センター 山内素直 医師:
コロナ以外にも、けがや急な病気の患者さんが増えてきて、ますます救急医療がひっ迫していくんじゃないかなとすごく不安に思っています
取材を始めておよそ50分が経過した午前8時48分。

友愛医療センター 山内素直 医師:
コロナ患者さん。40代の患者さんで、胸と背中が痛くて息も苦しい。近くの病院があったが受け入れを断られて、こちらに来ます
取材を始めて最初の救急の受け入れ要請は、他の病院で受け入れを断られた新型コロナ患者の受け入れだった。 そのおよそ10分後… 新型コロナと診断された人や、疑いのある人が立て続けに運ばれてきた。

友愛医療センター 山内素直 医師:
熱があるのでクリニックに行ったら抗原検査で陽性になり、救急の受け入れをことごとく断られ、ウチで6件目か7件目の要請だそうです。今から20分かけてこちらに来ます
取材を始めておよそ1時間半の間で3人を受け入れた。

このうち2人は他の病院での受け入れを断られた人だった。
受け入れたくても、受け入れることができない
その後、午前9時40分には、小さな子どもの受け入れ要請が入った。

友愛医療センター 山内素直 医師:
小児担当の先生に問い合わせます。受け入れ大丈夫かの確認をします
友愛医療センター 山内素直 医師:
小児科が対応できないと言っていましたので受け入れは断りました
受け入れたくても受け入れることができない。 いま、沖縄の救急医療の現場で起きている実態だ。

医療が必要な人に行き届かない状態が再び起こっている
県によると、2023年4月から7月2日までの救急の出動件数は2万5030件で、このうち1472件はコロナ関連の出動だという。

2022年の同じ時期の救急出動件数2万1328件を上回っている。(一般:1万8416件、コロナ:2912件) さらに、救急患者の受け入れに要請が20回を超えるケースが確認されたり、中部地区の患者が南部地区の病院に運ばれ、またその逆のケースもあるなど県全体で医療体制がひっ迫している。

友愛医療センター 山内素直 医師:
南部医療圏、あと沖縄県全体で救急患者さんやコロナの患者さんもそうですし、コロナではない患者の受け入れもかなり厳しくなっていて、第7波の時にあったような医療が今すぐ必要な方に提供できないような状況になっていると思います

山内医師は必要な医療を必要としている人に提供するため、県民に感染対策の意識を持ってほしいと呼びかける。
友愛医療センター 山内素直 医師:
実際、医療現場はひっ迫していて、本当に医療が必要な人に医療が行き届かない状態がまた起こっています。ですので、自分の身の回りで起こっている現実というのを知ってもらい、いま一度、意識や危機感を持ってほしいと思います
綱渡りのような状況がいつ収束するか見通せず、医療現場は瀬戸際まで追いつめられようとしている。 私たち自身や大切な人の命と直結する問題だと、今こそ一人ひとりが認識しなければならない。
(沖縄テレビ)