国が世界文化遺産への推薦を調整している奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」と滋賀県の「彦根城」の2つについて、4日、国の審議会が、推薦に向けた課題を公表した。

彦根城と飛鳥・藤原 世界遺産推薦へ

まずは、奈良県にある「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」。

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天皇の宮殿跡である飛鳥宮跡や藤原宮跡のほか、「飛鳥美人」の壁画で知られる高松塚古墳など、およそ20の遺産で構成。2007年に世界文化遺産の候補地として暫定リストに記載された。

今回、国の審議会が課題として提示したのは「世界遺産登録の要件となる資産の保護が十分でないものがある」など5点。

国は早ければ、来年の推薦に向けて、引き続き対応を進めることになった。

奈良県明日香村・森川裕一村長:
越えるべきハードルの大きさをはっきり示していただいた。これからだなというのが私の実感

一方、一歩踏み出したのが、滋賀県の彦根城。

世界遺産委員会の諮問機関、「イコモス」に専門的な助言を受けることができる「事前評価制度」を活用し、調整を進めることになったのだ。

「彦根城」は、世界文化遺産の候補地として暫定リストに記載されてから30年以上がたっていて、登録されれば、地元にとって長年の悲願達成となる

彦根城の魅力を「ひこにゃん」が詳しく解説

この「彦根城」、一体何が魅力で、世界遺産への登録に向けて動きだすことになったのか。 大人気ご当地キャラクター、「ひこにゃん」が、彦根城から詳しく解説してくれる。

坂元龍斗キャスター:
ひこにゃんが来てくれました!よろしくお願いします

ひこにゃん:
♪リンリンリンリン(鈴の音)

坂元龍斗キャスター:
そして、ひこにゃんの伝えたいことを代弁してくれる彦根市文化財課の小林隆さんです。よろしくお願いします。まずは、今回、政府は「事前評価」という制度を利用して、彦根城の世界遺産への推薦を目指すことを明らかにしました。どう受け止めていますか?

彦根市文化財課 小林隆さん:
彦根城の世界遺産登録は彦根市民の30年以上にも及ぶ悲願でした。もうだめかな…と思う市民もいる中での、「事前評価」を受けさせていただくという発表があったきょうは、彦根市民にとって、とてもうれしい1日だったと思います

坂元龍斗キャスター:
この記念すべき日に、もっと彦根城を知ってもらいたいと思います。題して「ひこにゃんとお城を知ろう」のコーナー! ひこにゃんと小林さんが皆さんに伝えたいことがこちらです

「先入観を改めて」

彦根市文化財課 小林隆さん:
お城というと、戦いの場所だと思う人が多いと思います。このお堀は敵が攻めてくるのを防ぐ施設だとか、このやぐらから矢を射かけて敵を倒すとか、そうイメージでお城を楽しんでおられる方が多いと思います。でもそれは戦国時代までのお城のイメージです。江戸時代のお城で戦いが行われたことはほとんどありません。彦根城でも戦いはありませんでした

彦根市文化財課 小林隆さん:
では彦根城で何が行われていたかというと、世の中が平和になるような政治が行われていました。大名と重臣たちが話し合いを行いながら、政治をしていました。この様子を見た領民たちは、きょうも安心して暮らせる、明日も安心して仕事ができると、感じたそうです。人々の心の支えとなり、平和の象徴となったのが江戸時代のお城です

坂元龍斗キャスター:
では、お堀も、敵から城を守るためのものではないと?

彦根市文化財課 小林隆さん:
そうです。お堀も、ここから内側に「みんなを守ってくれる政府がありますよ」ということを示す区画だったということです。イメージが違いますよね。先入観変えてくださいね

お城は平和の象徴ということで、確かに一般的なイメージでは語れないものがある。そんな彦根城の中の「おすすめスポット」を紹介してもらった。

彦根市文化財課 小林隆さん:
今、中継を行っているこの場所、『玄宮園』に是非立ち寄って欲しいと思います

坂元龍斗キャスター:
この庭園が注目スポットというのはなぜですか

彦根市文化財課 小林隆さん:
奥に数寄屋づくりの茶室があり、周辺に池や緑がたくさんあります。それを遠くからお城の天守が見守っている。お城が見守る、のどかで平和的な風景。これが玄宮園の醍醐味で、江戸時代のお殿様がこういう世の中を維持しようと思った、理想の風景だからです

坂元龍斗キャスター:
まさに、美しくて心が落ち着く場所ですね

坂元龍斗キャスター:
では、彦根城の周りのおすすめスポットは?

彦根市文化財課 小林隆さん:
世界遺産の登録を目指しているのは、天守だけではなく、中堀から内側全てです。中堀沿いにはビュースポットがたくさんあるんですが、とくに「いろは松」と言われているビュースポットの出発点「彦根キャッスルリゾート&スパ」というホテルの前から見る彦根城はいいですよ。中堀を手前にして、重要文化財となっているいくつかのやぐらが見え、その向こうに国宝の天守が見えて、壮観な風景です

坂元龍斗キャスター:
この後、世界遺産登録に向けてどのような取り組みを進めますか

彦根市文化財課 小林隆さん:
まずは、事前評価のための書類をしっかり作って海外の皆様にも彦根城は素晴らしいお城だと認めてもらうことが一つ。もう一つは、市民としても彦根に来て下さるお客様に心からのおもてなしをして、彦根っていいところだな、また来たいなと思っていただくようにしたいと思います

「世界遺産」推薦への流れ

ここで改めて、滋賀県の「彦根城」と奈良県の「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)」について、世界遺産推薦に向けた流れを確認する

まず、「彦根城」は、城の価値。城の着工は江戸時代に入ったばかりの1604年。当時の姿を残した天守は国宝に指定されていて、庭園や城下町の環境もよく残っているので江戸時代の政治や文化などがよく分かるということだ

奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」のすごさは歴史。およそ1300年前の宮殿跡など貴重な遺跡で構成されていて、「日本国」誕生のルーツがここにある。

世界文化遺産登録までの道のりだが、まず、国が自国の遺産をユネスコに推薦。いま話題になっている2つはこの推薦に向けた準備段階だ。

 推薦された遺産については、ユネスコの諮問機関イコモスによる学術調査・審査が行われ、ユネスコの世界遺産委員会が登録するか否かを決定する。

世界遺産総合研究所の古田所長は「どちらも歴史的な価値・周辺環境は素晴らしいが、他の世界遺産とは違う独自性をどう示せるかがポイント」と話している。

(関西テレビ「newsランナー」2023年7月4日放送)

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