馬毛島での自衛隊基地の整備や、海上自衛隊鹿屋航空基地へのアメリカ軍の無人偵察機の配備など、鹿児島県内でも中国軍を意識した国防に関わる動きが進んでいる。そんな中、将来国防の先頭に立つかもしれない陸上自衛隊の新入隊員の訓練漬けの日々に密着した。

自衛官候補生の訓練とは

鹿児島・霧島市の陸上自衛隊福山演習場で、5月に行われた戦闘訓練。受けているのは、霧島市の陸上自衛隊国分駐屯地に属する第12普通科連隊に2023年4月に入隊した自衛官候補生、33人。いずれも鹿児島県出身の18歳から29歳までの若者だ。

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数百メートル先の敵陣地の奪取のための戦闘訓練は、陸上自衛官としての基本動作が詰まっている。過酷な訓練は、入隊後3カ月間続く。

新入隊員の起床は午前6時。規則により、それより早く目覚めても活動してはならない。屋上での点呼のあと走って向かう先は隊員食堂。厳しい訓練に耐えられるよう朝食は食欲がなくても必ずとる。

自衛官候補生:
朝はそんなに食べられないけど、食べないと動けないので

朝食後、定期的に行われる体力検定。候補生には腕立て伏せや腹筋の回数の到達目標が課され、訓練期間中のクリアが求められる。3,000メートル走は15分45秒以内でゴールしなければならない。

ある自衛官候補生は「入隊当初よりは全然今の方が体力は上がっています」と胸を張った。

「自衛官候補生」は入隊員数を増やそうと2010年に導入された制度で、従来の「一般曹候補生」とは異なり、2年間に任期が限られている。なぜ自衛官候補生を選んだのか聞いてみた。

自衛隊候補生:
自分は自衛官を続けるかまだはっきりしないので、任期制の自衛隊にとりあえず入って、自衛隊を続けるということを決めたら陸曹になって続けていこうと思う

自衛官候補生:
もし自衛隊をやめる時も一般企業への道があるし、若いうちにお金がもらえてそこから色々なことができると思い、自衛官候補生になることを決めました

蒸し暑さも体力奪う…続く厳しい訓練

訓練のヤマ場は3日間の総合訓練。

まずは霧島演習場内を歩く、25km行進訓練。装備は小銃、防護マスク、弾倉、背のう。重さは約20kgにもなる。

上り下りが連続するコースを、体力を温存したまま決められた時間でゴールする。実際の作戦なら移動後に任務があるため、体力を温存する必要があるのだ。しかし、蒸し暑さが容赦なく体力を奪う。

救護隊員に「このまま行った方がいい。クリームだけ塗ろうか」と声をかけられた候補生。足を痛めていた。

「わかりました」足の痛みに耐えながら行進は続き、出発から約8時間、最後は連隊歌を歌いながらゴール。候補生たちの顔には達成感がにじんでいた。

別の日の空砲を使った訓練。「入れ間違えるな」という教官の声。「よっし!」と声を出す候補生。空砲とはいえ火薬を使用するため緊張が高まる。

銃口が向く先の管理や銃の扱いに手こずりながらも、敵陣の奪取に成功した。

こうした訓練が進む中、6月14日、岐阜県の射撃場で起こった自衛官候補生による銃の発砲事件は、候補生に武器を扱う責任の重さを改めて思い知らせたようだ。

自衛官候補生:
自分が武器を持つことにより、自分の身を守るのはもちろん、仲間や大切な家族、国民の命を守れると思っているので、そこは慎重に扱いたい

一人も欠けることなく修了式

そして迎えた6月24日の修了式。

自衛官候補生33人は誰一人欠けることなく、真っ黒に日焼けしたくましくなった顔をそれぞれの家族に見せていた。

このうち半数が国分駐屯地など鹿児島県内の部隊に配属され、7月1日付けで自衛官、2等陸士に任官される。任期が限られていない自衛官を目指すことを決めた候補生は…。

自衛隊候補生:
人のため周りの大切な人だけではなくより多くの人のためになるような自衛官になりたい。この3カ月間を通じて自分は自衛官でこれからもやっていきたいと思うようになりました

第12普通科連隊のトップ、古川琢弥連隊長は、自衛官候補生にもほかの自衛官と変わらないスキルが求められているとし、南九州の自衛隊の役割についてこう話した。

陸上自衛隊国分駐屯地 第12普通科連隊・古川琢弥連隊長:
何か事態が生起(発生)したときに対応できるよう、万全な準備が必要。九州の中で最南端にある国分の自衛隊は、最初に部隊を展開して対処するという、即応展開力が求められていると認識しています

国防をめぐる緊張が高まる中、自衛官を目指す若者たちがそれぞれの道を歩み出した。

(鹿児島テレビ)

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