北朝鮮が試験発射した「火星18型」大陸間弾道ミサイルをめぐり、アメリカ軍が前例のない動きを見せた。最新映像から分析する。

「火星18」発射前後に異例の動き

7月12日、アメリカ空軍横田基地にB-52H戦略爆撃機が突然飛来した。

映像提供:Mayumiさん
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B-52Hが横田基地に着陸したのは、約30年ぶりのことだった。

一方、この20分ほど前には、北朝鮮が「火星18型」大陸間弾道ミサイルの2回目の試験発射をした。

さらに、この前日の11日には、 青森県の三沢基地でアメリカ空軍のB-1B大型爆撃機2機が着陸する様子をFNNのカメラが捉えていた。 

2機がそろって日本に着陸するのは前例がなく、アメリカ空軍は今回の展開について、大量の爆弾とミサイルを搭載する長距離爆撃機の乗員をさまざまな地域や作戦に慣れさせるためだと説明した。

結果的に、火星18の発射に前後して、アメリカ空軍の大型爆撃機3機が日本に展開するという、これまでにない事態になった。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
過去最長の74分間にわたる飛行をした火星18は、アメリカ全土を射程とする大陸間弾道ミサイルですが、飛行途中でコースを変え、ミサイル防衛をかわしかねないミサイルです。
アメリカは、その開発を抑止しようと、日本に大型爆撃機を派遣したのかもしれません。それに構わず北朝鮮は試験発射しました。まるで、アメリカの抑止を無視しているかのようです。 

アメリカ空軍は、この発射翌日に改めてB-52H爆撃機を派遣し、日本、韓国と共同訓練を行うなど「対抗措置」を講じた。

ミサイルの性能分析は“力ずくでも妨害”

いまだ“本当の力”が計り知れない北朝鮮。

アメリカ軍はミサイルの性能を探るため、コブラボール弾道ミサイル発射監視機など、特殊な偵察機を出動させているが、金正恩総書記の妹・与正氏は、アメリカ軍の偵察機が「わが方の経済水域を侵犯するときには、断固たる行動で対応する」との談話を発表した。

能勢伸之フジテレビ上席解説委員:
実際これまでに、兵器を装備できないコブラボールが日本海上空で監視活動中に、北朝鮮の戦闘機に約20メートルまで異常接近され、威嚇をうけたことがあります。
実力行使をいとわない北朝鮮が、アメリカ軍の抑止を無視する一方、北朝鮮自身のミサイルの性能分析は力ずくでも妨害するとなると、日本にとっても、日本を射程とするミサイルの性能が分からないという重要課題を突き付けられることになりかねません。

アメリカの強力な「抑止」を見せつけられても、強気な北朝鮮。日本の安全保障が脅かされている。

(「イット!7月16日放送より)

イット!
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能勢伸之
能勢伸之

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フジテレビ報道局上席解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。