「相談支援専門員」という職業をご存じだろうか?相談支援専門員とは、障害のある人がさまざまな福祉サービスを利用できるようサポートする職種である。

例えば、子どもが障害があると診断された場合、保護者は保育園・幼稚園に通わせるのか、それとも児童発達支援施設などの福祉施設がいいのか、また、学校が終わったあとの放課後デイサービスはどこがいいの? など分からないことがあるだろう。そのようなとき、相談に乗ったり、適切な福祉サービスへつないだりするのが相談支援専門員の役割なのだ。

ただ、宮崎県内の福祉の現場を取材してみると、この相談支援専門員の数が十分ではないという課題が見えてきた。

障害者と福祉サービスをつなぐ存在の現状

三股町にある児童発達支援施設「たいよう」。ここには発達障害のある子どもたちが通い、集団生活に適応するため社会性を身につける訓練などを行う。

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児童発達支援 たいよう・温水智久総括:
(宮崎県は)言葉に特化した施設、運動、ソーシャルスキル、社会性を磨く施設だったり、いろんな施設があるので、子どもにあった施設を選べます

こういった施設を利用する際に必要となるのが「受給者証」だ。利用者は受給者証があれば、最大1割負担で施設を利用することができる。この受給者証の発行に大きく関わるのが「相談支援専門員」だ。

相談支援専門員が障害者本人やその家族との面談、福祉施設などと打ち合わせを行い、どのような福祉サービスを受けるべきなのか示した書類「利用計画案」を作る。この利用計画案を各自治体に提出することで、受給者証が発行される(利用計画書は自分で作ることもできるが、多くは相談支援専門員が作成する)。

この障害者と福祉サービスをつなぐ「相談支援専門員」が不足していると温水さんは話す。

児童発達支援 たいよう・温水智久総括:
役場に確認しても相談支援専門員が足りなくて、(利用希望者が)7~8人待たないといけないという状況が発生するんです

“サービスを受けたいのに受けられない“

このことをきっかけに温水さんは2023年3月、障害者が福祉サービスを受けるための窓口となる相談支援事業所「にじ」を立ち上げた。

相談支援専門員・塩田悦子さん:
相談業務がもういっぱいいっぱいです。(多いところは)100件以上持っていると思うんですけど…

三股町によると、町内の相談支援専門員の数は8人。利用者に対して、その数は足りていないという認識だった。宮崎県内すべての市町村に聞き取りしたところ、「足りている」と回答したのは4町村のみ。18市町村が「足りていない」と答えた。

県 障がい福祉課・松田隆則さん:
実際に相談支援専門員として従事できる条件を満たしている方がいらっしゃる中で、相談支援専門員に従事されていない方も結構な数いらっしゃると思っています

相談支援専門員として働く要件を満たしているものの、ほかの職種に務める人がいる。
その理由を聞いてみると…。

相談支援事業所 にじ・温水智久総括:
経営的な問題なんですけど、報酬単価が安い。単価が安くて相談員としての給料がなかなか払えない

例えば、利用計画案の作成にあたっての国などからの基本報酬は約1万6,000円。

ーー学校、病院、デイサービス、福祉課。これは全部聞き取りに?

相談支援専門員・塩田悦子さん:
はい。利用計画案を1枚作るためにどれだけ行かないといけないか…

“自分が相談した経験”が力に

そんな中、2022年に三股町で藤野亜由美さんという女性が相談支援事業所「あのん」を立ち上げた。

この日は、利用者が母親と相談に訪れていた。週に1回程度、情緒面などに障害がある斎藤さんの相談を受ける。

相談支援事業所 あのん・藤野亜由美さん:
出会ってから声を聞きたいと思って、ちょっと頑張って信頼関係築いていったら、ある日「うん、いいよ」って言ってくれて、「え~!」と思って…声を聞けたと思って

利用者の母親・斉藤規代さん:
一緒になって話を聞いてくれたり、子どもは安心して

藤野さんが相談支援専門員になろうと思ったのは、自閉症の子ども2人を育てた母親としての経験からだった。

相談支援事業所 あのん・藤野亜由美さん:
(相談支援専門員を知ったとき)「そんなのがあるんだ、じゃお願いします」と心強かったです。「こういう風に少人数で活動しているんです」と施設見学させてもらったときに、これで安心して育つかなという思いがありましたね。もっと何かしてあげれたのにという思いをするお父さんお母さんを減らしたいというのがあって、「こんなサービスがあるんだよ、こんなの受けたらいいんだよ」というものを発信していけたらいいなと思って始めました

そんな藤野さんが切に願うのは…。

相談支援事業所 あのん・藤野亜由美さん:
相談支援専門員が増えてほしい。仲間が欲しいですね

「同じ境遇の親の力に…」

「相談支援専門員」は、障害者と福祉サービスをつなぐ大切な仕事。障害を持った子どもたちが悩みにあった適切な発達支援を受けるというのは大切なことだ。

今回取材した塩田さんと藤野さんは、障害のある子どもを育てた経験があり、同じ境遇の親の力になりたいという使命感で働いていた。
取材を通して、そんな人に寄り添う待遇面での改善が求められることを感じた。

(テレビ宮崎)

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