14日午前、岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で、自衛官候補生の18歳の男が銃を発射し、2人が死亡、1人が大けがをした。
陸上自衛隊の第1空挺団に17年間所属し、現在は自衛隊員のセカンドキャリアを支援する「ミリタリーワークス」の代表を務める木村裕一さんに話を聞いた。

事件が起きた射撃場はどんな場所
岐阜県にある日野射撃場は、全長約340メートル、幅約30メートル、面積約1万平方メートルの陸上自衛隊の施設だ。
全長がかなり長い施設だが、そのほとんどが銃を撃った時に弾が通る「弾道」と呼ばれるスペースになっている。
Q.陸上自衛隊員が銃を撃てる場所はかなり制限されているのですか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
そうですね。すべての駐屯地にあるわけではなく、全国に何カ所かしかありません

Q.基本射撃場の中では、どのような銃を使って訓練をするのでしょうか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
私が手に持っているのは模型の銃ですが、おそらく使われているのは「89式」の小銃だと思います。特徴としては安全装置が付いていることと、「連射」と「単発」のいずれもできることです。これには3発しか出ないという装置が付いています。1つ前の「64式」にはそのような装置が付いていません。陸上自衛隊の全隊員が持っている基本的な装備の一つです。射撃の時は安全装置がかかっています。基本射撃の教育なので、基本的には単発で打つのだと思います。銃のレバーには、単発を示す「タ」、連射を示す「レ」、3発制限を示す「3」と書かれていて、レバーを動かして操作します
Q.訓練をするときは実際に何発を銃に入れるものなのでしょうか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
いろいろ場合はありますが、基本教育ではおそらく5発か9発しか入れないと思います。すぐ横に監視員がいて銃についているレバーを見ているので、もし連射を示す「レ」や3発の発射を示す「3」という部分にレバーをかけて、その上で引き金に指をかけると監視員に止められると思います

どのような状況で銃の乱射は起きた?
木村さんの経験によると、自衛隊の射撃の教育訓練は、一般的に以下のような形で実施されるということだ。
最前列に銃を的に向けて撃つ射手が5人並び、奥にある的に向けて銃を発射する訓練を行う。
射手の横と後ろに教育係の自衛隊員がいて、隣には薬莢を回収する役割も担う教育係がいるということだ。
今回、日野基本射撃場の教育訓練で撃たれた自衛隊員は、教育係だった。
Q.当時、どこに誰がどう立っていたかについては、まだわかっていませんが、どのような状況で銃が発射されたと思いますか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
基本的には撃てという号令がかからない場合、レバーを切り替えることができないし、切り替えようとした場合に監視員に止められると思うので、号令係が撃てと号令をかけた後に撃っていると思います
Q.訓練を支える体制としては整えられていると思いますが、どう思われますか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
いきなり横や後ろに銃口を向けて撃ちだすという想定はしていないと思います
Q.撃てという合図がある時を狙って、レバーを「3発(発射)」の方に切り替える隙はあるのでしょうか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
ないと思います。おそらく単発のまま、引き金を何度も引いて撃っていると思います
Q.教育係の人は訓練中に防弾チョッキを着ないのでしょうか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
射手は来ていることもありますが、基本的に教育係は着ていないと思います

「自衛官候補生」とは?
「自衛官候補生」とは、採用後、3カ月間にわたり基礎的教育訓練を行う採用制度によって任命された候補生のことだ。
応募資格は18歳以上から33歳未満にあり、逮捕された男は2023年4月に入隊したということだ。
Q.容疑者は4月入隊ということですが、入隊3カ月目の隊員でも、実弾を使って訓練をするのですか?
「ミリタリーワークス」木村裕一代表:
もちろんします。3、4回していると思います

Q.加藤解説デスクに聞きます。このような事件が起こってしまった背景には、どのようなことが考えられますか?
関西テレビ 加藤さゆり解説デスク:
約40年前にも山口の駐屯地で銃の乱射事件がありました。事件を受けて安全対策は改善されてきていたはずだが、再び事件が起きてしまいまったので、見直していく必要がありますね
なぜこのような事件が起きてしまったのか、再発防止のために何ができるのか。そして、事件に居合わせてしまった隊員のケアにも注力してほしい。
(2023年6月14日 関西テレビ「newsランナー」放送)