「男の子よりイケメンになりたい」「ボーイッシュな服装に合わせたい」などと今、メンズカットを希望する女性が増えているという。
SNSの投稿をきっかけに人気に火が付いた、シャープな“刈り上げ”スタイルについて、女性客が殺到するメンズ美容室「LIPPS hair 渋谷」の石井里奈さんに聞いた。
男女の境がない時代
ーーメンズサロンに来る女性客の人数は?
以前は、もともと来てくださっていた1人のお客様以外はほぼゼロでした。
そのお客様のカットをインスタに載せたら、それがめちゃくちゃ反響あって、投稿後は、1日1人のペースで来るようになりました。

そこから毎回お客様の写真を撮って載せていたら、全部すごい反響で、最近だとリピートでメンズカットをする女性も増えています。
1日だいたい20人ほどカットしますが、女性客は少なくて3人、多い時は10人の日もあります。
ーー皆さん「メンズカット」を希望?
ここに来る女性客は、全員メンズカットを希望されます。
「なんでメンズカットしようとしたの?」とお客様に聞くと、「格好良くなりたい。女の子にモテたい」という子もいるし、服装がボーイッシュなものが多いからそれに合わせて髪形もメンズっぽい方が良いと思ったという方もいます。

ーーメンズカットの希望が増えている理由は?
今はジェンダーレスが流行っていて、男性もメイクやネイルをするし、ヒールも履く時代。
女性もかわいいやきれいだけではなくて、「女だけど格好良い」という、男女の境がない時代になっているのかなと思います。
「男の子よりイケメンになりたい」と言われたり、服装もボーイッシュなものを着ている人が多いです。
数年前まではなかった現象で、メイクもネイルもファッションも男女混合になってきていると思います。
メンズカットはシャープでタイト
多い日は10人もの女性客をカットする石井さん。
メンズカットの特徴である“シャープなシルエット”で、“かっこいい男の子”にすることを目指しているという。

ーーメンズカットの定義は?
私が思うのは、女の子のショートはやっぱり少し丸くて可愛らしい感じですが、メンズカットは、段をしっかり入れて、量もがっつり減らすので、シャープでタイトな感じになります。
段の入れ具合や量の減らし方でだいぶイメージが変わると思います。
私は男の子を格好良くするメンズカットをずっとしてきたので、それをそのまま女の子にもやっていて、可愛いではなく、格好良くするカットをしています。

ーー女性にとってメンズサロンも選択肢の1つに加わった?
そうですね。お客様からは、サロンを見つけた時に、「見たことのない感じだったからやってみたいと思った」と言われたりします。
女性向けの美容室でメンズカットをオーダーしても、絶対にちょっと可愛くされちゃうとか、「女の子だからやめた方がいいよ」と断られたという人も結構います。
「ガッツリやってくれるところを見付けて来ました」と言われることが多くて、仕上がり感が初めて見る感じのようです。
人気急上昇で予約を制限
好きなキャラクターや芸能人と同じ髪形にする「推し活」としてメンズカットをする人もいるという。
メンズカット人気が急上昇する中、石井さんは、1日の新規女性客の予約数を制限し、一人ひとりの髪質に合ったきめ細やかな対応がとれる体制に切り替えたと話す。

ーー男性客と女性客ではカットの仕方は違う?
男女とも同じですが、女性の方が頭が小さかったり、ロングから切ると重さで頭頂部がペタッとしたりするので、そこを工夫して切ります。最終的に目指すところは特に変わりません。
「遠慮せずにガッツリ男の子にしてください」と言われて、それを求めてくる方も多いので、男の子にするつもりで切っています。
ロングから切るのは勇気がいると思いますが、「別人みたいになるのがいい」「イメチェンになる」と言われます。

ーーメンズ美容室の傾向は?
増えています。
5年前に当店がオープンした時はあまりなかったのですが、今は多いです。
私はずっとメンズ専門で切っていますが、専門学校に通っていた時は、美容師は女の子を可愛くするというのが基本で、メンズ美容は全然進んでいませんでした。

「LIPPS hair」がメンズ向け美容室だということを知らずに、雰囲気が良かったのでここで働きたいと思って入ったら、こんなにもたくさんの髪型があることを知って、メンズカットは面白いと思ってそのまま続けています。
美容学生さんに聞いても、最近では「メンズをやりたい」と進む道を分けている子も多いです。

ーー心掛けていることは?
お客さま一人一人のカットにこだわりたいと思っています。
ロングからバッサリ切ると、生え癖が女の子なので、カットに時間がかかります。
昨年の夏、ほぼ全員が新規の女性客の日があって、みんなロングからメンズショートを希望で、もっと一人ひとりにこだわりたいと思って、そこから人数制限することにしました。
今は、新規の女性客は電話のみで予約をとって、重ならないようにして、一番こだわれる人数でやっています。