沖縄戦などで犠牲となった24万人余りの名前が刻まれている平和の礎(いしじ)。2022年に続いて名前を読み上げる取組みが2023年の6月1日から始まり、沖縄に避難しているウクライナの人々が参加した。今なお続く戦争によって故郷を追われた人々は、何を思うのだろうか。

子どもたちが亡くなっている惨状がウクライナと重なる

2022年、ウクライナから避難してきたボロディミルさん一家。

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6月5日、支援者とともに平和の礎がある糸満市摩文仁(いとまんしまぶに)を訪れた。

沖縄ウクライナ難民救済協会 比嘉啓勝さん:
多くの民間人が亡くなり、沖縄戦当時の人口でいうと4人に1人が犠牲になったといわれています

ウクライナから避難しているボロディミルさん:
大変悲しい気持ちです。沖縄の人、軍人、そしてアメリカ軍の兵士など多くの人が犠牲になったことを目の当たりにしたようです

太平洋戦争で唯一の地上戦が繰り広げられ、県民の4人に1人が犠牲になったといわれた沖縄戦。

78年前の悲劇に思いをめぐらせ、故郷・ウクライナと重ね合わせた。

ウクライナから避難しているオレナさん:
沖縄で県民、兵士、そして子どもたちが亡くなっている惨状が、ウクライナと重なります

平和の礎には国籍や立場に関係なく、沖縄戦などで犠牲となった24万人余りの名前が刻まれているが、戦争による戸籍簿が消失し、名前の分からない犠牲者もいる。

沖縄ウクライナ難民救済協会 比嘉啓勝さん:
これは「島袋ウシャさんの娘」と記されていますね。おそらく赤ちゃんで、名前が授けられていなかったのか。ウシャは、母親の名前かもしれませんね

ウクライナから避難しているオレナさん:
平和の礎は、沖縄や日本、そしてアメリカなど戦争の犠牲となった全ての人々の悲しみを表していて、いま戦争が起きているウクライナ人の私にとって、歩くのは辛かったです

 ウクライナから避難しているボロディミルさん:
さまざまな人がこの取り組み(読み上げ)に理解を示すことで、平和な未来を構築する機会になっていると思う

平和を実現するために自分の力を尽くさなければいけない

この日に参加したのはボロディミルさんと同じく、2022年にウクライナから避難してきた3人のほか、読み上げのボランティアの大学生や交流のあるアメリカ人など、国籍・年齢もさまざま。

戦争がもたらす犠牲の大きさに向き合い、平和な世界を目指そうと心を一つに読み上げを始めた。

ウクライナから避難しているオレナさん:
久場良昌(りょうしょう)、19歳。屋宜せつ子、16歳。瑞慶覧朝清(ずけらんちょうせい)、20歳。久場良亀(りょうき)、56歳。久場良昌(りょうしょう)、18歳

ウクライナから避難しているオレナさん:
私は将来の世代のすべての人々に訴えたいと思います。平和を守りましょう

ウクライナから避難しているボロディミルさん:
大工廻(だくじゃく)チル、50歳。大工廻朝亀(ちょうき)、28歳。大工廻朝喜(ちょうき)、55歳。大工廻ハル子、18歳

 ウクライナから避難しているボロディミルさん:
彼ら(戦没者)は、人が持っている最も貴重なもの、つまり自分の命を差し出しました。彼らに大きな敬意を表します

ウクライナのハルコフに住むニコライさん:
戦争で犠牲になった人々を、私たちはいつでも覚えておかなければいけない。なぜなら私たちの祖先でもあり、かけがえのない人であるからです

 2022年にウクライナから沖縄に避難したソフィアさん:
神村盛樽(せいそん)、29歳。神村グジー、78歳。神村カツ子、3歳。神村盛光、0歳

2022年にウクライナから沖縄に避難したソフィアさん:
ひと言、戦争について言いたいです。亡くなった人々に敬意を払いつつ、彼らが平和な未来を願いながら命を捧げたことも理解をしなければいけません。しかし、現在も戦争が続いていますので、誰もが平和を実現するために、自分の力を尽くさなければいけません

平和は命であり、幸福であり、世界の人々に必要なもの

読み上げたのは340人。犠牲となった一人ひとりと、故郷・ウクライナに思いをはせた。

2022年にウクライナから沖縄に避難したソフィアさん:
ヘルソンでダムが爆破されました。これはとてもひどい事です。悲劇が起きました。みんな普通の生活を送ることが、一番必要だと思います

参加した大学生の蔵當日菜子さん:
ウクライナの方々は故郷を奪われてこっちに来ていて、一刻も早く世界に笑顔と平和が戻ってくるといいなって感じました

ウクライナから避難しているボロディミルさん:
戦争の悲劇を伝えることができる平和の礎に感謝したい。沖縄県民だけじゃなく、アメリカ兵の名前も読み上げられ、国籍に関係なく平和の意味を考えることができてよかった

ウクライナから避難しているオレナさん:
平和は命であり、平和は幸福であり、平和は世界の人々にとって必要なものです。平和こそ守られるべきものであると感じました

1年以上に渡って続くロシアによるウクライナ侵攻。今もなお、幼い子どもを含む犠牲者が出続けている。

戦争のない平和な社会を作るために、平和の礎が物語る戦争の悲劇を私たち一人ひとりが
胸に刻まなくてはならない。

(沖縄テレビ)

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