鹿児島・鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地で、アメリカ軍の無人偵察機の運用が開始され、2023年5月で半年が経過した。約束の配備期間は1年。折り返しを迎える中、変わったこと、変わらないことを取材した。

米兵の“歩み寄る姿勢”に市民の印象にも変化が

「鹿屋市にアメリカ軍が駐留する」計画が浮上したのは、2022年1月。当初、市民からは不安の声が多く聞かれた。

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住民説明会に参加した市民(2022年1月):
断固反対です。子や孫に残してほしくない

2022年6月に開かれた住民説明会でも、参加した市民から「1年間と言ってもたぶん運用期間が延びる。そんなにアメリカは甘くない」との声があがった。

市民が不安を抱えるかたわらで、日米間で計画は着々と進められ、2022年11月、アメリカ軍の無人偵察機「MQ9」の運用が始まった。鹿屋航空基地には8機が配備され、これにともない、鹿児島県内では初めてアメリカ軍関係者が駐留することになった。

駐留開始直後から際だったのが、アメリカ兵の市民に“歩み寄る姿勢”だ。

無人機の運用直後に街で開かれたクリスマスマーケットの準備の様子を撮影した写真には、アメリカ兵の姿が。イベントの開催を聞きつけて、準備と撤収の手伝いを買って出たという。

クリスマスマーケットの責任者・隈崎和代さん: 
一生懸命、地域の人たちに関わろうとしている姿が、すごくうれしかったです

こうしたボランティアに、音楽会などイベントを通じて、市民とアメリカ兵の草の根の交流は、これまで定期的に行われてきたという。 駐留前と比べ、アメリカ軍に対する市民の印象も変わってきているようだ。

米軍が滞在しているホテル近くの住民:
マナーはよいのではないか。滞在するホテルの人に聞いたが、普通と変わらない。今のところ問題はないような気はするんですけどね

明らかにされていない米軍の行動

アメリカ兵が市民との交流を進める中、一向に変わらないのは、無人機に関する情報公開のあり方だ。

鹿児島テレビが鹿屋市に設置している情報カメラの5月20日の映像を分析してみた。

20日午後7時ごろの映像 滑走路から無人機が戻ってきた様子が確認できる
20日午後7時ごろの映像 滑走路から無人機が戻ってきた様子が確認できる

午前7時ごろ、無人機が画面右側からやってきた。この奥には滑走路があり、偵察から戻ってきたものとみられる。

20日午後4時半ごろの映像 画面右側 無人機が滑走路に向かう様子
20日午後4時半ごろの映像 画面右側 無人機が滑走路に向かう様子

午後4時ごろには無人機が滑走路側に向かい、離陸したとみられる。

その後も絶えず、行き来を繰り返す無人機。翌21日の午前1時ごろに着陸、午前4時半ごろには離陸したとみられ、夜中も格納庫の明かりが消えることはなかった。

アメリカ軍の行動に関することは「運用上の都合」を理由に、ほとんど明らかにされていない。

無人偵察機は、どんな任務を行っているのか?鹿屋航空基地の元トップで、2023年3月に自衛官を退官した中村敏弘氏はこう推測する。

中村敏弘氏(元鹿屋航空基地・第1航空群司令):
有人機である(自衛隊の)P1哨戒機が飛んでいない海域に、たぶん行っている。そこに、「きょう(中国軍の航空機が)飛んでいる」「きょう(中国軍の)船がいる」「どういう訓練を今している」などを、情報収集していると思う。これを連続的に情報収集することで、ある程度、彼ら(中国軍)の意図がわかる

――米軍の取ってきた情報は日本にも共有されている?

中村敏弘氏(元鹿屋航空基地・第1航空群司令):
MQ9が鹿屋基地に入ったことを契機に、(東京の)横田基地に情報を集約し、分析する組織を作っています

――この任務が鹿屋航空基地に引き継がれる可能性は?

中村敏弘氏(元鹿屋航空基地・第1航空群司令):
それはないと思う。ただ一方で、彼ら(米軍)が取ってきた情報というのがいかに有益かは、この1年間で自衛隊も認識するでしょうから、自衛隊が自ら(無人機を)運用するのは(将来的には)考えられる

拭えぬ不安も…

運用開始から、ちょうど半年となった5月21日。鹿屋市の海岸で行われた清掃活動にアメリカ兵が参加していた。

第319遠征偵察中隊 クリス・ライディン少佐:
私たちは配属先のどこへ行っても地域のために奉仕して友情を築き、私たちを受け入れてくれる地域の方々と絆を強くするための方法を見つけたい

市民にとっても、アメリカ兵が身近な存在になってきた感じのあるこの半年。しかし、事件や事故などの市民の不安が消えたわけではない。

鹿屋市民:
なければない方がよいが、“もし”という時に守ってくれるのかとか…そういうのも感じる

鹿屋市民:
(米軍関係者による)接触事故もあったようなので、その辺が心配

世界情勢が不安定な中で始まった無人機の運用。鹿屋の街を起点に、静かに、そして着実にその任務は続けられている。

無人偵察機の運用で公言されているのは、配備が1年間限定であることのみ。2023年11月にその約束は守られるのか、今後の焦点の一つといえそうだ。

(鹿児島テレビ)

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