本物そっくり、リアルな魚を描く、鳥取市の中学生。12歳にして絵だけでなく、釣りや魚をさばくのも大人顔負けの腕前という“鳥取のさかなクン”の「さかな愛」あふれる日常をのぞいてみた。
「用瀬のさかなクン」がすごい
鳥取市用瀬町。友だちと下校してきたのが「鳥取のさかなクン」こと、竹村悠(はる)くん(12)。中学1年生だ。

帰宅するなり、学生服を脱ぎ捨て、大きく魚が描かれたTシャツに袖を通す。そして、釣り用のハットをかぶって「準備完了」!

家を飛び出し、自宅近くの小さな近くの川に向かった。ここで釣りをするのが、放課後のルーティーンだ。
友だち:
さかなくん、魚釣れた?
竹村悠くん:
まだ何も釣れてないわ。ヤマメ釣りたいけどな
悠くんは、友だちも「さかなくん」と声をかけるほどの自他ともに認める「魚オタク」だ。

「あ、きたきたきたきた。きとる、きとる、きとる、きとる」と獲物を見つけ、テンションが上がる。そんな悠くんに、友だちも思わず、「魚のことしか考えてない」とつぶやいた。

最近は「用瀬のさかなクン」と呼ばれているそうだ。悠くんの「魚オタク」の才能が発揮されるのは、釣りだけではない。

竹村悠くん:
これ全部ぼくが描いた。すごいでしょ

ブラックバスに、スズキ、ヤマメ。筆ペンをつかって、超リアル、本物そっくりに描かれている。

イラストも交え、これまでに釣った魚のことや、その日の天気、海の状況などを「釣り日記」にまとめている。

さらに、中学生とは思えない見事な包丁さばき。マトウダイをさばいて、お造りに。

初めて魚をさばいたのは、小学校5年生のとき。それから2年ほどで、200匹以上をさばいたという。

さばいた魚や作った料理のレシピをノートにまとめていた。
“おさかな師匠”のもとへ
そんな「魚オタク」悠くんがこの日向かったのは、鳥取市佐治町。「魚オタク」のきっかけにもなった、師匠ともいえる人物に会うためだ。

竹村悠くん:
じいちゃん家の近くの佐治川に、ヤマメとイワナを釣りに行こうかなと思って。結構、イワナが群れている場所があったので、釣れたらいいなぁ。小さくてもいいんよ。何か釣れたらいいんよ
師匠とは、祖父の豊さん(67)のこと。期待に胸を膨らませながら、豊さんの家に到着した。
竹村悠くん:
じいちゃん、魚釣りに来たよ~

悠くんが魚に夢中になったきっかけは、9歳のころ、豊さんと一緒に行った海釣り。今でも、月に1度は、一緒に釣り糸を垂れるという。

竹村悠くん:
きた、きた、きた、きた。イワナじゃない、アブラハヤ!釣れた!
時がたつのも忘れて魚に夢中の悠くん。今も、豊さんのこんな言葉が胸に残っていた。

祖父・竹村豊さん:
やっぱり少なくなっている気はするね。放流はされているんだけど、ヤマメやイワナなどの渓流魚は少なくなっているかも。

鳥取県内でも、清流を好むヤマメやイワナなどが年々少なくなっている…大好きな豊さんと釣りに行くうち、“自然や環境を守りたい”という気持ちが芽生えてきたそうだ。

竹村悠くん:
将来、佐治町でヤマメの養殖をして、たくさんの人に料理を提供したい。おじいちゃんが好きだし、佐治の川もとてもきれいだから、そのきれいな川で育ったヤマメをたくさんの人に食べてほしい

祖父 竹村豊さん:
佐治町に住む立場としては大変うれしい。悠くんが二十歳になったとき、さばいてくれた姿造りで一緒に一杯飲むのが楽しみ

「魚オタク」の悠くんが次にやりたいのは、「おさかな図鑑」の製作。得意のイラストと豊富な知識、あふれる「さかな愛」を形にして、多くの人が地元の自然や環境について考えるきっかけをつくろうと考えている。

10年後もヤマメが住めるきれいな川であってほしい。“鳥取のさかなクン”は、ふるさとの川で、ふるさとの未来を見つめている。
(TSKさんいん中央テレビ)